日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 御勝山永貞 Nagasada Katana

2016-11-30 | 
刀 御勝山永貞


刀 御勝山永貞

 身幅たっぷりとして寸法は尋常、反りを付け鋒を伸ばし、腰元上あたりから薙刀のように棟の肉を削いで截断能力の高まる工夫をしている。迫力ある造り込みだ。地鉄は良く詰んだ板目肌で、地沸が厚く付き、肌目と感応し合って地景を生み、渦巻くような板目肌が綺麗に起って見えている。この肌目は刃中にまで及ぶ。刃文は沸の強い互の目乱。互の目の頭は丸みを帯びて玉状になる部分がある一方で尖り調子、矢筈調子など穏やかに変化しており、南北朝期の相州物を手本としていることが読み取れる。刃中は地中から流れ込んだ板目に沿って太く長い足を切るように砂流し、金線が走り、帽子も沸強く深く沸筋を伴って長く返る。地刃共に迫力がある。

刀 御勝山永貞 Nagasada Katana

2016-11-29 | 
刀 御勝山永貞

 
刀 無銘永貞

 磨り上げ無銘の、永貞の特徴が表れている作。三寸ほどの磨り上げで二尺三寸だから、元来は二尺六寸の長大な刀。元先の身幅が広くがっしりとし、元の寸法ではいかにも扱い難い。磨り上げは的確な判断であったと思う。地鉄は柾目がわずかに揺れて地沸で地景が明瞭に浮かび上がる強みのある肌合い。鍛え肌は刃中にも表れている。刃文は湾れに互の目交じりで、帽子は浅く乱れて先小丸に返る。沸強く深い焼刃は、鍛え目と感応してほつれ、金線、沸筋、砂流しなどの働きは刃縁辺りに濃密に表して見どころが多い。
  

刀 信國美直 Yoshinao Katana

2016-11-28 | 
刀 信國美直


刀 信國美直

 江戸時代後期の筑前信國派の刀工。銘文に「正宗以写」とあることから、古作への想いを鎚に込めた意欲作であることが判る。身幅広く重ね厚く、樋を掻いてその中に不動明王の肉彫を施している。地鉄は小板目肌が微塵に詰んで微細な地沸で覆われている中に板目流れの肌が綺麗に浮かび上がっている。時代的に無地風に詰むのが特徴だが、板目を加えて古風な仕立てを目論んでいるのが判る。刃文は抑揚のある互の目で、沸深く厚く明るく、砂流しや沸筋と言った派手な働きはないものの、太い足が入り島刃が入るなど相州風を求めていることは明瞭。帽子はわずかに湾れ込んで先小丸に返る。

刀 永國 Nagakuni Katana

2016-11-26 | 
刀 永國


刀 永國

 永國は江戸初期万治頃の江戸の刀工で、大和守安定に有縁とみられる。作品が少ないため、系統や代別が良く判らない刀工。一方で、宮本武蔵に斬り付けたという伝説があることから、それほど無名の工でもなく、伝説の生まれる背景には何らかの理由が備わっているはずで、高い技術力を備えていたものと思われる。良く詰んだ小板目鍛えの地鉄は地沸で覆われて抑揚変化に富み、その地の動きは刃中に及んでいる。刃文は直刃調に見えるもさにあらず、沸匂深く明るく、刃中に広がる沸はほつれ、砂流し、沸筋、足といった明瞭な働きを成しているのではなく、それらが混然一体となったような、沸の濃淡が景色を成しているというべきであろうか、頗る面白い出来である。帽子も沸深く強く、掃き掛け風に乱れを伴う小丸返り。優れた相州伝の刀である。

脇差 法城寺國正 Kunimasa Wakizashi

2016-11-26 | 脇差
脇差 法城寺但馬守國正


脇差 法城寺但馬守國正

 虎徹とも交流のあった法城寺國正の、虎徹によく似た出来の脇差。良く詰んだ小板目鍛えの地鉄に地沸が付いて細かな地景で肌目に動きが感じられる。刃文は焼幅の広く沸の深々とした互の目調子ながら、地刃の境界が明瞭でなく、古風な乱刃。小沸主調の焼刃は匂を交えて明るく、刃中に広がる沸の足も長短抑揚があり、刃中に満ちた沸が砂流しや沸筋ほどではないが自然に現れ、その濃淡によって流れるような景色が浮かび上がる。


刀 越後守包貞 Kanesada Katana

2016-11-25 | 
刀 越後守包貞


刀 越後守包貞

 大互の目乱や濤瀾乱を得意とした包貞だが、このような湾れ出来の、相州古作を手本とした作も遺している。地鉄は大坂新刀らしい小板目鍛えで地沸が付き、肌目を分けるように地景が浮かび上がる。刃文は湾れの所々が焼深くなり、時に鎬筋辺りにまで達し、定形化せずに抑揚がある。沸の深い焼刃は明るく、湾れに浅い互の目が交じり、沸筋、沸の喰い違い、金線砂流しが盛んに入る。帽子も沸筋が働き強く掃きかけて返るなど常の小丸返りとは異なり、いかにも古調。刃境から刃中に広がる沸のグラデーションと、そこにかかる沸筋。繊細な景色が展開している。

脇差 越中守記充 Kiju Wakizashi

2016-11-24 | 脇差
脇差 越中守記充


脇差 越中守記充

 江戸時代前期の記充は大和の出身で、大坂に出てよく詰んだ地鉄鍛えに華やかな刃文を焼く技術を学び、故国に戻って活躍した。大和の出ながら、本作は沸深い刃中に太い沸筋が幾重にも現れているところに特徴のある相州伝。湾れに浅い互の目が交じり、沸筋、喰い違い、砂流しが盛ん。特に物打から帽子に至る太い沸筋は、薩摩刀工の芋蔓にも似て激しい。刃中は沸厚く深く明るく、まさに沸の乱舞といった風情。

刀 延寿正勝 Masakatsu Katana

2016-11-22 | 
刀 延寿正勝


刀 延寿正勝文化三年

 江戸時代後期の延寿派の正勝は、薩摩刀工伯耆守正幸の門人。古く鎌倉時代に山城から移住した國村の末。本作は山城風など微塵も感じられない典型的な薩摩相州伝。まず造り込みが、身幅広く重ねしっかりとし、大鋒に茎は舩底形。良く詰んだ小板目着替えの地鉄に板目肌が交じり、地沸が厚く付いてその所々が地中に黒く強い光沢を呈して浮かび上がっている。刃文は湾れに浅い互の目。帽子は浅く乱れ込んで先も乱れ調子に小丸に返る。焼刃に沿って幾筋もの沸筋が刷毛目のように流れ、強い沸の広がりに同調して激しい景観を呈する。特に物打辺りの沸筋が強く、帽子にまで流れ込んでいる。

刀 立花隼人圀秀 Kunihide Katana

2016-11-21 | 
刀 立花隼人圀秀


刀 立花隼人圀秀文化四年

 圀秀は上野国出身の刀工。相州伝で名高い一貫斎義弘に学んで相州鎌倉に移住した。一貫斎一門は、微妙に質の異なる鋼を組み合わせて板目肌が綺麗に浮かび上がる地鉄鍛えを得意としている。ここに相州古作を手本とした意識が窺える。本作もその影響が良く示された刀で、寸法二尺三寸七分と、伸びやかな姿格好。刃文は互の目に小丁子、尖刃などが交じって小模様に複雑に乱れ、匂口締まって冴えており、刃境には鍛え肌に伴う筋状の働きが顕著。刃中には沸匂の広がりと、小足、地中には飛焼が配され、帽子は激しく乱れ込んで返り、相州振りが顕著である。

脇差 常陸守宗重 MUneshige Wakizashi

2016-11-21 | 脇差
脇差 常陸守宗重


脇差 常陸守宗重

 江戸時代前期の大坂では、斬れ味に優れた多くの刀工が活躍していることは前にも説明したことがある。宗重もその一人。この脇差は、常に比べて元先の身幅が広く。重ねは尋常に迫力のある造り込み。小板目鍛えの地鉄は、大坂物らしく良く詰んで地沸で覆われ、地底に細かな地景が観察される。刃文は互の目に湾れの複合。刃形は一定にならず抑揚変化し、刃中に小足が入り沸が広がり、肌目に沿って金線が走る。特に物打辺りの刃縁の景色が濃密で、帽子は物打辺りから連続している金線が流れ込み、先は小丸に返る。

脇差 繁慶 Hankei Wakizashi

2016-11-19 | 脇差
脇差 繁慶


脇差 繁慶

 繁慶というと、則重のように強い柾目と板目の複合になる地鉄鍛えで、柾状の疵気も普通にあることから、ヒジキ肌の呼称がある。ところがこの脇差は、常の作に比べて小板目肌が良く詰んでいる中に穏やかに板目が交じる程度。常の印象で鑑ては全く当たらないと思う。実は、繁慶にはこのような綺麗な地鉄の作がある。刃文は不定形に乱れる互の目で、沸強く深く、刃境には二重に乱れているように太い沸筋が交じって刃中にも沸が広がり、砂流しが加わる。帽子は沸で乱れて返る。

脇差 廣助 Hirosuke Wakizashi

2016-11-18 | 脇差
脇差 廣助


脇差 廣助

 相州伝の影響を強く受けた島田廣助の平造小脇差。一尺二寸強で、反りが深く二分五厘。いかにも戦場で活躍した、という印象が強い。物打からふくら辺りに張りがあり、鋒の焼も深く、健全度の高さがうかがえる。地鉄は小杢を交えた板目肌に地沸が付いて飛焼状に地沸が叢付き、地景が強く現れて姿格好と共に迫力がある。刃文は焼の深い互の目だが形状は定まらず、帽子もそのまま乱れて返る。沸を主体とした焼刃は、匂口潤み調子で、匂のほつれが長短の足の入った刃境を流れ掛かる。□

短刀 弘幸 Hiroyuki Tanto

2016-11-17 | 短刀
短刀 弘幸


短刀 弘幸

 堀川國廣の門人、平安城弘幸の九寸八分強の短刀。相州古作を意識したもので、刀身に比べて大振りの彫刻を施している。時代は慶長頃だから、先反りの付いた姿は戦国期の名残り。地鉄は、國廣一門にありながらもさほどザングリとした感はなく小板目肌が良く詰んでいる。刃文はこの工らしく、やはり國廣門人らしからぬごくごく浅い湾れ。浅い焼刃であっても相州気質は顕著で、小沸と匂の複合からなる焼刃の刃境が穏やかにほつれ掛かる。□



脇差 和泉守國貞(真改) Kunisada Wakizashi

2016-11-16 | 脇差
脇差 和泉守國貞(真改)

 
脇差 和泉守國貞

 真改國貞の、真改に改銘直前の寛文十二年の脇差。一尺八寸弱。反りを二分に控えた時代の姿格好が、健全に残されている。小板目鍛えの地鉄が特に綺麗だ。均質に詰んだ中に細かな地景が網目のように交じって、さらに細かな地沸が全面を覆い、肌立たずにしっとりとして潤い感に満ちている。これが大坂の横綱に位置付けられ、大坂正宗と評価された真改の真実だ。刃文は浅く湾れ、帽子も調子を同じくごく浅く湾れ込んで先小丸に返る。均質で深々とした小沸による焼刃は、刃境がほつれて刷毛目のように掃き掛け、刃中には細かな沸筋、砂流し、金線が肌目に沿って流れる。沸は刃先近くまで広がり、匂による冴えと複合して一段と明るい。写真でこの全貌が伝えられないのは残念。現品を手にとって見てほしい。□
 




短刀 肥前國忠吉 Tadayoshi Tanto

2016-11-15 | 短刀
短刀 肥前國忠吉


短刀 肥前國忠吉

 初代忠吉の寸伸び短刀。身幅たっぷりとして先反りが付き、いかにも実用の武器。腰元に不動明王と護摩箸の表裏重ね彫りをしており、健全体躯を保っていることから、御家の護りとして大切に伝えられたことが推測される。地鉄は忠吉、忠廣の追求した小糠肌とも呼ばれる肥前肌。所々に板目肌が浮かび上がって地沸で覆われている。刃文は互の目に湾れの複合。刃縁の沸が深く明るく、刃中には沸が流れ込んでほつれ掛かり、一部は控えめな砂流しとなる。大ぶりの彫物が施された幅広の造り込みに、沸深い焼刃は相州伝。その一方で、完成度の高い肥前独特の風合いが滲み出ている。