日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 長舩祐定 Sukesada Katana

2017-02-28 | 
刀 長舩祐定

 
刀 長舩祐定永正九年

 彦兵衛尉祐定の、祐定らしい出来。二尺二分だから明らかに片手打ち。身幅を控えて棟の肉を厚く造り込み、樋を掻いてさらに扱い易さを追求している。これが戦国時代永正頃の高級武将が所持した片手打ちの典型である。地鉄は良く詰んだ板目で所々に杢目を交えて総体が小杢目肌に見える。地沸で覆われ映りが立ち、極上質の地鉄である。刃文は腰の開いた互の目に小丁子を複合した、室町時代の備前物の特徴的構成。互の目や小丁子の一部が地に尖り、飛焼状の部分もある。帽子は穏やかに乱れ込んで先尖り調子に返る。匂口の締まった焼刃は冴え冴えとしている。
    

刀 筑前守平信秀 Nobuhide Katana

2017-02-27 | 
刀 筑前守平信秀


刀 筑前守平信秀

 清麿門の巧者。丸みのある茎、元先の身幅の広く鋒の伸びた造り込みなどは師を見るようだ。地鉄は良く詰んだ小板目肌で、地沸が付いて細かな地景が交じる。刃文が互の目に小丁子を交え、帽子も調子を同じく乱れて返る。焼刃は小沸を主体に匂を伴い明るく冴える。匂の満ちた刃中に足が盛んに射し、総体に冴え冴えとしている。刃境は柔らか味のある匂と小沸でふっくらとし、出入り複雑に互の目の形状が様々。互の目の中に小足を伴う小丁子が単調にならずに交じっているのだ。

刀 米沢住義國 Yoshikuni Katana

2017-02-25 | 
刀 米沢住義國


刀 米沢住義國弘化四年

 江戸後期の備前伝。刃長二尺三寸強、反り五分半。バランスの良い姿格好の刀。地鉄は良く詰んだ小板目肌に細かな地沸が付いてしっとりとした感がある。刃文が小丁子の連続で、帽子は直に丸く返る。小丁子は四つほどが一つの単位となり、わずかに高低抑揚を付けながらその繰り返しとなる。小沸の足が長く射し、刃中は匂で明るく冴えている。刃縁の所々に小沸が叢付いて真砂のように輝いている。

刀 水心子正次 Masatsugu Tachi

2017-02-25 | 太刀
刀 水心子正次


刀 水心子正次安政四年

 正次の中では最高傑作である。二尺四寸、反り六分強。平肉が付いてどっしりとしとした、鎌倉中期の備前刀を手本としたもの。地鉄は良く詰んだ小板目肌だが、その中に板目が微かに現れ、淡い映りも立って古作に近付こうとした研究の成果が窺える。刃文は互の目に小丁子、肩落風の刃が交じり、出入複雑に変化に富んだ構成で、帽子も同調して乱れ込んで返る。匂を主調とする焼刃は、匂口が締まって明るく冴え冴えとし、匂が満ちた刃中に長短に足が浮かび上がる。正次は正秀の三代目で直胤の弟子。高い技量と鋭い感性を持ち、本作のような個性的な作品を遺している。290□

脇差 水心子正次 Masatsugu Wakizashi

2017-02-24 | 脇差
脇差 水心子正次嘉永四年


脇差 水心子正次嘉永四年

 正次は新々刀の父と呼ばれる水心子正秀の三代目。作刀は大慶直胤に学んでいる。大慶直胤は、水心子正秀の備前伝を学んでその教えを実践した一人。この脇差は、造り込みに直胤の特徴が窺え、どっしりとして覇気に富んでいる。地鉄は小板目肌が詰んで細かな地沸で覆われ強みが感じられる。刃文がすごい。焼の深い小沸出来の互の目に小丁子が交じり、刃境が複雑に乱れて焼頭にも出入があり、長短の足が長く複雑に入り、刃中に満ちた匂と沸の雲間に濃淡変化を与えている。帽子も乱れ込んで先小丸に返る。

脇差 河内守國助 Kunisuke Wakizashi

2017-02-24 | 脇差
脇差 河内守國助


脇差 河内守國助

 同じ二代目の國助。いずれも独創を求めた結果選んだ作風だが、古風な備前物とは趣を異にして鮮やかな刃文構成となっている。前に紹介した刀に比較して拳丁子の構成が美しい。その刃中に匂の流れが感じられる部分があり、また小互の目が玉状に見える部分もあるなど、構成美において、より高い独創を求めていることも窺える。

刀 河内守國助 Kunisuke Katana

2017-02-23 | 
刀 河内守國助


刀 河内守國助

拳丁子と呼ばれる、小丁子が配合されて丸みを帯びた互の目が拳形に連続する刃文構成を考案して高い人気を得たのがこの國助だ。江戸時代前期の大坂では、相州振りを強くしていった助廣や真改があると同時に、國廣‐初代國助‐この二代國助のように次第に備前伝を強めていった工もある。この刀も、互の目の中に小丁子を複合しているために互の目が拳のように見えるところが所々にあるが、総体は焼頭に抑揚のある互の目丁子の出来。足が左右に開き調子となり、刃中は匂が満ちて明るく、匂足が鮮やかに際立つ。さすがと言わざるを得ない。磨り上げで二尺三寸強だから、元来は二尺五寸強。江戸前期の寛文頃にこのような刀を注文した武士がいたのだ。160□

刀 雲州長信 Naganobu Katana

2017-02-23 | 
刀 雲州長信


刀 雲州長信弘化三年

江戸時代後期の備前伝。刃長二尺二寸五分、元先の身幅に大きな差のない、南北朝の大太刀を磨り上げたような姿格好だが、形が良い。地鉄は良く詰んだ小板目肌で、微妙に質の違う鋼が混ぜ込んであるのだろうかその所々に板目が現れている。刃文は互の目丁子。師は備前伝で知られる長運斎綱俊。長信もまた斬れ味に優れていたことが知られている。刃文は物打辺りを見ると、丁子が下方にわずかに傾いているのが判る。帽子は乱れ込んで先小丸に返る。

脇差 粟田口近江守忠綱 Tadatsuna Wakizashi

2017-02-22 | 脇差
脇差 粟田口近江守忠綱


脇差 粟田口近江守忠綱

江戸時代初期、初代忠綱の、わずかに逆がかる小丁子出来の作。押し合うように密集した小丁子の頭は微妙な高低.抑揚があり、これに伴って小足が盛んに入り、足の先端が所々切れて飛足となり、繊細で緻密な江戸時代の備前伝の魅力が充満している。もちろん鎌倉時代の古作を手本としたものだろうが、鎌倉時代の本歌以上に緻密に詰んだ小板目肌が大坂物の特質であり、古風さという点については古作に及ばないものの、焼刃構成や刃中に射す足の鮮烈さは負けることがないだろう。



短刀 長舩幸光 Yukimitsu Tanto

2017-02-21 | 短刀
短刀 長舩幸光


短刀 長舩幸光明徳十年

 戦国期長舩刀工の短刀。戦国時代でも年代が上がる作は、このように刃長(五寸五分)が短いにもかかわらず比較的茎が長い仕立てとされている。穂先三寸と言われるように刃物は三寸もあれば十分に殺傷能力を持つ。短めの短刀を具足の腰に収めて戦場で盛んに使用したものであろう、鎧通しもこれに似ている。地鉄は杢目交じりの板目鍛えが良く詰んで小板目風となり、細かな地沸で覆われ、戦場で用いる武器かと思えるほどの美しさ。刃文は匂主調の互の目乱。形状がはっきりとせずに乱れ、足も定まらずに自然味がある。総体に柔らか味の感じられる出来である。この質感は室町時代前期から中期にかけての特質でもある。

刀 長舩法光 Norimitsu Katana

2017-02-20 | 
刀 長舩法光


刀 長舩法光明應九年

 刃長二尺二寸九分、反りが八分と深い。一寸五分ほどの区送りだから、元来は二尺五寸に近い豪快な作。この時代のこの寸法だから、刀銘ながら太刀という性格で用いられていたと思われる。地鉄は良く詰んだ板目で、地沸が付き乱れ映りが顕著に起つ。刃文は小模様な互の目に小丁子、尖刃が交じり、出入小模様に乱れて刃境は複雑。匂主調に小沸が付き、刃縁ほつれ掛かり、刃中に至って砂流しが流れ、小足、葉が入る。丸みを帯びた小さめの焼頭が離れて玉状の飛焼となる。帽子も調子を同じく乱れ込んで返る。



太刀 長舩政光 Masamitsu Tachi

2017-02-18 | 太刀
太刀 長舩政光


太刀 長舩政光

 無銘で金象嵌が施された、南北朝時代の政光極めの作。政光は南北朝時代後期の刀工であり、南北朝時代とはいえ後期になると、鎌倉末期から南北朝中期にかけての寸が延びて幅広の豪快な造り込みとは異なり、鎌倉時代の太刀姿に戻った造り込みになると捉えればわかり易い。磨り上がって二尺三寸五分、反りは六分半、身幅の割りに肉が厚く仕立てられているところも時代の特徴。地鉄は杢目交じりの板目肌。地沸が付き映りが立ち、凄みがある。刃文は兼光風の逆がかる浅い互の目で、帽子は浅く乱れ込んで丸く返る。匂主調に締まり、小沸が付いてわずかに足が入る。華やかに、あるいは激しく乱れているわけではない。もちろんこのような出来も備前にある。

脇差 盛光 Morimitsu Wakizashi

2017-02-17 | 脇差
脇差 盛光


脇差 盛光應永二十三年

 わずかに区が送られて一尺五寸強。室内においても常に腰に帯び、刀と同様に使うことを目的とした武器。太刀も刀も二尺前後の片手打ちが登場している。南北朝頃から一尺三寸前後の平造の小脇差も使われている。この時代、武器はより実戦に即した造り込みとされているのだ。とはいえ、この時代の地鉄は応永杢の言葉があるように、頗る綺麗な地鉄鍛えが開発されている。杢肌は斬れ味を高める要素に違いないが、美しくもあるのだ。その代表工が盛光や康光である。地鉄は板目の中に杢肌が押し合うように現れ、地沸が付き映りが立ち、刃文は腰の開いた互の目乱で高低抑揚があり、足が長く、この作では逆がかって入っており、帽子は浅く乱れ込んで返る。

脇差 福岡守次 Moritsugu Wakizashi

2017-02-16 | 脇差
脇差 福岡守次


脇差 福岡守次

 逆がかる互の目小丁子を得意とした、福岡石堂派の守次の作。是次に良く似ており、とても綺麗だ。地鉄は小板目鍛えに柾状に流れる板目を交えて所々肌立ち、古風なところと新刀期の詰んだ地鉄が交じり合って強みが感じられる。互の目の頭が地に尖り調子で三角に見えるのが特徴。これをイカの頭に擬えることがある。焼頭がオタマジャクシのように見える畠田守家などを意識したのではなかろうが、逆がかる互の目丁子の連続は大小変化があり、刃形が揃わないのも特徴。匂を主とした焼刃は明るく、濃密に匂の立ち込める刃中に逆足が溶け込む。帽子も小模様に乱れ込んで返る。この一派の個性が現れている作である。

脇差 福岡是次 Koretsugu Wakizashi

2017-02-15 | 脇差
脇差 福岡是次


脇差 福岡是次

一尺七寸強の脇差。江戸時代前期の筑州福岡に栄えた刀工集団の石堂派は、遠祖が一文字派と伝え、備前伝を特徴としている。是次はその筆頭格。福岡石堂派の備前伝互の目丁子は、逆がかるところに特徴がある。地鉄は板目が流れて柾目状となる部分があり、良く詰んで地沸で覆われ、刃文は小沸に匂の複合。互の目に小丁子が交じり、逆がかり、足は左右に開いて射し、刃中には小沸が付いて時に沸筋や砂流しを形成する。互の目の頭が傾き、袋状になるところが古作を手本としてしかも、完成度が高いのだ。是次には、本作のような備前伝を主体とした作が多いと考えられているが、実は純然たる相州物を追求した作もある。それはそれは沸が強く深く、これが是次かと思わせるような出来である。その作風は守次にもある。