日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

脇差 青江 Aoe Wakizashi

2018-07-28 | 脇差
脇差 青江


薙刀直し脇差 青江

 鎌倉時代後期の、大薙刀を脇差に仕立て直したもの。一尺六寸弱だから江戸時代には大小揃いの小とされたものであろう。揺れるような板目肌に地沸が付き、総体は緊密な詰みよう。刃文は沸を主調とする幅の広い湾れ調子で、刃境にほつれが掛かり、二重刃風に沸筋が働く。刃境の杢肌が渦巻き状にも見え、砂流しが掛かるなど刃中は地肌に同調した細やかな働きが濃密。ただ、青江にあるような鋭い小足は少ない。帽子は浅く乱れ込んで先はわずかにほつれ掛かり、返りが長い。





脇差 備前國住長舩源兵衛尉祐定 天正五年 Sukesada-Genbeinojo-Tensyo5 Wakizashi

2018-06-27 | 脇差
脇差 備前國住長舩源兵衛尉祐定 天正五年


脇差 備前國住長舩源兵衛尉祐定 天正五年

 横手筋を設けない菖蒲造の脇差。地鉄は良く詰んで板目や杢目が地景によって綺麗に浮かび上がる。良く言うが、戦国時代の武器とは思えぬ美しさ。刃文は不定形に乱れる互の目乱で、帽子も激しく乱れて返り、写真では分かり難いが棟焼も刀身下半まで乱刃としている。相州伝の影響を受けたものであろう。備前刀が相州伝の影響を受けたのは、まず南北朝時代で、その頃の作を相伝備前という。戦国時代の相州伝の流行は、なんと表現して良いのだろうか、専ら皆焼出来のような焼の強さが目立つ。本作もそのような一つ。



脇差 横山上野大掾祐定 Sukesada Wakizashi

2018-05-28 | 脇差
脇差 横山上野大掾祐定


脇差 横山上野大掾祐定

 江戸時代における祐定家の隆盛は、この工の力によるところが多い。上野大掾祐定は七兵衛尉の子。腰開き互の目の焼頭に小丁子を複合させて蟹の爪状、或いは角刃、矢筈刃としている。良く詰んだ地鉄に刃文も明るく冴えており、高い技量が窺える。互の目の中の小丁子や尖り調の刃の組み合わせが巧みだ。刃先に広がる小沸の中に砂流を交え、浜辺の砂の流れるような景色としているのも綺麗だ。





脇差 相模守泰幸 Yasuyuki Wakizashi

2018-05-24 | 脇差
脇差 相模守泰幸


脇差 相模守泰幸

 この泰幸は寛文頃の刀工。美濃の出で、他の刀工と同様に移住した尾張を活躍の場とした。やはり他の多くの美濃刀工と同様に相州伝を強く意識した作風である。地鉄は詰んだ小板目肌で地沸が厚く付く。刃文は小互の目に厚い沸が帯状に絡んだ出来で、肌目に沿った金線、砂流し、沸筋などが流れ掛かり、沸の粒も大小変化に富んで荒々しい雰囲気。互の目の高さは高低抑揚があり、これも焼刃に変化を与えている要素。沸が綺麗な出来である。





脇差 駿河守國正 Kunimasa Wakizashi

2018-05-21 | 脇差
脇差 駿河守國正


脇差 駿河守國正

 この國正は江戸時代前期の伊予宇和島の刀工。一尺八分の平造小脇差で、小板目鍛えが良く詰んで広直刃調の刃文を焼いている。小沸に匂の複合した焼刃は、真直ぐではなく、小模様に浅く乱れている。ごくごく小さな互の目が交じっているようで、これが焼幅に変化をもたらし、単調ならざる直刃となっている。帽子の返りが長く、この中にも小足状の働きが窺える。



脇差 越前國兼法 Kanenori Wakizashi

2018-05-17 | 脇差
脇差 越前國兼法


脇差 越前國兼法寛永五年

これも兼法。一尺三寸強、身幅広く鎬が張って重ね厚く、大鋒。江戸最初期の典型的造り込み。刃文は表が沸筋砂流し金線が交じって穏やかに流れる湾れが主体の構成、裏は互の目が顕著で、帽子はいずれも乱れ込んで先尖り調子に返る。表裏刃文を違えた作である。江戸最初期にはこのような奇抜な作風が好まれたようで、拵も派手であったり、奇妙であったりと、他者との違いを明瞭にする気風があった。地鉄は板目が強く現れて武骨な感がある。刃文の綺麗な出来である。□80





脇差 信國吉正 Yoshimasa Wakizashi

2018-05-14 | 脇差
脇差 信國吉正

 
脇差 信國吉正

 信國吉正は、筑前信國派の、黒田家に仕えた寛文頃の工。刃長一尺七寸強のこの脇差は、室内での戦いに利のある短い刀として機能したものであろう。地鉄はザングリと肌立つ感のある小板目肌で、いかにも切れそうな地鉄造り。刃文は直刃から始まって湾れに互の目が一つ、二つ、三つと続く構成。すっきりとした綺麗な刃文となっている。焼刃は粒の揃った小沸からなり、互の目の中には小模様の丁子が配されて変化があり、小足、葉が働いて繊細な景色が感じられる。□





脇差 手柄山氏繁 Ujishige Wakizashi

2018-05-12 | 脇差
脇差 手柄山氏繁


脇差 手柄山氏繁

 この手柄山氏繁は手柄山正繁の甥で、播州姫路の本家を継いだ工。助廣流の濤瀾乱や大互の目の刃文を得意としており、本作が典型。小板目鍛えがみずみずしく詰んだ様子も助廣流。本作は注文によるもので、寸法一寸七寸強、身幅広くがっちりとしている。刃文が美しい。大小の互の目が並んで波の押し寄せる様を表現したとされる。このような刃文構成について、江戸の切れ味を重視した刀造りに対し、大坂の華やかさを重した作風との評価があるも、大坂の刀工の刀は美しくしかも良く切れるとの評価がある。小沸の粒が揃った焼刃が最大の魅力である。□





脇差 信濃大掾忠國 Tadakuni Wakizashi

2018-05-10 | 脇差
脇差 信濃大掾忠國


脇差 信濃大掾忠國

 大小の互の目を連続させながらも、その構成に揃ったところを求めない、自然な流れを感じさせる刃文。互の目の中には、足を切って流れるような砂流し、金線、沸筋があり、これも美観の一つとなっている。忠國は出羽大掾國路に学んだ初代の子。この脇差は中間反りが深く、元禄頃の特徴的な姿格好。地鉄は良く詰んでおりここも綺麗。互の目の頭はわずかに左右に尖り調子の部分が窺え、単なる丸みの互の目だけではない、変化のある景色となっている。







脇差 河内守行平 Yukihira Wakizashi

2018-05-09 | 脇差
脇差 河内守行平


脇差 河内守行平

 この刀工の活躍期は江戸時代前期。豊後の出だが、肥前唐津、江戸、相州綱広の相州伝など、各地を巡り作刀技術を会得している。この脇差は、地鉄鍛えに柾目や板目が綺麗に浮かび上がるよう工夫を凝らしたもの。全体が柾目調子で、平地は微塵に詰んでいる。刃文は互の目の形状をはっきりとはさせない相州古作写し。沸が強く深く付き、その中に沸凝りがあり、足が射し、肌目に沿って金線状の長い肌目が見える。







脇差 相模守國綱 Kunitsuna Wakizashi

2018-05-02 | 脇差
脇差 相模守國綱


脇差 相模守國綱

 江戸時代初期の越前の刀工。越前には、戦国時代以降美濃から移住してきた刀工が多く活躍している。また、江戸時代に至ると、江戸に活躍の場を求めた刀工も多い。この國綱もそうした一人。地鉄は良く詰んだ小板目肌で、鎬地は柾目鍛えが顕著に肌立つ感じ。刃文が特徴的。焼幅が深い湾れ調子ながら、その中に互の目や丁子が交じる構成。特に沸が深く、刃先まで沸が広がり、刃中に沸の濃淡を生み出している。その中に島のような沸凝りがあり、所々丁子に伴う足のようにも見える。奇麗な刃文構成となっている。







脇差 丹波守吉道

2018-04-28 | 脇差
脇差 丹波守吉道


脇差 丹波守吉道

 京都3代目の吉道の、同家の得意とした刃文構成になる作。このような刃文を「簾刃」と呼び始めたのは誰だろうか。ずっと疑問に感じている。刀剣の鑑定や鑑賞に関わる用語が整理され始めたのは近代に至ってからと聞く。この刃文が創案された当時にすでに簾刃と呼ばれていたとは思えない。高貴な人物を隠す目的で用いる御簾を刃文の構成題材とするだろうか。そもそも簾が美観の一つとして捉えられるだろうか。絵画あるいは様々な器物に施される文様には、自然風景から採られた例が多い。助廣の濤瀾乱もその一つ。吉道の刃文構成も自然の風景、あるいはそれに近い川の流れを思い浮かべるのが普通だろう。とにかく綺麗な構成である。江戸時代前期に吉道一門が隆盛した理由が良く判る。この刃文構成は初代、二代が生み出したのであろうが、後代の吉道も焼いている。







脇差 備中守康廣 Yasuhiro Wakizashi

2018-04-27 | 脇差
脇差 備中守康廣


脇差 備中守康廣

 紀伊から摂津に移住して栄えた紀州石堂派康廣の、備前古作写し。互の目丁子の複雑な刃文構成が魅力。手本としているのは鎌倉時代の一文字。焼深い刃文であるがために地中の働きは見にくいが、地鉄は小板目肌が良く詰んで映りが立ち、江戸期の作ながら古調。刃文が複雑でいい。互の目に小丁子が交じり合って出入りが複雑。匂口が締まって焼刃が冴え冴えとし、長短の足も盛んに入って複雑さを増し、飛足、葉となって刃中を装う。備前伝の特徴が顕著な、奇麗な刃文である。







脇差 治國 Harukuni Wakizashi

2018-04-21 | 脇差
脇差 治國


脇差 治國

 北窓治國は井上真改の門人。殊に真改の地鉄鍛えにおける重要な技術者であったと伝え、本作も緩みなく力強く詰み澄んだ小板目肌で、微細な地沸で覆われた極上の地鉄の様子が良く判る。刃文は、真改にも間々みられる沸筋が長く入った直刃。小沸が均一に、しかも匂が複合されて明るく冴え、沸筋、ほつれ、金線が流れるように刀身を走り、物打からふくらにかけては特に筋状の働きが顕著。帽子も綺麗に掃き掛けて返る。真改の一面を見るような綺麗な出来である。







脇差 綱俊 Tsunatoshi Wakizashi

2018-04-19 | 脇差
脇差 綱俊


脇差 綱俊

 一尺二寸強の鎬造脇差。常にみられる脇差に比較して寸法が短く、しかも身幅広く重ねを厚く頑丈に仕立てている。江戸時代最初期に好まれた造り込みである。製作の時代は江戸後期。幕末には稀にみられるので古き時代を偲んだものか、特殊な剣術の武士の注文であろうか、武骨であるが地鉄は密に詰み、刃文はとても綺麗に仕上がっている。小板目肌に匂主調の互の目乱。師筋である水心子正秀に倣ったものであろう、互の目の配列が濤瀾乱風とされている。刃中には細かなほつれが掛かり、玉状の刃に小沸匂が掛かって爽やか。