日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 彦兵衛尉祐定 Sukesada-Hikobeenojo Katana

2018-05-31 | 
刀 彦兵衛尉祐定


刀 備前國住長舩彦兵衛尉祐定 文亀三年

 刃長一尺八寸七分、反り五分五厘。腰元に草の剣巻龍の彫物があり、上身には棒樋が掻かれている。上位の武将の備え。時代に応じた抜刀し易い片手打ちの名品である。地鉄は良く詰んだ杢交じりの板目肌だが、微塵に詰んでおり、肌目は焼の深さも加わって分かり難い。刃文は複雑に乱れた小丁子や小互の目尖刃などを複合した腰開き互の目。その焼頭が蟹の爪のように尖っている部分もある。祐定らしい出来だがもう少し時代の上がる盛光風のところもある。





短刀 備州長舩祐定 Sukesada Tanto

2018-05-29 | 短刀
 祐定の工銘は、全刀工の中でも最も多い。祐定は戦国時代に隆盛した作刀技術集団であり、現代風に言えば規格化された製造工程を持つ武器製造会社である。良く言われるように、量産品の製作は分業であった。特別の注文作に関しては、与三左衛門尉や源兵衛尉のような棟梁祐定か、指定された特定の祐定が、最も重要な鍛えと焼き入れを施したと考えてよいだろう。銘鑑を見ると、祐定銘は南北朝期に始まるようで、永享、寛正、明応頃から次第に増え、永正頃から急激に遺例が多くなり、年紀作も遺されていることから、この頃の当主彦兵衛尉祐定が一門をまとめて、多大な需要に応える体制造りをしていったと思われる。祐定の時代的な流れを俯瞰してみようと思う。どのような移り変わりがあるのだろうか。それが見えてくるだろうか。



短刀 備州長舩祐定 明應五年

 個銘は記されていないが彦兵衛尉祐定の両刃造短刀。以前にも紹介したと思う。時代の上がる短刀は、上身が短く茎が長めの姿格好。地鉄は良く詰んだ小板目肌。わずかに腰の開いた互の目の刃中に砂流沸筋、金筋が稲妻状に流れ掛かる。



脇差 横山上野大掾祐定 Sukesada Wakizashi

2018-05-28 | 脇差
脇差 横山上野大掾祐定


脇差 横山上野大掾祐定

 江戸時代における祐定家の隆盛は、この工の力によるところが多い。上野大掾祐定は七兵衛尉の子。腰開き互の目の焼頭に小丁子を複合させて蟹の爪状、或いは角刃、矢筈刃としている。良く詰んだ地鉄に刃文も明るく冴えており、高い技量が窺える。互の目の中の小丁子や尖り調の刃の組み合わせが巧みだ。刃先に広がる小沸の中に砂流を交え、浜辺の砂の流れるような景色としているのも綺麗だ。





刀 七兵衛尉祐定  Sukesada-Sichibeinojo Katana

2018-05-25 | 
刀 七兵衛尉祐定

 
刀 七兵衛尉祐定寛文三年

 七兵衛尉祐定は、与三左衛門尉祐定の五代孫。戦国時代の祐定など長舩鍛冶は、天正十九年の水害で鍛冶場を失い、亡くなった刀工もあり、言わば長舩鍛冶の壊滅であった。だがわずかの刀工がその技術を守り、江戸時代前期から中期にかけて再興を果たした。七兵衛尉祐定はそのような中で水害から逃れた一人。水害時は十五歳、この刀は寛文三年、八十七歳の作。二尺一寸強。戦国時代の祐定の特徴でもある蟹の爪風の互の目乱の面影を感じさせる出来。腰開き互の目に小足が入り、沸が明るく冴えている。実用を意識しているのであろう、帽子は返りが長い。





脇差 相模守泰幸 Yasuyuki Wakizashi

2018-05-24 | 脇差
脇差 相模守泰幸


脇差 相模守泰幸

 この泰幸は寛文頃の刀工。美濃の出で、他の刀工と同様に移住した尾張を活躍の場とした。やはり他の多くの美濃刀工と同様に相州伝を強く意識した作風である。地鉄は詰んだ小板目肌で地沸が厚く付く。刃文は小互の目に厚い沸が帯状に絡んだ出来で、肌目に沿った金線、砂流し、沸筋などが流れ掛かり、沸の粒も大小変化に富んで荒々しい雰囲気。互の目の高さは高低抑揚があり、これも焼刃に変化を与えている要素。沸が綺麗な出来である。





刀 伯州秀春 Hideharu Katana

2018-05-23 | 
刀 伯州秀春


刀 伯州秀春

 この秀春は、伯耆国の幕末の刀工。二尺五寸強の堂々とした造り込み。地鉄は良く詰んだ小杢目肌。地沸が付いてしっとりとした感がある。刃文は互の目が上下に長く伸びるような構成で、ちょっと変わった趣となり、工夫の跡が窺える。しかも互の目の内側には小丁子風の乱れを加えて更なる変化を求めているようだ。刃境、特に互の目の頭には小沸が付いて冴え、刃中に広がる沸の帯も、独特の互の目から生まれたものであろう海に広がる砂州のように見える。個性的で綺麗な刃文である。





刀 播磨大掾忠國 Tadakuni Katana

2018-05-22 | 
刀 播磨大掾忠國


刀 播磨大掾忠國

これも忠國の刀。二尺四寸強の寸法で、元先の身幅しっかりとし、張りのある姿格好。地鉄は小板目肌が詰んで地沸が付いた極上の肥前肌。肥前刀というと忠吉系の直刃が思い浮かぶのだが、忠國は互の目に変化をつけた乱刃が得意であった。焼頭が一定にならず出入り複雑、互の目に伴って長短の足が入り、刃縁の沸が明るく冴える。肌目に沿ったほつれから淡い砂流へと変じ、刃中の足に絡んで流れ掛かる。これも綺麗な出来である。□170








刀 播磨大掾忠國 Tadakuni Katana

2018-05-22 | 
刀 播磨大掾忠國


刀 播磨大掾忠國

 研磨の技法が要因で刃文が弱く見えるのだが、光に翳してみると鮮やかに輝く冴えた出来。しかも出入複雑に乱れが強く、互の目の頭は矢筈状に左右に開くなど、独創と工夫の跡が窺える。刃中に広がる足を金線を伴う砂流しが切り、互の目の中に葉が交じり、所々穏やかな飛焼も入り、帽子は乱れ込んで先掃き掛けて長く焼き下がる、総体に変化を求めた出来となっている。何より、沸が明るく、綺麗だ。





脇差 駿河守國正 Kunimasa Wakizashi

2018-05-21 | 脇差
脇差 駿河守國正


脇差 駿河守國正

 この國正は江戸時代前期の伊予宇和島の刀工。一尺八分の平造小脇差で、小板目鍛えが良く詰んで広直刃調の刃文を焼いている。小沸に匂の複合した焼刃は、真直ぐではなく、小模様に浅く乱れている。ごくごく小さな互の目が交じっているようで、これが焼幅に変化をもたらし、単調ならざる直刃となっている。帽子の返りが長く、この中にも小足状の働きが窺える。



刀 肥前國忠廣 Tadahiro(Tadayoshi-ⅴ) Katana

2018-05-18 | 
刀 肥前國忠廣

 
刀 肥前國忠廣(五代忠吉)

 二尺五寸強の身幅広く重ねの厚い堂々たる体躯。上三代があまりにも有名であったが故、以降の忠吉は少々影が薄くなってしまったが、代々の忠吉はこのような美しく力強い、優れた作品を遺している。地鉄は伝統的肥前肌でこれも綺麗。刃文は小互の目乱刃。刃境が互の目に小丁子、尖り調の刃などを交えて複雑に出入し、肌目に沿ったほつれが掛かり、沸筋、金線が長く絡んで変化に富んだ景色となっている。帽子も丸く返るのではなく、湾れ込んで掃き掛けを伴い返りはごくわずか。古作を手本としたものであろうか。





刀 和泉守國貞 Kunisada Katana

2018-05-18 | 
刀 和泉守國貞


刀 和泉守國貞

 初代國貞のかなり強い乱刃出来。安定感のある姿格好に、網目状に淡い地景の入る地鉄。無地風の微塵な梨子地風といった感じではなく、また荒いわけでもなく肌目に強みが感じられる。刃文は綺麗な小互の目乱刃。沸が深く強く、鍛え目に沿ってほつれが強く入り、足を切って砂流し状に掛かる。このような沸の美観が國貞一門の特徴であり、子の真改がさらに沸深い焼刃を完成させている。






脇差 越前國兼法 Kanenori Wakizashi

2018-05-17 | 脇差
脇差 越前國兼法


脇差 越前國兼法寛永五年

これも兼法。一尺三寸強、身幅広く鎬が張って重ね厚く、大鋒。江戸最初期の典型的造り込み。刃文は表が沸筋砂流し金線が交じって穏やかに流れる湾れが主体の構成、裏は互の目が顕著で、帽子はいずれも乱れ込んで先尖り調子に返る。表裏刃文を違えた作である。江戸最初期にはこのような奇抜な作風が好まれたようで、拵も派手であったり、奇妙であったりと、他者との違いを明瞭にする気風があった。地鉄は板目が強く現れて武骨な感がある。刃文の綺麗な出来である。□80





短刀 兼法 Kanenori Tanto

2018-05-17 | 短刀
短刀 兼法


短刀 兼法

 江戸時代最初期慶長頃の越前刀工。刃長一尺弱。身幅の広い、戦国期からこの時代にかけての特徴的覇気に富んだ姿格好。地鉄鍛えは古刀を想わせる板目が激しく現れたもので、地景が絡んでとても力強い景色となっている。刃文は湾れに小互の目が交じり、帽子は火炎風に激しく乱れて返る。焼刃は小沸が明るく、刃境にほつれが掛かり、淡い金線が横切る。湾れの谷部に配された小互の目の調子も強くなく、むしろ凄みが感じられる。





刀 安穏寺正幸 Masayuki Katana

2018-05-16 | 
刀 安穏寺正幸


刀 安穏寺正幸

 この正幸は江戸前期の陸奥国相馬の刀工。全国を視野に入れると知名度の低いあまり聞かない工銘だが、かなり出来の良い作品を遺している。この刀は、小板目肌が良く詰んで鎬地は柾目調に江戸期の刀の掟通り。刃文は小沸出来の湾れに浅い互の目が交じり、刃形は単調にならず、帽子はわずかに掃き掛けを伴う小丸返り。刃境には小沸が付いてほつれ掛かり、刃中は小沸と匂で明るい。





刀 和泉守兼定 Kanesada Katana

2018-05-16 | 
刀 和泉守兼定


刀 和泉守兼定

 会津十一代兼定の直刃出来の刀。慶応三年八月紀であり、動乱の最中の作。二尺三寸強、反り四分五厘の扱い易い寸法と反り格好。柾目鍛えの地鉄は刷毛で撫でたように綺麗に揃った肌目が連なり、鍛着が密に良く詰んでいる。折損を考慮したものであろう、刃文は小沸に匂が交じった細直刃。実用のものながら、美しい地刃となっている。□