旅するくも

『旅が旅であることを終わらせる為の記録』

「殺される側の理論」

2011-05-07 17:31:23 | 編集長の本棚
『殺される側の理論』
本多勝一:著
朝日文庫

ベトナム戦争時のアメリカとベトナム、和人とアイヌ、日本と朝鮮半島、黒人と白人、
アメリカ人と北米先住民の関係を殺される側から検証し、差別の視点から書かれた本。
特に前半部分ではベトナム戦争時のアメリカ兵による非武装の女、子どもの虐殺が
どれだけ繰り返されてきたのか書かれている。

先日、ビンラディンが射殺された。
情報によれば非武装であり拘束してからの射殺で、その後水葬されたという。
拘束して取り調べもなく射殺するのは口封じとしか思えない。
おまけにその作戦のコードネームが「ジェロニモ」だったということで、アメリカ
先住民が当然ながら怒っている。
そして、ビンラディンが射殺されたのを知り、ホワイトハウスの前で喜ぶ多くの若者。
そこだけを放送することで全米が喜んでいると思わせたいようだ。
過剰な愛国心が人間を麻痺させているのは確かか。


でも、麻痺してる人ばかりじゃない。
写真は3年前にホワイトハウスの前で撮った写真で前の道で一人テントをつくり
何年も国に抗議をしている人が持っていたもの。
テレビでいつも真正面からの映像がないのは、この人を映さないためだろうな。
道に座るのはいいが、横になるのは違法なんだと言っていた。
こういう誰が本当のテロリストかよくわかっている人ももちろんいる。

米ニュースの記事で、ウサマ・ビンラディンを間違えてオバマ・ビンラディンと書いた
ユニークな人物もいる。
わざとだろうな。

「電気を止める世代」

2011-05-07 16:03:35 | 静岡
このごろ親父の機嫌が悪い。
なぜかというと、NHK以外のテレビのチャラけた感じが気に入らないのだ。
まともな原発の情報をながさない局のバラエティーなんぞ観てられるかと彼は
無言で台所のチャンネルを独占している。
機嫌が悪いときは昔からNHKをみるのだ。

すると夕方になって速報が入った。
管総理による浜岡全機停止要請。

廃炉ではなくて、停止だ。
安全対策が完全になるまでの「浜岡の運転停止はおおむね2年程度」
期限付きの停止といっても少なくとも2年間、日本の一部の地域で脱原発の日の朝が
これでいっきに近づいた。
しかも、他の電力会社に比べて原発がつくる電気への依存度が低い地域でだ。
何で廃炉じゃないんだという人が多くいるが、原発の20キロ圏内に住むものとして
素直に喜びたいニュースだ。

アメリカのグランド・キャニオンで現在、ウラニウム採掘による地下水への放射能
流出が問題になっている。
僕も訪ねたトゥバシティーのHOPIリザベーションで全ての生活用水をまかなう唯一の
井戸水も汚染されている。
ウラン採掘に関わったディネ(ナバホ)の人たちが皆ガンで死んでいった。
広島原爆のウランもディネの土地から掘り起こされたという説が強い。

「ホピの予言」という映画の中にも出てくるけど、沙漠に建つ送電線を支える鉄塔を
ホピの人たちは「白人の神」と呼ぶ。

レイム・ディアーの言葉だったと思うけど、「電気を止める世代が必ず現れる」という
予言めいた言葉がある。
運転停止のおおむね2年が「電気を止める世代」が誕生するきっかけになってくれたらと
僕は願わずにはいられない。


天然住宅から社会を変える30の方法

2011-05-06 01:57:16 | 編集長の本棚
『天然住宅から社会を変える30の方法』
田中優:著
相根昭典:編
合同出版

住宅会社がながしているCMがイメージアップだけのものだということがよくわかる本。
社会や地域のなかで住宅が持つ可能性はとても大きいことがよくわかる。
横書きの文章が久しぶりで非常に読みにくかったけど、栞が四葉のクローバー
になっていたのがいい。

以前、講演をお願いしたことがあったけれど、1冊の重要な内容の全て1時間半の中で
話をするのはさすが。
講演で聴いたものを文字で復習している感じだった。

田中優さんの本を読んだり講演を聴いたり、話をしていると地球を抱きしめる生き方を
望んでいる人たち(最近はNEO NATIVEというらしい)とはずいぶん遠くにいるように感じていた。
祈ることに意味はないと言う人だしね。

この『天然住宅から社会を変える30の方法』読んでいて田中優さんは全く違う角度から
同じ山を登っているんだということがよくわかった。
僕の予想では優さんは20年後にはインディアンになってるんじゃないかなと思うくらい。
たくさんの人に会うということが、そこへ向かわせるのではないだろうかって。

存在しないと思うけど優さんの自伝があったら読んでみたいな。

深夜特急 1

2011-05-05 03:20:47 | 編集長の本棚
『深夜特急1』香港・マカオ
沢木耕太郎:著
新潮文庫

「ミッドナイト・エクスプレスとは、トルコの刑務所に入れられた外国人受刑者たちの間の隠語である。
脱獄することを、ミッドナイト・エクスプレスに乗る、と言ったのだった。」

沢木さんがインドを旅したときの一文に、
「手で食べることで、また自分がひとつ自由になっていくのを感じた。」
という感じの文があって沢木さんが本の中で言いたいことはわかったのだけれど、僕が3・2巻を
始めに読んでしまったために「深夜特急」が何を意味しているのかわからず、気になって結局1巻を
読むことになってしまったのだ。
1巻の初めでやっと「深夜特急」の謎が解けて、すっきりすることができた。

沢木さんの脱獄と僕が思う脱獄は次元が違っていて「檻から自由への脱獄」と「自由から脱獄する」
くらい違うといえば伝わるのだろうか。

何かと気になる自分の性格を考えると、本は順番のとおりに読んだ方がいいことが今回ではっきりした。

アンビエント・ドライヴァー

2011-05-02 01:00:10 | 編集長の本棚
『 アンビエント・ドライバー 』
細野春臣:著
MARBLE BOOKS

音楽家の細野春臣さんの雑誌で連載したものをまとめた本。
本を読んでいて小さい頃の自分を思い出した。

小学生の低学年の僕には人には言えないとても大きな悩みがあった。
その悩みは「自分は馬鹿なのではないだろうか」というもので、当時の僕には
それはとても頭を悩ます大きな問題だった。

ある日、父親に真剣に聞いたことがあった。
父親は「お前はテレビのコマーシャルを一度見れば全部憶えるだろ?だから馬鹿じゃないんだ。」
と慰めるように言ってくれた。
その後の僕は自分よりも馬鹿なやつを見つけて、ずいぶんと安心したもんだった。

このまえ、USTREAMの映像で福島原発に関わった後藤さんという方が話していたなかに、
当時の原発に関わっていた自分は僕は会社人であって、社会人ではなかったという話があった。
会社から出たことがない社会を知らない人を社会人と呼ぶべきではないと後藤さんは話の中で言いたげで、
僕はその通りだと思った。

一生懸命に勉強してきたまともな人でなければ会社になんて適応できるはずがないとも思うし、
それに社会を知っていたら会社に適応できるわけがないとさえ僕は思う。
そもそも会社人に社会が見えていたら世の中はもう少しマシになっているはずだ。

小さな頃の悩みの答えとして、僕はやっぱり馬鹿なんだろう。
勉強はろくにしなかったし、できなかったし、まともな会社人にもなれなかったわけだから。
でも、僕は会社に適応できなかった立派な社会人だ。


こんな雰囲気の文章がズラーっと書かれた本。
色んな事を考えて生きている細野さんは大変そうだ。
音楽家はもっととんでもないことを考えているものだと想像していたけれど、
意外と普通で健康な感じだったな。

最初の教え

2011-05-01 23:42:01 | 編集長の本棚
『 最初の教え 』
First Instructions
ネイティブ・アメリカンの知恵と祈りの言葉
スタン・パディラ:編・画
北山耕平:訳・構成
MARBLE BOOKS

『自然の教科書』『聖なる言の葉』の合冊。
本のデザインがカッコよくて質感もいい。

本は一部の『学び』と二部の『祈り』の二部で構成されていて、
一部と二部で同じ『風の道』が書かれていることが興味深かったな。

『風の道』

その人たちに、いのちを与えたものは、風。
わたしたちにいのちを与え、今わたしたちの口をついて出るものも、風。
風がやむとき、わたしたちは死ぬ。
今でも指先の皮膚のしたに、風の道が、見える。
それはわたしたちの祖先が創られたときに、風が吹いていたことを、今に伝えている。

ナバホ