1993年に開幕したサッカーのJリーグは、5月で30周年を迎えた。47都道府県で現在、Jクラブが存在しない「空白県」は6県。その一つの滋賀で今、待望のJ昇格に向けた動きが活発化している。
今季の日本フットボールリーグ(JFL)で好調の「レイラック滋賀FC」が最も近い位置にあり、新スタジアム完成などで環境も整いつつあるが、立ちはだかる課題はまだ多い。
↑写真:中日新聞より
★Jリーグの空白県 今季時点で、Jリーグには41都道府県の60クラブが参加している。Jクラブが存在しないのは「
滋賀、三重、福井、和歌山、高知、島根」の6県。
そのうち、Jリーグの下にあり、アマチュア最高峰とされるJFLには「滋賀、三重、高知3県」の4クラブが参戦している。
現在のJFLで、昨季にJ3ライセンスを承認された「三重、高知」のクラブは空白県の中でも一歩リードしている。
■まずJ3目指す 「僕たちが目指しているJリーグの舞台に昇格するために、このゲームでの経験は必ず生きてくると思うのでトレーニングからさらに積み上げていきたい。必ずJリーグに昇格します」
新潟市で6月7日にあった天皇杯全日本サッカー選手権大会の2回戦。レイラックはJ1のアルビレックス新潟を相手に0−1で惜敗したが、GK伊東倖希選手は悔しさの中に「収穫」も口にした。
レイラックは今季、2026年のJリーグ昇格を掲げてチーム名を「MIOびわこ滋賀」から改め、経営体制を一新した。Jリーグ経験のある有力選手が大量加入して戦力も上がり、全15チームのJFLで首位(10日時点)を走る。
クラブはまずJ3入りを目指す。それにはJFLで優勝するか、2位でJ3の下位チームとの入れ替え戦に勝利することが一つの条件。ただ、成績だけで上がれるわけではない。一試合の平均入場者数、資金面の安定性、座席数や照明などのスタジアム規定を満たしたと認められる「J3ライセンス」が必須になる。
■滋賀県営施設で後押し 滋賀県サッカー界を30年近く見てきた滋賀県サッカー協会の前田康一会長は「滋賀県でJリーグのクラブができることは、私の長年の夢でもある。今が一番それに近い」と語る一方、「勝負に勝つだけでなく、環境を整えて資格を持たないと上がれない」と現実を見る。
滋賀県内にはJリーグを目指すクラブが複数あるが、スタジアムの規定が共通の大きな壁だった。そこへ今年4月、滋賀県営の陸上競技場として
彦根市に「平和堂HATOスタジアム」がオープンし、これが大きな後押しとなった。J3のスタジアム規定にある固定席5000席以上を満たす7000席があり、滋賀県内で最もJリーグのスタジアムに適している。
5月にはレイラックが、ホームスタジアム化を視野に彦根市とホームタウン協定を結んだ。クラブの河原吉貴社長は「Jリーグを目指す上で大きな一歩」と期待し、J3ライセンスの申請準備を進める。毎年秋ごろ、翌シーズン分の承認の可否がJリーグから公示される。
■増える運営費用 スタジアムには照明などの細かい規定もあり、一度で承認されるとは限らない。さらに大きな課題となるのは資金面だ。JFLで年間1億〜2億円とされる運営資金は、J3だと3億〜5億円に跳ね上がる。プロの選手には相応の年俸もかかる。
資金獲得は、クラブ自身の努力が求められる。試合の入場料やグッズの販売収入だけで賄うのは難しく、大きな収入源はスポンサーの存在になる。だが、
滋賀県内のクラブはいずれも大口スポンサーの獲得に苦戦しているという。
前田会長は「今はレイラックが(Jリーグに)一番近いが、滋賀県内のどのチームも平等に、上がれるチャンスに備えて環境を整えたい」とした上で、期待を寄せる。「施設はほぼクリアに近いので、チームには財政を整えて結果を出してもらいたい。簡単ではないが、かみ合えば実現するところまで近づいている」
<中日新聞より>