日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 祐包 Sukekane Katana

2011-01-29 | 
刀 祐包


刀 銘 備前國長舩住公職横山藤原祐包元治甲子之冬



 二尺二寸の扱い易い寸法とし、反りを七分ほどに仕立てた、実用性を求めた造り込み。この時代には寸法を極端に長くした例があり、それが幕末の時代性であるかのようにみられているが、身長が最も低いといわれる幕末期においては長すぎる。抜刀のし易さ、室内戦などを考慮すれば二尺一寸前後が最も良い。この刀は、実は岡山藩士が長州攻めの際に注文したもので、この時代の実戦の武器。地鉄はこの工の特徴的な良く詰んだ小板目肌。互の目に丁子を交えた刃文は、互の目が様々の形をもって高弟変化し、刃縁には小沸がついて鮮やか。横山祐包(すけかね)らしい出来である。


脇差 祐包 Sukekane Wakizashi

2011-01-27 | 脇差
脇差 祐包

 
脇差 銘 備前長舩住横山祐包嘉永三年八月日

 刃長が一尺三寸ほどの、南北朝時代の造り込みを手本とした、横山祐包(すけかね)の平造脇差、南北朝時代であれば腰刀というべきか、寸法を抑えて先反りごころに堂々とした姿格好。地鉄は良く詰んだ小板目鍛えで、無地風になり細かな地沸が全面に付く。やはり刃文構成に見どころがあると言えよう。互の目が二つ三つと複合して茶の花のように丸みを帯び、足は左右に開き心に盛んに射す。拳丁子の変形であり、刃形に独創を求めた一例。この独創的華麗さが、鎌倉時代の備前者とは異なるところ。廃刀令がなく、その後も刀が製作されているとしたら、いったいどのような刃文が創案されたのであろうか、もしもという言葉は歴史上では無意味ではあるが、このような幕末の創造的刃文を見ると、つい考えてしまう。

 

短刀 横山祐包 Sukekane Tanto

2011-01-24 | 短刀
短刀 横山祐包

 
短刀 銘 備前長舩住横山祐包天保十三年

 祐包は先に紹介した祐永の甥に当たる。祐永と同様に備前古作を手本として江戸時代後期の需要に応じた綺麗な互の目丁子を得意とした。
鎧通し風に重ねの厚いしっかりとした作。地鉄は微塵に詰んだ小板目肌で、殊に鍛えに叢がなく整然としている。刃文は焼幅に抑揚のある互の目に丁子を交えた構成で、足は長くはないが淡く綺麗に入る。刃縁はくっきりとしておらず、自然味があり、刃縁のほつれ、端整な小丸返りとなる帽子の淡い掃き掛けも、地底にある鍛え目に感応した働き。美しい短刀である。

カラー写真のデータを紛失してしまったため、モノクロで紹介する。刀身写真は、色の再現がたいへん難しいため、多くの印刷物ではモノクロ写真を用いている。実際に撮影する段階でモノクロのフィルムを用いると、頗る綺麗な写真が出来上がる。カラーフィルムからではおのずと限界があり、その傾向はデジタルでも同様。実は刀身はモノクロで鑑賞したほうが微妙な働きまで良く見えるかもしれない。

 

刀 横山加賀介祐永 Sukenaga Katana

2011-01-22 | 
刀 横山加賀介祐永




刀 銘 横山加賀介藤原朝臣祐永天保十四年

江戸時代後期の備前刀工の多くは、鎌倉時代の長光などを手本とした太刀風の刀を製作している。この刀も殊に造り込みに鎌倉時代の風があり、寸法長く腰反り深く、姿に品格がある。ただし、鎌倉時代の太刀とは使用方法が異なるために姿は微妙に異なる。地鉄は微塵に詰んだ精良な小板目鍛えの所々板目が現われ、細かな地沸が付いて美しく潤う。刃文は互の目丁子に足の盛んに入る出来だが、長光、光忠、一文字などなど、基礎となる鎌倉時代の刃文構成とは異なり、独創性に満ちている。互の目が小丁子で複式に乱れ、地に突き入って丸みを帯びた頭が抑揚変化し、時にオタマジャクシのようになり、あるいは茶の花のようにも見える。地肌にみられる細かな横方向の線は、刀身表面に付いた摺り疵の一種。もちろん研磨で簡単に、しかも綺麗に除去が可能である。


脇差 大和守祐定 Sukesada-Yamatonokami

2011-01-21 | 脇差
脇差 大和守祐定


脇差 銘 備前國長舩住祐定正徳六年二月日

大和大掾祐定の受領前の作。小板目鍛えの地鉄に小沸出来の直刃を焼いた作で、美しい構成線を鮮明にしている。時代の上がる備前伝の地鉄とは風合いを異にしており、江戸時代中期の技術力の高い一般的な肌となる。焼刃も戦国時代の清光などにみられるような直刃とは異なり、小足や葉があまり入らぬ端整な出来。焼刃の幅は区上に比して物打辺りがわずかに深く仕立てられている。


脇差 河内守祐定 Sukesada-Kawachinokami

2011-01-19 | 脇差
脇差 河内守祐定

 
脇差 銘 一河内守祐定備前國長舩住

 元禄年間に受領した工で、やはり名人の一人。この脇差は、時代背景が同じことから、造り込みも上野大掾の脇差と同様に腰反りの付いた身幅の広い姿。地鉄は小板目肌が良く詰んで無地風になり、所々に板目が浮かび、乱れ調子の映りが現われている。この点に技量の高さが現われていると言えよう。直焼出しから始まる湾れに浅い互の目を交えた匂主調の焼刃は、焼頭に尖りごころの刃や小丁子が左右に角状に交じって抑揚変化し、刃形は定型化せずに乱れ、淡い足も不定形に入る。

 

脇差 上野大掾祐定 Kouzukedaijo-Sukesada Wakizashi

2011-01-17 | 脇差
脇差 横山上野大掾祐定


脇差 銘 横山上野大掾藤原祐定備州長舩住人



 戦国時代に隆盛した祐定(すけさだ)家の鍛冶技術は、一説によれば天正十九年吉井川の水害によってほとんどの工を失い、辛うじて残された横山祐定(よこやますけさだ)系が後の祐定の本流となっている。
 上野大掾祐定(こうずけだいじょうすけさだ)は寛文から元禄頃を活躍期とした、江戸時代を代表する横山系祐定の一人。戦国時代の一般的な祐定の作風を継承した、腰開き互の目の頭が複式に乱れて蟹の爪状となる刃文を得意とし、直刃でも美しい作品を遺している。地鉄は小板目肌が良く詰み、戦国時代のような杢目交じりの板目肌とは風合いが異なる。この脇差は反りが深くがっちりとした造り込みで、元禄頃の特徴が明瞭。地刃の出来に優れた技術のほどが良く現われている。



刀 大和守元平 Motohira Katana

2011-01-15 | 
刀 大和守元平


刀 銘 大和守朝臣元平 寛政五丑春

 

 正幸と共に江戸時代後期の薩摩を代表する名工奥大和守元平(もとひら)の、まさに全体が沸に包まれている感がある薩摩刀らしい沸強い刀。身幅広く重ねたっぷりとして、刃肉あり、造り込みも薩摩刀のそれ。地刃を越えて湧き出すように全面に付いた沸は白く輝き強く、小板目鍛えに大肌の混じる独特の地鉄と働き合い、時に地景に伴い沸筋状の肌を地中にも現わす。この流れた杢目状の地景が刃境に現われて釣り針のように見える態は、この工の特徴の一つと言われている。湾れに互の目を複合した焼刃は、常に見る激しい沸筋の掛かる出来とは異なって温潤味がある。

 

刀 薩州住良一 Yoshikazu Katana

2011-01-13 | 
刀 薩州住良一


刀 銘 薩州住良一 天明五年巳二月



 正良の門人で、その協力者として生きたが故に、良一銘の作品はきわめて少ない。微塵に詰んだ小板目鍛えの地鉄は、繊細な地景を交えて杢目状の肌がうっすらと浮かび上がって見え、総体にしっとりとした観がある。匂が淡く広がる刃中に小沸が深く付き、これが地刃の境を越えて叢付く。刃境には小沸のほつれが流れるように付いて爽やかな砂流しに連なる。地刃の働きには過ぎることのない抑揚があり、これが大きな魅力となっている。恐らく特別の注文に応えて入念に鍛えたものであろう、二尺四寸五分の寸法に身幅広く重ねがっしりとしており、強みの感じられる刀だが、精妙なる出来となっている


剣 薩州住正良 Masayishi Ken

2011-01-10 | その他
剣 薩州住正良

 
剣 銘 薩州住正良 安永七戌二月日

 正良のたいへん珍しい剣。沸強く深く、光りを受けては白く輝き、冴えて地に浮かび上がって見える。地鉄は小板目肌に板目が交じり、地沸が厚く付いてしっとりとした質感がある。刃先に迫る沸は、流れるような沸筋、砂流し、刃縁からのほつれ、所々に入る長い金筋などと働き合う。刃中から地にまで、真砂のような小沸が刃境を越えてパラパラと流れるように付いており美しさが際立つ。