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新潟市の住宅設計事務所ネイティブディメンションズ=狭小住宅や小さい家、構造計算、高気密高断熱が好きな建築士のブログ

自立循環型住宅12

2009-09-04 11:10:40 | 建築法規・施策

⑪照明設備計画:昼光利用の不足分を補うための照明器具について、工夫した設計・器具選定を行う事で照明エネルギーを削減します。3つの手法を組み合わせることによりレベル0~3までに区分され、0%~50%の削減が期待できます。

Photo こちらは、JISで定められた各室に必要な照度基準です。照明を選定する際の1つの目安にはなりますが、標準的な考え(器具メーカーのカタログにある目安値)は、床面で100lx程度です。

ただ、それだけではいけません

あくまでも、お客様との会話が必要です。明るい部屋と薄暗い部屋はどちらが好みか。昼光色の様な青白い明り、電球色の様なオレンジ色の明りはどちらが好みか。器具そのもののデザイン性の好みなど、照明については、「これがセオリーです」と全てを押しきるのはナンセンスです

それをある意味都合よく捉えると、照明器具は嗜好性が強いので別途工事になる場合があります。特にマンションなんかでは、そのパターンが多いですね。つまり、販売店側が一方的に照明器具を売りつけるよりは、お客様のお好きなものを後から自由に買って下さいというセールストークです。

ものの好き嫌いから言えばそうなるかもしれませんが、だからこそ専門性の高い分野でもあるので、設計士との打ち合わせが必要になるんです

これは見かけ上の販売金額を下げているだけのいい訳です。ほんとシンプルに必要な明りがあるだけならば、住宅全ての照明器具費は延べ床面積×¥5,000程度を見込んでおけば足りるでしょう。しかし、そこに嗜好性を付け足していけば、×¥15,000~¥20,000くらいになる事もあります。

30坪の家で言えば¥150,000で納まる場合もあれば、¥600,000になる可能性もある訳です。これだけ予算の幅があるのに、お客様に丸投げでは無責任ではないでしょうか。コストコントロールを含めた打ち合わせを設計士と行うべきです。

すいません。長くなりまして。これを踏まえて手法を選択します。

(1)機器による手法:電球よりも蛍光灯の方が、イニシャルコストは高いものの、ランニングコストが抑えられます。家中を蛍光灯器具にすれば省エネになりますが、前述の通り、嗜好性が強い為、電球を使ったとしても電気代のかからない工夫をする事で省エネにつなげる考え方もあります。その辺りのバランスが打ち合わせの必要な部分です。

電球型蛍光灯は口金が電球と同じ為、既存の器具が使えるメリットもあります。電球に似た形やとぐろを巻いた形など様々ありますが、一般電球に比べ消費電力が1/4で寿命が7倍程度あります。演出性も昼光色から電球色まで揃っているので、当事務所でも一番提案の多いランプだと思います。

Hf型ランプは、直管や環形の蛍光灯よりも若干細身の蛍光灯です。こちらも消費電力が少なく、長寿命です。器具が薄くできるので、デザイン的にシンプルにしたい場合に適しています

ハロゲンランプ、レフランプは電球の一種ですが、ランプに反射板が付いているので一般球に比べ明るくなります。但し、一番のメリットは、きらめき感や集光性による演出効果だと思います。

最近一番注目を集めているLEDは、寿命が群を抜いて長いです。10000時間点灯すれば長寿命と言われる中、LEDの寿命は40000時間です。消費電力も電球の1/4程度です。また、蛍光灯は演出効果が若干弱いのに対して、LEDは色調が自由に作れるので、演出効果は非常に優れいています。以外な特徴としては、赤外線と紫外線を含まない事があります。

デメリットもそれなりにあります。LEDは直流電源を使うのでコンバータ的なものが必要になります。その為、価格が高いです。それと、ランプの交換自体ができません。寿命になれば器具ごとの交換になります。といっても、半永久的な寿命なのであまり気にしなくてもいいと思います。

実際に寿命を計算してみると、例えば1日合計30分点灯するトイレに使用すると、

40000時間はつまり、×60分/時間で2400000分になります。

2400000分を30分/日で割ると80000日使える事になります。

80000日を365日/年で割れば219.17年となります

219年使ってみたいですねぇ。生きた化石扱いですよ。きっと

ランプは、その他に反射板に銀を蒸着させた高効率のダウンライトや、汚れの落ちやすいカバーを採用する事で、明るさを落とさないタイプの器具もあります。

ダウンライトはそのシンプルなスタイルから人気のある器具ですが、欠点は天井に埋め込むので、天井面を照らす事が出来ない事です。なので、同じ明るさのランプを使ってもダウンライトの場合、天井面がうす暗いので、部屋全体が明るく感じません。逆を言えば、ペンダント形(吊り下げ型)の照明は、多少照度がなくても、必要な手元だけ明るくできますし、部屋全体がぼんやりと明るくなるので、演出効果の高い器具と言えます

(2)運転・制御による手法:こまめなスイッチを入り切りは省エネにつながります。ただし、神経を尖らせてスイッチを入り切りするのは疲れるだけですし、面倒くさくなっていくばっかりです。センサー付きの器具やリモコンで手元に置いておく工夫、調光スイッチで気持ち照度を下げるなど、あまり努力の要らない工夫が大切です。

調光をもう少し詳しく話します。ミニクリプトン球などの電球に調光スイッチをつなげて、通常110vの所、100vの電圧で使用した場合、照度は30%程落ちますが、消費電力は15%の節約になり、寿命に限ってはなぜか4倍に延びます。不思議ですが、素敵です

センサー付きの照明の落とし穴を1つ。センサー付き器具の場合、点灯時間が長くて5分程度です。トイレに使った場合、あまり長く居座っていると、突然暗くなって一人おろおろする事があります。再度、手を振ったりしてセンサーが感知すればすぐに点きますが、トイレで一人座って手を振る姿だけは誰にも見られない様にして下さい。笑い話ですが、最初はまったく笑えません。完全にホラーです。

別付けのセンサーだと15分くらいのがあるんですけどね。これは、予算との相談。

(3)設計による手法:単純に一部屋に1灯にした場合と複数設置した場合、イニシャルコストの違いは明らかですが、明りを使い分ける事での省エネ効果や演出性が期待できます。但し、演出にこだわりすぎると、ランニングコストが増えるばかりですので、狙いと効果、コストのバランスを十分に検討する必要があります。

同じ部屋でも、十分な明りが必要な時とさほど明りが必要でない時と時間によって明りの種類は異なります。明りが1灯しかないとその調節が出来なく、無駄な明りを使っている時間もあると考える事が出来ます。また、1灯だけだと部屋の雰囲気が常に単調になってしまいます。

1灯だけの場合と複数設けた場合、どの程度省エネにつながるのかというのは、計算で消費電力を出す事が出来るのですが、365日同じ生活パターン(点灯パターン)とは考えにくいので、省エネに関しては、「ちょっと強引な考え方かな」とは思います。まぁ、工夫の一つとして捉えて下さい。

すごく長くなってしまいましたが、照明計画の答えは一つではありません。いろいろな要素が複雑に絡んで、お客さまにとってのベストを導く必要があります。

その分、楽しいですけどね

つづく。


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