なな色メール 

シュタイナーの勉強会の仲間と始めたニュースレター。ブログでもその一部をご紹介していきたいと思います。

新しい出会い

2010年10月01日 | さとうえりこ
おっちょこちょいで定評のある私は家族からの信用は薄い。あえて言えばピースが私に向ける視線だけはキラキラしている。それも一日2回の散歩のときだけに限定されるが。とにかくそそっかしい。最近年齢のせいにはしたくないが、特に磨きがかかってきているように思われる。
そんな私が、縁あってホームヘルパーの仕事を始めて4か月ほどになるところである。
これがなかなかいいやとても大変である。初心者の私が訪問するお宅は掃除、調理、買い物代行が主で身体介護を必要とする方のところにはお邪魔していない。
ある日の午前中、「行って来ます。」と事務所を出て私はAさん宅へ向かった。彼女のお宅では、夕飯のメニューを一緒に考え、買い物代行して調理をし、残りの時間で掃除をして来るのが決まりだった。
台所に立っていると、事務所からの電話が鳴った。こんな時に何だろうと思いつつ、Aさんの了解を得て、電話に出ると責任者が「Bさん宅に向かうことは出来るか。」と尋ねた。「今、Aさんのお宅で調理をしている途中なんですが・・・。」事態を最初掴めないでいたのだが、そうだった!今いるAさんのお宅は午後からの訪問だったのだ。本来ならば今はBさんのお宅に行かなければならないのだ。さぁ、焦った。結局責任者の取り計らいとBさんの寛大さから午後の訪問へと変更して頂き、Aさん宅はこのまま続行ということに落ち着いた。本来はBさん宅が10時半からでAさん宅は1時半からだったのだ。
さて、時間を間違えて訪問されたAさん、私が間違えて来たことを知ってか知らずか、「こんにちは」とお邪魔した時から不審がるところは全くなかった。いつものように迎えてくれた。しかし、事務所からの電話を切った途端、「魚の火は大丈夫か」と未だかつて調理中の台所になど顔を出さないAさんが心配して見に来てくれた。私が間違えて来ていることはAさんには伝えていないのにもかかわらず。私は平静を取り繕い、時間内に決められたことを行った。帰り際、Aさんは私に「なぁんにも焦ることなどない。慌てなくていいから。」と声をかけてくれた。全てはお見通しだったようだ。体からへなへなと力が抜けていった。私はAさんの手のひらに載せられていた気持ちになり、思わず手を合わせたくなった。
Aさんは40キロ足らずのやせた小さなおばあちゃん。普段のAさんは無口で自分から話しかけてくることは余りない。いつもころんころんと横になってばかりいる。いつか起きあがるのを手伝ったことがあった。そのとき思った。年を重ねた人というのはこんなにも体中が皺だらけになるものなのかと驚いた。
気を取り直して午後、Bさん宅に伺った。否応なく変更させられたことを平身低頭謝罪し、私の失敗はお咎めなしと相成った。高らかに笑われておしまいだった。
またあるお宅では。「今日は佐藤さんが来てくれたのか。良かったぁ。」そう言ってくれるのは同じ県南出身のCさん。そんな声掛けをしてもらうとまんざらでもない気持ちになる。彼女は這うことしかできない。「毎日、今日も生きていると思う。その証にできることはなるべく何でも自分でするようにしている。今生きていることに感謝している。」彼女の言葉はずしんと響く。「生きる」ことを突きつけられる、そんな気持ちになる。
見えない初心者マークを胸につけ、日々発見と失敗の連続をしている。
家族から失いかけている信用を別のところで取り返さなきゃ。

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