鴉の目は唯だ腐ちたるを看る
狗の心は穢らわしき香に耽る
人皆蘇合を美よす
愛縛は蜣蜋に似たり
仁恤は麒麟に異なり
迷方は犬羊に似たり
能く言うこと鸚鵡の若し
説のごとくすれども賢良を避る
犲狼は麋鹿を逐い
狻子は麖麞を嚼う
睚眦して寒暑に能たり
げき談して痏瘡を受けしむ
営営として白黒を染め
讃毀して灾殃を織る
肚の裏には蜂蠆満てり
身上に虎豹荘なる
能く金と石とを銷す
誰か顧みて剛強を誡めん
心貧しき者は万有を腐ちたる物とみてとらわれ
汚らわしき遊びに耽る
人みな珍しき物に心惹かれるが
その姿は貪欲魔のごとし
溺愛は慈悲と異なり人を堕しめ
道を知らざれば迷える犬のごとく
多くを語り 偽りを語り 綺をてらい
偽りの知識をひけらかし 言葉少なき真実の人を避ける
力ある者は弱き者を追い
獅子が鹿を食らうごとく
つねに怒りをもって人を恨み
激しく談じて傷つけあう
黒を白と言いはり人を欺き
心なく人を褒め かたくなに誹り 災いをなし
心に悪意が充ちて
体に贅を纏う
深き猜疑の心が世から善と心ある者を滅ぼし
理のない主張のみがまかり通る
( 空海 )
