笹井宏之
言葉ではどこにも書いてないけれど「熱が出て、体温を計っている」ことがよくわかる不思議とよくわかる短歌。
美しいような日常描写のような、有りうるようなどこにもないような感じの描写力。
雪が、熱を癒すとてもとても心地よいものとしてとらえられていて、あとなんか本能的プリミティブな欲求で雪っていう自然性にうおっと驚きました。
笹井宏之
雪と夏の対比、粉雪のキレイさ儚さと殺人事件の生臭さの対比。
「夏、どこかで殺人事件」はでも、確かに間違いなく起きることだよなあって思うとぞくぞくっとしました。
あと静けさを感じられて殺人事件がこわいよね発覚されないタイプのやつみたいで。
雪=飽和した言葉の結晶、っていう詩的さポイズン級の短歌。
雪が降るのは誰かが誰かに思いを伝えたいせい、って思うと雪かきも苦にならないのでは?少し楽しくなるのでは?
ムシマルは雪掻きしたことない南国民だから何とも言えませんが。
宇都宮敦『連作15首』
こっちは愛=薄汚れた雪っていう等式。
なんとなく、極度の具体性と汚れた感じから未練とか執着っぽい感情と繋がりそう。
バタフライ効果の一環かもしれないなんとなく無念な感じがたまらん。
笹井宏之
ヘレンケラー的短歌。目が悪いけれど、普段はほかのものに頼っているけど今日は今だけは自分の手か足か、目以外の五感で雪を感じているっていう人世っぽい短歌。
こういうありそうななさそうな描写力が好きなんです。
なんかこう、珍しいことだったんだろうなと。
すこしでもながくいっしょにいたかったあの雪の日の猫舌はうそ
「兵庫ユカ」
すげえ可愛い歌。ホットコーヒーかなんかを、外で、ゆっくりと飲んだんだろうなという推察ができる。
ひゅーひゅーあついねー。
これが「あの雪の日の風邪気味はうそ」とか「忘れ物はうそ」だと、ちょっと相手に心配や負担をかけちゃうから微妙なところになってしまう。本当に数分~せいぜい10分くらい引き留めるだけのささやかなうそ加減がいじらしい。
とけてから教えてあげるその髪に雪があったことずっとあったこと
干場しおり
こちらもなんかいじらしい。見てたからあったことに気づいた、長く意識していたから「ずっとあったこと」 に気づいた。
ムシマルは五七五七七の31文字しかないのに同じ言葉繰り返しを大胆に行う系の短歌に弱いのです。
その道が雪でうまってまっ白になっていたからいい気味だった 脇川飛鳥
道に恨みでもあるのかしら!
普段知っている場所が雪の白一面効果で、まるでそこじゃなくなるというのが気持ちいい、っていうのはでも、ムシマルなんかわかっちゃう共感できる。
こういう『ギリ共感できる』っていうのはよい短歌と個人的に思います。
たとえば「布団干しているときに雨降ると悲しい」だとありがちすぎてふーんだけれど、「おろしたての靴は家部屋でもう履いてそこから勢いよく外まで出ると内外制覇した感じで気持ちいい」みたいに一般的でない方が極端だけど気持ちはわかるみたいな共感を得やすいと思われます、そういう意味で素敵。
ラスト、
あわゆき、B級走馬灯が録画されてる脳を洗うあわゆき
笹井宏之
笹井宏之さん大好きブロガーか!その通り!
最初と最後に「あわゆき」(ムシマルの好きな「繰り返してしまうやつ」)、「B級走馬灯」というパワーワード。
なんとなく推理というか連想レベルであるが「死者の脳初期化作用雪」みたいなこわい世界が広がってるとみて良さそうですよ。
雪のすべてを白くするっぽさで、なんだかありえそうな気にさせたら勝ち。
理性より直観に訴えて勝ち。連勝街道大横綱ですよ。
いじょう!
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後悔が残るくらいがちょうどいい春あわゆきのほかほか消える
東直子
雪踏めばうぶ声みたいな音がして僕は全てを失ってゆく(高橋徹平・男・37歳)
確かに!雪踏むとキュキュッと何とも言えない音がするけれど。
作者は赤子を踏んでいるように錯覚して雪踏みながら人の道を踏み外している的なそれなのか?
短歌は自分では才がないんですが、現代短歌は好きです。短歌と外食のマリアージュ。
ムシマルは、高知県出身広島市在住のサラリーマンです。土佐脱藩つながりで喜ばしい限りです。
ではまたー。
何者?この人?
好奇心ムクムク!
グルメブログかと思いきや、
短歌の才も素晴らしい!
ほんまに、この人何者?
ブログ拝見するのが楽しみで~す。