鈴木の「窓に西陽が激しく当たる部屋」melow

メジャーとマイナーの漂流者・鈴木。
常に両極を嗜好するわたくしの徒然ブロ&グー。

シリーズ「砂風呂」~スパルタなあなた編

2006年11月22日 | 【鈴木の部屋】
さて、更衣室からシャワールームを抜けアルミ製の軽いドアを開けると現場が現れた。
まずは八畳ほどのござエリア。男子更衣室からもこのござエリアに通じるているようで、言うなればエントランスだ。
ここをL字形に囲むように砂が敷き詰められているのだが、すでに埋められている人たちの頭が点在している一方、大きなブルーシートで見た目め構わず表面を覆い加熱している部分もあったりして、
「もくもくと仕事をする職人におしゃれなどいらぬわ」
…そんなイメージである。
さて!
我々がござエリアに足を踏み入れるやいなや、砂の上を徘徊していた数人のおじさん達がわらわらと目の前に集まってきた。
「三人ね…」
と、おじさんの中の一人が言うと、先にたどり着いた二、三人のおじさんが何とも手際良く「五掘り」くらいで三人分の砂起こしを完了させていた。
早い!

おじさんと砂:「ザッザッ…ザッザッザッ」
我々:「ん?…んッ!お~!」

まあ、上記を同時に読んで頂くと、砂起こしがどんだけ早かったかがわかるかと思う。
そこで、いやに丈の短い水色のタンクトップを汗に濡らしたおじさんが、スコップを砂に突き刺しこう言った。
「ホラ、寝て」
なんともぶっきらぼうだが、愛着はもてそうな雰囲気である。我々は
「ハ、ハイ~」と、浴衣をおさえつつ個々に座りはじめた。
寝そべったその瞬間から砂をかけたそうな砂かけおじさん達は、川の字に並んで寝ようとしている我々を囲むように、スコップを遊ばせながらこちらの動向をずっと伺い続けている。
至近距離のため、お手洗い時とおなじく「きっちりおさえなきゃ!」と思い、浴衣をぐ!と両手で押さえながら座りに入った。
しかし鈴木、只今膝を痛めてるため、ひざの使い方をどっかで間違え
「ドン!」
と横にしりもちをついてしまった。
その姿勢たるやまるで「勘吉お宮」の「お宮」である。
ポロリチラリは無いものの、ギリギリのセーフ!
ホッ…と溜め息をもらし、しきり直して体勢をまっすぐに変えようと、今度は「ヨッ」と腰ジャンプをした鈴木だったが今度こそ…不覚。
着地した瞬間、浴衣のすそがナント脚の付け根の直前までのれんのように
「やってる?」
と開き、こともあろうに内股エリアが逆V字に丸見えになってしまったのだ。
「(アッヒャ!!!)」←声はでていない
慌ててバサッと裾を戻したものの、砂かけおじさんたちはきっと見ただろう。なにを?…わたしのももヲ!
知ってか知らずか良くあることなのか、はたまた全く興味がないのか枯れたのか(失礼)知らないが…一様に無言であったおじさん方。
おじさん相手とは言え、何も反応されないのも「ドッキリし損」で寂しいものである。


三人は、砂・七かけくらいできれいに埋められ、約25分ほど砂風呂でジワジワした。

熱が身体に染み入ってきて、ホットな繭になったかのような感覚に陥る。

きもちいい。
ほんとにきもちがいい。
個人的には岩盤浴の20倍!ゲルマニウム温浴の75倍は好きである。
砂風呂はわたしのなかで断然勝利をおさめた!

が、そこにあるのはやはり熱い砂。熱くてガマンできない箇所はでてくるもので~。
「熱くなった時はおじさんに訴えて下さい」と受付で言われていたのを思い出した我々は、
「ここが熱い」
「わたしはここが」
と次々に訴え始めた。
せつない話だが、これを境に我々は砂風呂で出会うはずもない「スパルタな仕打ち」を受けることになってしまった。
以下その詳細。

寸足らずタンクのおじさんからは
「手ぇだせつったんだ!腕だせとはいってねぇ」
「砂、かき出し過ぎだろ~」
と言われ、色白で恰幅のいいおじさんには通りすがりに
「手、でてんぞ…。勝手に動いたんか?!」
と過剰反応され驚いたものだ。どう聞いても叱咤である。
中でも尻や足先が熱い熱いと小刻みに訴えていた友人Uは、寸足らずのおじさんに目を付けられ、バトルを繰り広げていた
「熱いんですけど」
「知らん」
「ガマンできないんですけど」
「足、だせ」
(がばっ)
「…出しすぎだおめぇ!」

まあそんなバトルだった…悪いが笑えた。
おっさん達はきっとガマンが足りない若者達(実はみんな30歳)に、プチ業を煮やしたのだろう。
とはいえ、砂風呂でこげなきついスパルタ教育に遭うとはまったくもって不測の事態であったよ。

また今度、どこか他の砂風呂に入ることがあっても、何も恐いものはない。
おじさん達の厳しくも熱い「砂風呂危険回避方法」は、完璧に私たちの身によく付いた!
我々は勿論のこと、おっさん達もこのバトルを繰り広げながら、実は結構楽しんでいたと見ている。目は時々笑っていたからな。

25分が経ち、上半身を起こして「フゥ~」だの「んあ~」だの言っている私達に向かって
「しばらくそのまましていなさい」
と、それまで以外と無言だったおじさんが優しい言葉をかけてきた。
「身体を右に倒しながら起きな、浴衣めくれないように」
なんとこれは寸足らずおじさんの言葉どある。いきなりジェントルだ。
例のござエリアで砂をほうきで払ってもらう段になり、からだは毒素がぬけたように「ストン」として心地がよい。
「砂かけおじさんありがとう!!!」
と、この場を借りてお伝えしたい!(直接言いましたが)

しかし、このおじさん達、この仕事が生業なのかバイトなのか、はたまたリタイア組なのか…そこが目下気になるとこである。
それにしても、おじさんたちはみな一様にいい筋肉をお持ちだった。
寸足らずのでかタンクは、もしかしたらそんな自慢の肉体を披露したいおじさんの、言うなれば~晴れ着~だったのかもしれない。(単に熱いだけか?)
汗だくになりながら力使ってでかる接客業…
ある意味、リタイアしてもいい身体を保持したい体育会系の方にはコレ、なかなかにお勧めの仕事なのかもしれない!
そうおもったよ。
時給、低いかもだけど(笑)