日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 川部儀八郎藤原正秀 Masahide Katana

2015-12-11 | 
刀 川部儀八郎藤原正秀


刀 川部儀八郎藤原正秀天明四年八月日

 水心子正秀三十五歳作の相州伝。古作の再現を目指して鍛え肌が強く立つように微妙に質の異なる鋼を合わせ鍛えたものであろう、高い技術が故に疵気なく鍛着は緻密、しかも全面に付いた地沸を分けるように地景状の綺麗な肌目が浮かび上がっている。晩年は鎌倉時代の備前刀に還るべきだと考えた正秀だが、若い頃はこのような相州伝大互の目の出来を専らとしていた。刀はまず地鉄である。もちろん姿形と刃文も重要だが、地鉄は刀の命である。その地鉄に工夫を加え、無地風に詰み澄んだ地鉄からの脱却を狙ったのであろう、刷毛目のように綺麗に立つ肌目が、刃中にまで及んでいる。沸の粒子が揃って、しかも明るく冴えた焼刃は、刃文の形状が判然としない乱刃。助廣を手本とした濤瀾乱や大互の目とは異なり、刃境が茫々として大きくほつれ、沸粒がそれに絡んで流れるような景色を生み出している。もちろん狙いはそこにあったのだろう、帽子まで刃境に細い沸筋が連なり、先掃き掛けを伴ってわずかに返る、古作写し。二尺三寸一分。




平造脇差 薩州住藤原正商 Masaaki Wakizashi

2015-12-04 | その他
平造脇差 薩州住藤原正商


平造脇差 薩州住藤原正商(三代正房前銘)

 刃長一尺二寸二分、反り一分、元幅一寸二厘、棟重ね二分六厘と、この工としては比較的おとなしい出来。この工の特質は、江戸時代最初期にあるようながっちりとした造り込みの相州伝に他ならない。とは言え、この小脇差でも相州伝の魅力が滲み出ている。薩州正商は姓名を丸田惣左衛門。五十歳前後に正房三代目を継いでいる。作風は先に紹介した通り江戸時代初期の豪壮な造り込みで、相州伝に美濃伝を加味した焼頭が尖りごころを見せる沸出来互の目乱が多い。本作もその特徴を示しており、鍛え強く板目が現れた地鉄に濃淡変化に富んだ地沸が厚く付き、刃文は高低のある互の目乱れ刃。