然れば
君想わぬ 悪しき夢なら
暁の数ほど 滅するのみぞと
希(こいねが)い 胸焦がすとも
詮ずる所 寝物語か
想い映す 術さえ儘ならぬ
忌むべき性の この身ゆえ
君問われ 妥協也との詞の陰の
愚 との響きに受けし吾なら
手折れた槿花(朝顔)の 陰に泣き濡るる
今宵 虫の音の触りに 心賜うものならずば
深紅の蓮華 哀れなりけり
闇にしか咲くこと 叶わぬ華でも
その芳しい香り 欲する者等を魅了し已まぬだろう
間昼間の中 光輝くことあらずとも
闇は 一層に
その白き柔肌 輝くばかりに映し出し
惑わすこと この上ない筈だから
ならば 私も
自ずと望んだ
その沁みるような 闇の世界で
妖しくも 密やかに
華ひらこうというもの
あの 月下美人のように