旅するくも

『旅が旅であることを終わらせる為の記録』

アンビエント・ドライヴァー

2011-05-02 01:00:10 | 編集長の本棚
『 アンビエント・ドライバー 』
細野春臣:著
MARBLE BOOKS

音楽家の細野春臣さんの雑誌で連載したものをまとめた本。
本を読んでいて小さい頃の自分を思い出した。

小学生の低学年の僕には人には言えないとても大きな悩みがあった。
その悩みは「自分は馬鹿なのではないだろうか」というもので、当時の僕には
それはとても頭を悩ます大きな問題だった。

ある日、父親に真剣に聞いたことがあった。
父親は「お前はテレビのコマーシャルを一度見れば全部憶えるだろ?だから馬鹿じゃないんだ。」
と慰めるように言ってくれた。
その後の僕は自分よりも馬鹿なやつを見つけて、ずいぶんと安心したもんだった。

このまえ、USTREAMの映像で福島原発に関わった後藤さんという方が話していたなかに、
当時の原発に関わっていた自分は僕は会社人であって、社会人ではなかったという話があった。
会社から出たことがない社会を知らない人を社会人と呼ぶべきではないと後藤さんは話の中で言いたげで、
僕はその通りだと思った。

一生懸命に勉強してきたまともな人でなければ会社になんて適応できるはずがないとも思うし、
それに社会を知っていたら会社に適応できるわけがないとさえ僕は思う。
そもそも会社人に社会が見えていたら世の中はもう少しマシになっているはずだ。

小さな頃の悩みの答えとして、僕はやっぱり馬鹿なんだろう。
勉強はろくにしなかったし、できなかったし、まともな会社人にもなれなかったわけだから。
でも、僕は会社に適応できなかった立派な社会人だ。


こんな雰囲気の文章がズラーっと書かれた本。
色んな事を考えて生きている細野さんは大変そうだ。
音楽家はもっととんでもないことを考えているものだと想像していたけれど、
意外と普通で健康な感じだったな。