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インテリアコーディネーターのブログ。
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6月5日 GHハイブリッド制震工法

2006-06-05 | インテリア/建築
昨年の後半あたりから、突然明らかになり始めた耐震偽装問題。
あれからもう半年以上経過し、なんとなく風化しつつある様にも感じますが、みなさんはどうでしょうか。

世間にはたくさんの職業があります。
それらはどれも専門的であり、全ての内容を理解している。という人は居ないと思います。

例えば、医療。
病気になった時、何か身体に異変を感じた時、そんな時はかかった医師の言うことを信じて従うより他ありませんよね。
治療の結果、命を失うことがあったとしても、それが医療ミスなのか、それとも手の施しようがないその人の寿命だったのか。
それらを明らかにすることは困難です。

例えば食肉業界。
それが国産のものなのか、オーストラリア産のものなのか、アメリカ産のものなのか・・・。
切り身にしてラベルを貼られてしまえば、私たちに見分けることはできません。

最近になって、チラホラと明らかにされる不祥事。

昔は、みんなが正直だったのか。それとも世間に公表する術を持っていなかったのか。
どちらにしても、これまで私たちは、目の前にあることを、見えるものだけを信じ過ぎていたのかも知れません。

そして、私の所属する建設業界。
取りようによっては、無差別殺人にもなりかねない耐震偽装によって、多くの人たちが被害に遭いました。

被害者にならない為にも、簡単な知識は身に付けておいた方がよさそうです。

耐震偽装問題に関するハチセ社長の見解はこちら↓
http://www.hachise.jp/tiz/hitorigoto/45/45.html

さて、地震に耐える方法として、「耐震」「制震」「免震」の3つの工法があります。昨今、テレビなどを通じて耳にされる機会があることばではないでしょうか。

耐震
耐震とは、揺れに耐えることをいいます。
建物を硬くし、強度を強くします。耐震は強度の確認がしやすくメンテナンスの少ない方法と言えます。制震や免震においてもベースは耐震性を有していることが第一と言えます。

制震
制震とは、揺れを吸収することをいいます。
耐力壁線に揺れを吸収する装置を取り付ける事により、建物の振動を吸収する方法です。

免震
免震とは、揺れから切り離すことをいいます。
建物の下部にゴムやローラーなどの装置を取り付け地震の振動を建物から切り離します。その為、建物自体の振動が緩和されることになります。
しかし、風圧などの影響もあり、ある程度の規模の地震からその装置が動くように設計されていることが多いため、震度3程度の地震では免震効果は無いことが一般的です。
また、既存建物に取り付けるのは現在のところ難しいでしょう。
(参考サイト:既存建物耐震研究会)

それらのうち、いま、ハチセが注目しているのが「制震」工法です。
私たちが、京都の町家の改修を積極的に行っていることは、このブログをご覧になっている方はご存知でしょう。

その中で、一番の課題が建物の強度。つまり、耐震性をどう補っていくのか。ということでした。
何をすれば絶対安全なのか。いつか訪れる大地震にも耐えることができる住宅にすることができるのか。その正解は、まだ見つけることができていないのが現実です。

これは、単純に私たちの狭い範囲内ではなく、市町村、県、国のレベルに拡げたところで正解はありません。

そこで、現在のところこの方法が信頼できるのではないだろうか。というものを採用することになりました。
それが、GHハイブリッド制震工法です。

GHハイブリッド制震工法は、財団法人 日本防災協会が評価した工法です。
日本防災協会は、耐震工法の客観的な評価基準として2004年11月に住宅等防災技術評価制度を発足しました。これは新築住宅に置き換えると「住宅性能表示」のようなもので、耐震工法の信頼性を測る「ものさし」の役割をしてくれます。
つまり、日本防災協会が評価した信頼性のある工法である。と言えます。

それでは、GHハイブリッドの具体的な仕様についてご説明しましょう。
GHハイブリッド制震工法は、建物に装着されたオイルダンパの内部部品の働きにより地震時の揺れ(振動エネルギー)を柔らかく吸収し、熱エネルギーに変換する制震工法です。


制震装置「減震くん」


特に地震の揺れは一度限りのものではなく、余震を含めて繰り返し揺れますが、オイルダンパは繰り返し動作時の性能再現性に優れており、連続して発生するような大地震に対しても有効に作用します。「GHハイブリッド制震工法」は建物に加えられた地震力をオイルダンパにより吸収することで、倒壊や構造部材の損傷を防ぐ働きをします。

4畳半程度の在来軸組み工法により建てられた1階建物に、阪神・淡路大震災の揺れを再現した振動実験が行われました。
装着時と未装着時では、その違いが明らかです。

未装着時

地震の揺れにより最大層間変位が増幅したため、柱と土台の結合部が割裂しました。

装着時

地震の揺れを「減震くん」が吸収したため最大層間変位が抑えられました。その結果、割裂等の損傷は受けませんでした。

この実験によって、最大約70%の制震効果が確認できました。

ところで「層間変位」の意味、わかりますか?
「層間変位」=「層間変形角」は、2階建ての住宅を例にして説明すると、1階の床面と2階の床面の相対変位量のことを言います。つまり1フロアー単位でどれだけ斜めになっているか。1階と2階がどれだけズレているのか。という数値です。

阪神大震災の教訓から、建物は、ひずみが大きくなると揺れが大きくなり、その揺れによって弱い箇所に集中的に建物の荷重がかかることがわかりました。

そこで、この揺れを一定限度内におさまるような設計をしようとするのが「層間変形角の制限」という考え方です。

GHハイブリッドもこの考え方から、その角度を1/30以内に抑える仕組みになっています。

このGHハイブリッド制震装置は、6月末頃一般公開予定の京都市北区紫野南花ノ坊町 新築モデルハウスにて、ご覧頂けます。

また、ハチセリ・ストック住宅京町家において、随時制震工法を利用した改修を発表する予定です。オープンハウスの案内は、随時このブログの中でも報告していきますので、興味があれば、是非、お立ち寄りください。