日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

太刀 長舩長光文永十一年 Nagamitsu Tachi

2018-02-27 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 長舩長光文永十一年十月廿五日

 高瀬長光。二尺四寸三分で腰反り深く一寸五厘。踏ん張りがあり、茎尻辺りは衛府太刀拵に収めるためであろうか、わずかに削がれた造り込み。鎌倉時代に隆盛をみた長舩派の棟梁で、バランスの良い太刀を世に送り出しして長舩鍛冶の存在感を見せつけたのであろう。地鉄は杢目交じりの板目肌が強く肌立ち、帯状の映りが平地を走る。刃文は互の目丁子。一文字ほど激しくはないが、焼頭が丸みを帯びて出入り複雑、刀身中ほどの互の目の頭から地中に煙り込むような働きが窺え、この刀の特徴となっている。

刀 出羽大掾國路 Kunimichi Katana

2018-02-27 | 
刀 出羽大掾國路


刀 出羽大掾國路

 この刀は、前回紹介した脇差を長くしたような出来。もちろんバランスは異なるが、肉厚くがっちりとし、板目流れの地鉄に地沸が付き、互の目と湾れの複合になる刃文。刃中は沸強く、砂流しが金線を伴って流れ掛かる。帽子は湾れ込んで先尖って返る三品風。古風で、しかも綺麗な出来である。



刀 郷義弘 Go_Yoshihiro Katana

2018-02-24 | 
上杉家伝来の名刀から

刀 郷義弘

 磨上無銘の、穿鑿郷の号のある作。正宗の弟子の一人、郷義弘には在銘作がないとされている。特に地鉄が詰んで澄んで美しいところが見どころ。この刀も磨り上げながら深い反りが付いて元先の身幅が広く、覇気ある造り込み。小板目鍛えの地鉄は細かな地沸で覆われ、刃寄りに板目が現れている。しっとりとしたその様子は、新刀期の真改や助廣などの極上の地鉄にも通じる質感。虎徹が郷を目標にしたというのも良く判る。細かな沸と匂で深々とした刃文は、湾れから物打辺り大きく不定形に乱れ、上半には飛焼が盛んに入り、焼の深い帽子は強く乱れて掃き掛ける。

脇差 出羽大掾國路 Kunimichi Wakizashi

2018-02-24 | 脇差
脇差 出羽大掾國路


脇差 出羽大掾國路

 國路も江戸初期の刀工。南紀重國同様に寸法が短く身幅の広い脇差を製作している。この脇差が良い例。一尺三寸半ほどで、元幅一寸九厘。鎬も張って肉厚くがっちりとしている。板目の流れた地鉄に地沸が付き、刃文は互の目と湾れの調和になる古風な出来。刃沸強く、砂流し、沸筋が金線を伴って長く流れ掛かる。帽子は湾れ込んで先尖って返る三品伝。江戸時代最初期の姿格好ながら、地鉄刃文共に綺麗で、区深く健全体を保つ極上品である。130□





太刀 兼光 Kanemitsu Tachi

2018-02-23 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 兼光

 大町甚右衛門尉が磨り上げたことから大町兼光と呼ばれている作。元先の身幅広く、大鋒に結んだ、南北朝時代の典型的造り込み。現状で二尺三寸七分。ゆったりと反りが付き、磨り上げながら元姿が想像される。小板目肌が良く詰んだ地鉄に映りが立ち、地景が交じって網目のような地相。刃文は匂口の締まった細直刃調の浅い湾れ刃で、小足が穏やか入り、飛焼が入る。浅く乱れ込んだ帽子は尖って返る。南北朝時代には相州伝の焼き入れ方法が流行しているため、沸の強い大乱が多いのだが、その中でこのような穏やかな刃文構成はむしろ凄みが感じられる。父景光の時代から低い焼に片落互の目の刃文が焼かれるようになっており、このような刃文は同時代の他工にも間々みられるところである。大磨上だから、遺されている銘文は兼光のものではなく、大町右衛門尉の手になるかと思われる。

刀 南紀重國 Shigekuni Katana

2018-02-23 | 
刀 南紀重國


刀 南紀重國

 南紀重國の、本国大和伝の特徴が強く現れた刀。重國の作の多くが磨り上げられて生ぶ茎が少ない。本作は茎尻まで生ぶの健全体躯。身幅しっかりとして反りを控えた江戸最初期の姿格好。地鉄が柾目を交えた板目鍛えで、地景によって肌目が強く立ち、流れるような肌目の間を良く詰んだ小板目肌が埋め尽し、ここに、細直刃を焼いている。鍛え肌と焼刃によって刀身と平行に流れるような景色が生み出されている。この濃密な働きこそ大和物古作に紛れる重國の真髄。相州伝も上手で、時代から相州伝も多く遺しているのだが、このような本来の大和伝に大きな魅力がある。□





太刀 Kanemitsu Tachi

2018-02-22 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 備州長舩兼光 延文五年六月日

 三日月兼光の号のある作。刃文に特徴のある作。姿格好は身幅の広い南北朝スタイルで、良く詰んだ小板目肌に鍛えられている。映りは比較的淡く、鎬寄りに起ち、区上から下半が比較的強く感じられる。刃文は匂主調に小沸が複合された腰開き互の目乱で、帽子は小さく乱れて焼き詰風。互の目と互の目の間の平地側に、小模様に乱れた尖刃が焼かれており、これが山間に沈みゆく三日月のように見えるという特徴がある。

脇差 南紀重國 Shigekuni Wakizashi

2018-02-22 | 脇差
脇差 南紀重國

 
脇差 南紀重國

一尺四寸二分の、脇差としてはちょっと短い作。江戸時代の大小揃いの脇指は、一尺五寸から六寸ぐらいが普通だが、それらと比較すると、ちょっと短い。これが江戸時代最初期の脇指、実用の時代の脇指の一典型である。平和な時代の作ではなく、抜き易さ、操作性を求めた脇差である。戦国時代以前に盛んに造られた一尺二寸前後の平造脇差と同じ線上にあると捉えれば分かり易いだろう。寸法に比較して不格好と感じるほどに身幅が広い作もある。その迫力が所謂慶長新刀の魅力であり、その影響下にあるのが本作である。地鉄は地沸の付いた小板目肌。ゆったりとした綺麗な湾れ刃を焼いている。






太刀 備州長舩盛重 Mirishige Tachi

2018-02-21 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 備州長舩盛重 文正元年二月日

 備前国大宮盛重の、茎の長い太刀。刃長三尺八寸一分、反り一寸五分強。この長さを破綻なく鍛え、しかも均質に焼き入れているのだから凄い。良く詰んだ地鉄に、激しく乱れた映りが立つ。刃文は腰の開いた互の目に小丁子交じり。丸みのある互の目が花のように寄り添って一つの単位となり、これが小互の目丁子の中に連続している。匂口に柔らか味があり、茎長く頑強で、激しい打ち合いをするためものだろうと思われる姿からは想像もできない美しさ。これがこのように遺されてきたことを想うと、手を合わせたくなる。

刀 越前守助廣 Sukehiro Katana

2018-02-21 | 
刀 越前守助廣


刀 越前守助廣

 二寸ほどの磨り上げで二尺二寸半ほどの扱い易い寸法とされている刀。焼が深いので地鉄の様子が分かり難いのだが、良く詰んだ小板目肌に柾目流れ状の肌が交じっている。焼が強いために柾肌に地沸が絡んで覇気ある景色を生み出している。刃文は強い沸を意識している大乱ではあるが、激しく沸の流れている中に、大きさの異なる互の目が連続しているのが判る。助廣の作の多くは沸の粒子が揃っているのだが、ここでは濤瀾乱に沸筋金線地景などの古典的相州伝を明示したものであろう。これも綺麗だ。





太刀 越後國住行光

2018-02-20 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 越後國住行光作 天文二十三年二月吉日

 天文年間の越後の刀工。作品を見る機会のない刀工なので、ちょっと驚いた。長寸で身幅がありがっしりとした造り込み。茎が長く、長巻のような使い方をされたのであろう、攻撃的な実用武器だ。地鉄は板目が強く肌立って、決して綺麗というわけではないのだが、迫力がある。茎尻の形が加州茎であり、加賀刀工の流れを受けているものか。映りの立つ地鉄も凄みがあり、刃文は小模様に、互の目、小乱、小丁子が交じる複雑な焼刃に、二重刃、三重刃が現われ、さらに無数の小足状の働きが入り、ここも迫力がある。


太刀 長谷部國信(からかしわ)

2018-02-19 | 太刀
上杉家伝来の名刀から

太刀 長谷部國信(からかしわ)

 からかしわと号されている長谷部國信の太刀。國信は兄國重と共に相州伝を学んで後に京都において栄えたという。激しい皆焼刃に特徴がある。この太刀は、茎の形状が典型で、その先端まで遺されて貴重。元先の身幅も比較的たっぷりと残されており、堂々としている。焼が深いために地鉄の様子が分かり難いのだが、板目が強く焼が強いために熱反応から割れが生じているのではないだろうかという懸念を吹き飛ばすような綺麗な地鉄。刃文は廣光に比較してさらに焼の高い皆焼出来。焼刃が鎬筋を超えて広がり、互の目は腰開き調子に形も複雑さをみせ、大互の目の中に小互の目、丁子、足、葉、島刃などを焼いているのだが、刃中は沸付いてもちろん明るく、地にこぼれた沸も強い。

脇差 信濃國真雄 Masao Wakizashi

2018-02-19 | 脇差
脇差 信濃國真雄


脇差 信濃國真雄

 流れるような板目肌と微塵に詰んだ小板目肌が交じり合った綺麗な地鉄に、連続する互の目と湾れを複合した綺麗な構成の刃文が焼かれている。焼刃は匂と小沸の複合であかるく冴え、足が長く入り、これを肌目に沿って砂流しが切って流れ掛かる。地中には沸が凝って飛焼状になり、湯走りも焼刃から流れ出て厚い地沸となっている。帽子は小丸返りに沸の乱れが加わって覇気がある。備前伝に強い相州伝の複合からなる作であろう。



平造脇差 相模國住人廣光 (火車切)

2018-02-17 | 脇差
上杉家伝来の名刀から

平造脇差 相模國住人廣光 康安二年十月日

 南北朝時代の相州物らしさが強く出ている皆焼出来の小脇差。刃長一尺二寸六分、反り二分。火車切と号された作。大太刀の添え差しとされたもので、抜刀し易い小振りの造り込みながら身幅広く、刃の抜けも良さそうな構造。大振りの相州彫も特徴的。地鉄は板目肌が良く詰み、焼が強いわりに肌立つことなく綺麗で、相州本国物の極上地鉄とはこのような作を指すものと言え、在銘作の貴重さを改めて感じ得た。何といっても刃文が鮮やか。袋状の互の目に小互の目、小丁子が複雑に交じり合い、刃中には足、島刃、葉、沸凝り、匂の広がりが加わって明るく、飛焼も騒がしくなく、過ぎることなく配され、所々焼刃が二重になっているのではないか(二重刃ではなく)と感じるほどに複雑。帽子は火炎状に乱れて返る。

刀 播磨大掾忠國 Tadakuni Katana

2018-02-17 | 
刀 播磨大掾忠國


刀 播磨大掾忠國

 二尺四寸強。肥前刀らしい綺麗な姿格好。区も深く健全体躯であるから、なおのこと美しい。奇麗なのは姿だけではない。良く詰んだ小板目鍛えに細かな地沸が付いた、極上の肥前肌。これに焼かれている互の目乱の刃文も綺麗だ。小沸の粒子が揃って明るく、互の目は大小、しかも虻の目状の特徴もある。穏やかに連続する互の目から刃先に向かって射し込む足は左右に開き、これを穏やかな砂流しが撫でるように流れる。170□