お疲れ様です。
天気よくないねー。
台風。来るならギリギリ出社不可能な状態を作り出すところまで仕事をしてほしいところです。
うさぎ小屋⑧
かくして僕はホームレスになった。大学には相変わらず通っている。貯金も比較的潤沢にある。しかし、家はない。僕は昼になると大学に赴き、夜になると人気のない路地裏に身を寄せた。牛丼屋とスーパーの惣菜で日々の空腹を埋めた。同じものばかりを食べ続けていると、少しずつ食は作業になり、味は感じられなくなっていった。
3日に一度、ネットカフェでシャワーを浴びることにした。僕はリュックを購入し、歯ブラシ・石鹸と着替え用の服を1着入れた。最初の1週間、僕の心はこの新しい試みに興奮していた。
1か月が計画したあたりから、少しずつホームレス生活に体が順応し始めた。活動はルール化され、円滑に寝床にありつけるようになった。僕は徐々に当たり前になっていく宿無し生活に心地好さを覚えた。目新しさへの好奇心は収まり、効率の良さや居心地の良さを見つけることへの向上心が生まれてきた。
2か月経った頃、不意に自分のしていることが無意味に感じられるようになった。衝動的に下宿は手放したが、今の僕はほとんど不自由のない生活を送っている。結局のところ、小学生の家出と何ら変わりがないという事実に行き当たったのだ。小奇麗な格好をした僕はホームレスというより旅人のように見えたかもしれない。髭は相当伸びているし、服もほとんど処分してしまったので少しずつ小汚い印象には変わってきているが、やはり僕はまだ学生であるという身分にぶら下がってふらふらしているだけに過ぎなかった。
そんな僕のファッションホームレス生活に暗雲が立ち込めたのは、じりじりと熱い8月のことだった。僕は木曜日の午前中の期末試験を全て終え、近くの公園に日陰を求めた。アスファルトからの照り返しが体にこたえる。柔らかい寝床に縁遠くなっていたこともあり、身体をベンチに横たえると少しずつ頭がとろんとして思考がままならなくなっていった。そういえば、今泉さんの一件があって以来エチル倶楽部にも顔を出していなかった。明日あたり部室に行ってみよう。そして、田村さんに自分が身を置いている現状の話をしてみよう。同じ文学部生として気の利いたアドバイスをくれるだろうか。それとも、面白がって話を聞いてくれるだろうか。いずれにしても、自分が随分子どもじみているという羞恥心は僕の自尊心を揺さぶり始めており、僕はどうにかコミュニケーションを通してこの羞恥心に名前を付け、発散させてしまいたかった。
ベンチに照り付ける直射日光の眩しさで、僕は目を覚ました。随分長い間眠り込んでしまったようで、昼休みのために公園に集っていた会社員や学生はいなくなっていた。時刻が定かでなかったのでスマホを取り出そうとャPットに手を突っ込んだ時、所持品が全てなくなっていることに気付いた。ぼんやりとしていた視界が急に冴えわたった。
「やべ、盗まれた」僕の中で焦燥感がどんどん成長していった。
今の僕には帰る家がない。その上、人と連絡を取る手段に加え、現金、キャッシュカードをはじめとする財産を全て失ってしまったのだ。現住所と呼べる場所がないから郵送物も実家に届けざるを得ない。その実家も一昼夜で帰れるような場所ではない。僕は物理的な住処だけでなく、住生活に必要なツールを奪われ、着の身着のままになってしまったのである。
天気よくないねー。
台風。来るならギリギリ出社不可能な状態を作り出すところまで仕事をしてほしいところです。
うさぎ小屋⑧
かくして僕はホームレスになった。大学には相変わらず通っている。貯金も比較的潤沢にある。しかし、家はない。僕は昼になると大学に赴き、夜になると人気のない路地裏に身を寄せた。牛丼屋とスーパーの惣菜で日々の空腹を埋めた。同じものばかりを食べ続けていると、少しずつ食は作業になり、味は感じられなくなっていった。
3日に一度、ネットカフェでシャワーを浴びることにした。僕はリュックを購入し、歯ブラシ・石鹸と着替え用の服を1着入れた。最初の1週間、僕の心はこの新しい試みに興奮していた。
1か月が計画したあたりから、少しずつホームレス生活に体が順応し始めた。活動はルール化され、円滑に寝床にありつけるようになった。僕は徐々に当たり前になっていく宿無し生活に心地好さを覚えた。目新しさへの好奇心は収まり、効率の良さや居心地の良さを見つけることへの向上心が生まれてきた。
2か月経った頃、不意に自分のしていることが無意味に感じられるようになった。衝動的に下宿は手放したが、今の僕はほとんど不自由のない生活を送っている。結局のところ、小学生の家出と何ら変わりがないという事実に行き当たったのだ。小奇麗な格好をした僕はホームレスというより旅人のように見えたかもしれない。髭は相当伸びているし、服もほとんど処分してしまったので少しずつ小汚い印象には変わってきているが、やはり僕はまだ学生であるという身分にぶら下がってふらふらしているだけに過ぎなかった。
そんな僕のファッションホームレス生活に暗雲が立ち込めたのは、じりじりと熱い8月のことだった。僕は木曜日の午前中の期末試験を全て終え、近くの公園に日陰を求めた。アスファルトからの照り返しが体にこたえる。柔らかい寝床に縁遠くなっていたこともあり、身体をベンチに横たえると少しずつ頭がとろんとして思考がままならなくなっていった。そういえば、今泉さんの一件があって以来エチル倶楽部にも顔を出していなかった。明日あたり部室に行ってみよう。そして、田村さんに自分が身を置いている現状の話をしてみよう。同じ文学部生として気の利いたアドバイスをくれるだろうか。それとも、面白がって話を聞いてくれるだろうか。いずれにしても、自分が随分子どもじみているという羞恥心は僕の自尊心を揺さぶり始めており、僕はどうにかコミュニケーションを通してこの羞恥心に名前を付け、発散させてしまいたかった。
ベンチに照り付ける直射日光の眩しさで、僕は目を覚ました。随分長い間眠り込んでしまったようで、昼休みのために公園に集っていた会社員や学生はいなくなっていた。時刻が定かでなかったのでスマホを取り出そうとャPットに手を突っ込んだ時、所持品が全てなくなっていることに気付いた。ぼんやりとしていた視界が急に冴えわたった。
「やべ、盗まれた」僕の中で焦燥感がどんどん成長していった。
今の僕には帰る家がない。その上、人と連絡を取る手段に加え、現金、キャッシュカードをはじめとする財産を全て失ってしまったのだ。現住所と呼べる場所がないから郵送物も実家に届けざるを得ない。その実家も一昼夜で帰れるような場所ではない。僕は物理的な住処だけでなく、住生活に必要なツールを奪われ、着の身着のままになってしまったのである。