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インテリアコーディネーターのブログ。
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9月6日 Mrs-iclub 2 「霞中庵見学」

2005-09-06 | イベントレポート
「霞中庵」京都市右京区嵯峨天竜寺若宮町

「東の大観(たいかん)、西の栖鳳(せいほう)」と並び評された日本画の画家、竹内栖鳳の好みによって作庭されたといわれる嵐山を借景とした庭園に、明治45年から5年もの歳月を費やした数奇屋造りの別邸や書院棟、茅葺の画室の「霞中庵」があります。

絵よりも傑作と評された建物は、京都の数奇屋十選にも選ばれ、国の重要文化財に指定予定。

建築家ではなく、画家の栖鳳が考えて建てられた建物なので、建築の常識にとらわれない自由な発想で、それがかえって新鮮だと、建築家が時折見学に訪れるそうです。普段は一般非公開の建造物ですが、WOOD ONEさんの企画で見学することができました。
写真撮影は、不可ということで残念ながらそのすばらしい建造物のご紹介は私のつたない文章に頼ることになってしまいます。

私が目にした「霞中庵」- それは、実に美しい建物でした。

明治45年というと西暦に直すと1912年のことですから今から93年も前に手掛けられたということになります。その間に私たちはあらゆる面で進化を遂げたハズですが、失ったものの大きさを痛感させられたような気がします。
深い軒、なんとも言えない色味の壁、頭を打ちそうなくらい低い天井の茶室、光と陰影のコントラストの美しさ・・・。
まるで生き物のような、生命力を感じました。
建物から「生命」を感じる感覚。とても表現が難しいのですが、普段「建物」からは、とうてい感じることの出来ない感覚を味わったような気がします。
果たして、現在(いま)の建物から生命力を感じることなんてできるでしょうか。
そのようなことは、私自身、今日の今日まで考えたこともありませんでした。
「建築」というものは、ある種、無機質で、ハードなもの。それに対して、建築家ではない私が、「生活」という内面的なソフトな感覚をインテリアや色を利用してどのように表現していくのか。というようなところが課題でした。

それなりに時間をかけ、悩み、完成したものに、何か物足りなさを感じるのも、昔から受け継がれた建造物に比べどこか見劣りするのも、もしかしたらこの「生命力」が圧倒的に決如しているせいではないだろうか。と、甚だ現実離れしているともとられかねない感情を抱きました。

さて、そんな「霞中庵」の特徴的なところを紹介します。
①まず、床の間は、床柱を無くすことでより開放的になり、気軽にお茶を楽しめる空間になっています。「栖鳳のもてなしのこころと気配りによるものだ」と、霞中庵を管理されている方はおっしゃってました。②次に目を引くのが靴脱ぎ台です。保津川くだりの船頭さんは、必ず同じ場所で竿をつくそうで、その場所には穴があいています。それをおもしろいとおもった栖鳳は、霞中庵までその石を運ばせたそうです。「当時にどのようにして、ここまで、これほど大きな石を運んだのでしょうか」という管理人さんの言葉に、全くその通りだと感じました。③私が特に素晴らしいと感じたのがもみじの細工を施した螺鈿(らでん)です。外に植えられたもみじの木に光が射すと、螺鈿の中のもみじは青々と染まります。また、夕暮れ時には沈む太陽の光で赤く染まるそうです。時間や季節による光の移りこみ、それが織り成す風景までをも計算してつくられた繊細な感覚にとても感動しました。

霞中庵-それは、文頭でも紹介した通り、5年という長い年月を費やして完成した建物です。今日の社会ではなかなかそのような時間を費やすことも、コストを度外視した発注も、あり得ないことです。現代の豊かさは、いかに表面的なもので、内面的な部分に欠けているのか。最近よく耳にする「LOHAS(ロハス)※」という考え方。これは、私たちが成長とともに失ってきた、内面的な豊かさを取り戻そうとした動きなのかもしれません。

※LOHAS(=Lifestyles of health and Sustainability )とは、「人と地球にとって、健康で持続可能なライフスタイルスタイル」の総称。社会との共存が難しい「スローライフ」を、より現実的に楽しんでいこうとする考え方。