東近江市柴原南町の武村勘一さん(元新党さきがけの武村正義の実兄)がこのほど、地元の歴史をまとめた著書「柴原南町 2500年の歴史」(サンライズ出版)を刊行した。
武村さんは若い頃から郷土史に関心を寄せ、40歳を過ぎてからは渡来文化のルーツを求めて朝鮮半島や中国大陸を旅した。
執筆のきっかけは、1999年(平成11年)、ほ場整備(土地改良事業)に伴う発掘で地元から出土した縄文晩期の2つの甕(かめ)。食糧の備蓄に使われたとみられ、「祖先が2500年前からここで定住を営んだ証し」と、心に焼き付けた。
その後、資料を揃えたものの、持病を患ってまとめる機会を得ず、回復した2021年正月に執筆を決意。昨年末にまとめ上げ、卒寿を迎える4月に刊行した。
本書に記された柴原南町は、東近江市中心部から南に4km、60数戸の集落。終戦までは陸軍八日市飛行場があり、現在は布引丘陵に抱かれた田園地帯に、名神高速道路が通り、布引工業団地が操業する。
内容は、
▽第1章「集落の起源」: ほ場整備に伴って出土した縄文晩期の甕や、布引丘陵の須恵器窯跡などの渡来文化の痕跡を紹介。、
▽第2章「中世から近世の様相」: 商魂たくましい保内商人や、佐々木六角の家臣柴原氏、寺社の文化財、農村歌舞伎など。
▽第3章「明治以降の柴原南町」: 陸軍飛行場の拡張に伴う用地の強制買収や掩体壕(えんたいごう)問題、地域の総力で挑んだ飛行場跡地の戦後復興、名神高速道路建設の経緯、宮溜のオオギ漁など。
本書の締めくくりは、肉親ならではの温かな眼差しで、元八日市市長、滋賀県知事や大蔵相を務めた実弟の武村正義氏に少し触れる。
武村さんは、「戦後苦労したが、地域の皆さんの支えでここまで来ることができた。地域への感謝と、出身者には郷土への誇りを持って欲しいとの思いを執筆した」と話している。
「柴原南町 2500年の歴史」は500冊発行し、東近江市柴原南町と隣接2集落の全世帯に無料で配布したほか、出身者にも進呈した。
閲覧は、滋賀県内の図書館で可能。購入希望者は、武村さん(TEL0748―22―0952、携帯電話090―2014―2666)。1冊1000円。
<滋賀報知新聞より>