朝から美術部の生徒3人を連れて、とある公立高校の美術科専攻展へ。
前任校での卒業生が「自分の作品も出すので、ぜひみにきて!」とメールをくれたので、
一人でふらふら行く予定だったのだけど、
生徒に話すと興味を持ったので一緒に行くことに。
卒業生は前任校の時の美術部の部長で、今回の作品は映像とデザインだった。
映像作品が印象的だった。
戦争の中での被害者は、殺される人だけでなく殺すという強烈な経験をしてしまった兵士も、である。
という社会的メッセージの強い内容で、他の生徒さんたちのふわふわした感じと違っていた。彼女らしい。
高校2年で、頼もしい。一応、教えていた身として、彼女の作品を誇りに思った。
同時に、いろんな表現法を試せる環境にこんな若い時からいられるなんて幸せだなあとうらやましく思う。
うちの美術部員たちにも、ぜひ目指してもらいたい高校だ。
で、中学生たちも感動しつつ、このまま地元駅まで送り届けようと思っていたら、
「先生ー、おなか減ったよ~。」と言い出したので、作品展を見た駅の中のサイゼリアへ。
お互い感想なんかをいいながらのんびりご飯を食べていると、13時を過ぎてしまった。
実は今日、もうひとつ行きたいところがあった。もちろん一人で。
埼玉の丸木美術館。
Chim↑Pom展「LEVEL 7 feat. 広島!!!!」。
Chim↑Pomといえば、3.11のときの、渋谷の「明日の神話」に原発の絵を別に描いてつけ加えたグループだよね・・・。
この作品展のことは、今日、ツイッターで流れてきた情報で知った。でも今日が最終日!!
以下が概要(美術館ホームページより抜粋):
すべては2008年秋、Chim↑Pomが作品制作のため広島の原爆ドーム上空に飛行機雲で「ピカッ」と書いたことからはじまりました。この行為は、多くのメディアで報じられるとともに、ネット上ではバッシングが起こり、被爆者団体代表を前にChim↑Pomが謝罪会見を行なうまでの社会的騒動となりました。予定されていた広島市現代美術館での個展も「自粛」というかたちで中止となり、Chim↑Pomは、作品として発表する機会を奪われたことで、その意図を伝えるべき手段をいったんは失いました。(省略)
本展は、Chim↑Pomがヒロシマからフクシマ、核や放射能と日本の関係をテーマに制作してきた活動を一堂に見せる初の機会であり、彼らの活動の集大成となります。2008年10月の「ピカッ」騒動から2011年5月の「明日の神話」事件など社会的騒動となった作品を、点ではなく線として鑑賞いただくことで、Chim↑Pomが真に伝えたかったこと、彼らのエネルギーがきっとみなさまに伝わると考えます。
うわ・・見たいっ。しかも今日は、本人たちがきて、トークがあるらしい。
生徒を地元駅まで送り届けて14時。美術館まで約2時間ちょっと。閉館16:30・・・。
池袋まで行って、東武東上線のホームで電車を待つ。しかし着いても閉館ぎりぎりだし・・・。
残念ながら諦めることにした。
落ち込みながら新宿まで戻り、せっかくだからと紀伊国屋書店へ。
最初は美術関係書籍をみていた。雪の結晶ばかりの写真集がいいなと思うけど、いまいち気持ちがのらない。
自然と足は社会問題書籍の棚へ。
原発関連の本はたくさん出版されている。
その中で、「今、もっとも信頼される研究者」として、
京大原子炉実験所助教授の小出裕章さんの本が数冊置かれていた。
中身を少し読み、この人の本を購入する。わかりやすい文章だったし、
子どもむけにも放射能についてのわかりやすい本を書いている人だった。

「放射能汚染の現実を超えて」
この本は、チェルノブイリの事件の4年後、1992年に出版されたものだけど、今、緊急復刊されている。
帰りの電車の中で読む。
この人は、視野が広い。
日本は食料の7割を輸入に頼っているから、本が出版された当時、汚染された食料の輸入を規制しなければ
と、市民団体が政府と戦っていたとき、著者は、
自分たちが輸入しなかった食料は、発展途上国やそれよりもっと貧しい「第三世界」の人々がなんの情報も与えられず
食べることになる。でもそれはおかしい。
原子力の恩恵を受けてきた先進国は、その責任もとるべき。
食料を受け入れるべき。
もちろん、汚染が人間にもたらす影響を科学的に研究しているから、子どもにはできるだけ汚染の少ないものを与えるべきだけど、
核実験で地球上の大気、水、土壌は既に汚れており、一回なされた汚染は、人間には消し去ることが不可能だから、
問題は、汚染された食べ物を誰が引き受けるのかということで、先進国がその責任を負うべきだ。
としているのだ。人間の差別の上に、原子力とそれを擁護するシステムは成立していると。
人間の差別がなくなれば、必然的に原子力はこの世からいらなくなるのだ、と。
そして、宮澤賢治の言葉も引用していた。
世界がぜんたい幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ない。(中略)
個性の優れる方面に於て、各自やむなき表現をなせ。 (『農民芸術概論概要』より)
科学的なデータばかりが出てくる本だと思って購入したら、
それは、自らの生き方を問うもので、感動してしまった。
自分なんて何にもできないと思っていたけど、
卒業生の作品や、小出氏の本を読んで、
自ら考えて何か発することが、
世界を少しでも良くする力になるかもしれないと思い、
勇気が出た。