しずくな日記

書きたいなあと思ったときにぽつぽつと、しずくのように書いてます。

時間と空間を共に

2014-05-24 07:48:03 | 日記
木曜日にあった体育大会の天候は散々。
午前中は日が出ていたものの、午後から真っ暗な雲が迫ってきた。
遠くに、そしてやがて近くに稲妻が走り出して午前中のプログラムでいったん中止。
黒い雲が迫り、空を覆う様はまるで、
CGで作った学園ものの映画のやなことが起こる雰囲気のワンシーンのようだった・・・。
12時から1時間ほど教室内での待機で、1時からの天候で再開するかどうか決めることになった。
なんとか1時には雨はやみ、再開したものの、また雨。
3年生の学年種目と学級対抗リレーは、体育大会の花形だけど、
この頃に雨脚が強くなってきた。で、終わったあと晴れた・・・・。

天候は散々だったけれど、
内容としては、私としては今までで一番面白い体育大会だった。



クラスの団体競技である大縄跳びは、クラスを20名の2チームに分けて、
3分間どれだけ跳べるかを全クラスで競う。
午前1回、午後1回ずつ競技が行われる。
これに向けて、5月初旬からクラス毎、お昼休みなどに自主練が行われていた。

目的はもちろん跳べることではなくて、
クラスのメンバーとよく話し合い、協力して行事を乗り越えていくという経験そのもの。
だから正直に言えば、結果的に跳べなくても別にいいんだけども。


うちのクラスも生徒たちの企画で週3回くらいは練習をやっていたけれども、
ほんとに悲しいほど跳べなかった。
うちのクラスだけでなく、2年生全体がなぜかあまり跳べないのだった。

今年の1年生はよく頑張るし、
3年は縄を回すスピードまで研究していて、ものすごい速さで20人が跳ぶ。
2年生だけがなんとなく跳べなくて、
うちのクラスのAチームなんて予行の2分間で8回しか跳べなかった。
跳べる方のBチームでも2分間で38回。

だからといって、こちらから強制的に練習しなさい!とか言えるものでもなく、
しかも休み時間を削ってみんなで練習してるし・・。
どうしてなんだろうとずっとみていたら、あることに気がついた。

かけ声が小さい。
縄を回すタイミングはかけ声が大きいほどとりやすい。
男子から全く声が出ていないことに気がついた。
なので男子側の縄を回している生徒に、
最初の縄を回すタイミングがうまく伝わらず、少しずれてしまうのだった。
そうすると跳びにくくなる。

それを生徒に一応言ってみると、
女子は今まで以上に声が出るようになったのだけども、
男子は出ていてもやはりかなり小さかった。
こういうのでだいたい、
「男子、声が小さい!」と女子VS男子の闘いが始まるのが恒例行事なので、
うちもやっていたけど、中学生男子なんてマイペースだ。
女子はうまく行事と自分の達成感をリンクさせてやる気を出せるけど、
男子はそうではない。

なので、本番もし跳べなくても仕方がない、と半ば諦めていた。


けれども。


大縄跳び本番直前、ある男子が、「声出すぞ!」と気合いを入れた。
「おし!行くぜ!」と男子達がおそらくはじめて本気になった。

そして、なんと3分間で130回を超えてきたのだった。
半月練習してきて、一番良い記録を本番で出した。
練習中には、1年生に負けていたのだけど本番で大きく1年を引き離した。

「俺が一位になって、クラスの得点増やすから!」と公言したSくんは、
個人種目1500mで、本当に一位になった。
練習中は終始かったるそうにしていたKくんは、学級対抗リレーで前を走っている子を抜けなくて、
「俺のせいで2位になった・・・」(←全然違う)と終了後に号泣した。

結果は、総合2位で準優勝。
1位となんと1点差だった。
ここまでやれるとは、(失礼ながら)担任は思ってなかったんだよ!
100点満点なら、150点だ。


「本気になった男子って、なんかかっこいいよね。」

うちのクラスの女子が言っていた。本人達にも聴かせてやりたいよ。

最後に撮ったクラス写真の笑顔がとても良かった。
今回の体育大会は、生徒たちの真の姿を見られる良い機会だった。


そして次は6月最初に宿泊行事を控えて、
キャンプファイヤーのスタンツ練習が始まっている。
こちらは男子も最初からなぜかものすごいやる気だ・・・。
アナと雪の女王のパロディーで
「ノブと炎の女王」という5分間のショートストーリーをやる。
主役は「ノブ」と呼ばれている、クラスの盛り上げ役でもある男子。
サッカー部員で背が高くごついのだけど、女装に立候補してきた。
学級委員も女装するらしい。なんでかやる気全開だ。

むちゃくちゃなストーリーで、
突然踊りだしたりするインド映画のような脚本を生徒が作ってきて(・・天才だと思った)、
休み時間に全員で踊るダンスの練習をしている。
かなり楽しみだ。


学年職員としては、宿泊行事、特に今回のような大自然の中での行事は様々な危険を伴うので、
実は心配なことがいろいろある。
妊娠している学年職員の先生が2人いて、2人とも行かないことが決定しており、
職員の数も例年に比べて少ない。
だから、いつも教室にいるときのようにぼや~と弛緩(?)している状態ではなくて、
生徒たちには本当に五感をフルに働かせて危険を察知しながら3日間を過ごして欲しいと思う。

一つ一つの行事を乗り越えていく毎に、生徒たちは少しずつ大人になっていく。
時間と空間を生徒たちと共有して、その姿を間近で見て、
『人間っていいものだなあ』と思えるところが、
この職業で一番幸せなところでもある。

















スプーンを作るだけじゃなく

2014-05-06 12:01:45 | 日記
微熱があったけど、せっかく予約したWS。行くぞ!


というわけでゴールデンウイーク3日目、こどもの日、
今回は、以前も革細工WSで2回ほどお世話になった世田谷・等々力の巣巣さんで、
『miyazono spoon WS』に参加した。
スプーン作家さんである宮薗さんの指導で、木のスプーンを制作する。

昨年度より1年生の授業で木彫スプーンの制作を入れ、いろいろ調べてやってみたのだけど、
まだまだ改良の余地が多く、何か制作や指導のコツが見つかればと思ってのこと。
授業では、直方体のホウ材からスプーンの形を彫りだすので、それなりに時間もかかるのだけど、
このWSではヒノキで、あるところまで形が出来上がっているものを使う。


知らなかったのだけど、今、伐採されたスギやヒノキの木材が余っているらしい。
今回のWSでもらったパンフレット『東京の木+つくるきっと もののこと』によると、

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日本の戦後の復興のため、木がたくさん必要になった時期、
広葉樹からなる天然林を伐採した跡地や
原野に、スギやヒノキなどの建築用材として需要が高まっていた針葉樹をたくさん植えた。
ちょうどその頃、木材や薪が中心であった家庭燃料が、
電気・ガス・石油に大きく切り替わっていき、
都市に薪や炭を供給する役割を持っていた里山の雑木林の価値が薄れていき、
里山でもまた広葉樹を伐採し、針葉樹に置き換えられていった。
スギやヒノキが育つのが早いといっても、
建材として使用できるまでに5~60年という長い時間が必要なのだが、
昭和39年に木材輸入が全面的に自由化となって、
国産材に比べて安く、かつ大量に安定供給できる外国産の材の需要が高まった。
輸入量は年々増大。
昭和30年には、9割以上あった木材の自給率は、
現在では約8割を海外からの輸入に頼る状態に。
日本の林業は衰退し、人の手が入らなくなった山は、今、悲鳴をあげている。

東京都では、平成18年度から多摩のスギ材を伐採し、
花粉の少ない品種のスギ等に植え替えを実施、
森林整備と花粉症対策に取り組んでいる。
現在、伐採された木材の利用を呼びかけているが、大量に余ってしまっている現状がある。

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とのこと。

というわけで、このWSは、ただ単に木でスプーンを作って終わり、ではなく、
森を育て、木を生かして生活するという、
失われた循環について考えようという企画でもあったのだった。

*詳細に興味ある方は、『宮薗スプーン×KINO』と入れて検索してみてください。



宮薗スプーンの名前で活動されている宮薗なつみさん、
笑顔がとてもキラキラしている素敵な女性。
一緒にいるだけで元気になれそうな人だ。

1時間ほど彫ったところ。すくう部分の曲線が結構大変・・・。


それからまた彫る。ひたすら彫る。無言。左手が痛い。
持ち手まで2時間ほど彫る。それからやすりがけ。
スポンジに巻いた80番のやすりから始まって、180番、240番、400番と進む。

授業のときには、ミツロウワックスをかけたけど、ここでは食用のナッツを砕いて、
その油脂を布のしみ込ませて使う。
ミツロウワックスはにおいが気になったから、この方がいい。
ただ、ナッツ類のアレルギーがある生徒がいないか確認しないと、とか考える。





参加者9名のスプーンが出来上がる。いい感じ!!




そしてご飯は料理制作ユニットGoma中村亮子さんが担当。
使うお米はお米農家山崎さんの無農薬のお米。ほんとに美味しかった!!

*どうやっても、写真が逆さになる・・・無念!!!


そして、食べて「ごちそうさまでした~!」で終わるはずが、
なんとシークレットスペシャルミニライブが!!

明日の回のWSでは告知されていたミュージシャンの野崎有真さんの飛び入りライブ!
ご自身の曲を2曲、最後に井上陽水さんの曲も。
温かみのある声で、伝わる詩。また聞きたいな。

スプーン制作の宮薗さんとミュージシャンの野崎さんは、
『カホンプロジェクト』という箱形の楽器を創作するWSで共にお仕事をされている仲間とのこと。
今後もこういう取り組みをされていくそう。視野が広い!!
若い人たちが、環境のために自分のできることを一生懸命にやっているのが素敵だなと感動した。



等々力の巣巣さんは、こういう視野の広いアーティストさんの活動の場になっている。
今回も、楽しみながら勉強させていただきました。







パワーをいただく 

2014-05-04 03:53:46 | 日記
ゴールデンウイーク初日は、
家で山ほど持ち帰った仕事をする予定だったけれど、
あまりのお天気の良さにフラフラと外出。せっかくだからなあ。

行きたいと思っていた展覧会に行ってしまうことにした。
意外にも電車は混んでいなかった。


まずは国立新美術館の『イメージの力』展。

今年、授業の参考になるかと考えてのことだった。



国立民俗学博物館の膨大なコレクションの中から選ばれた約600点の資料は、
造形的にまず相当刺激的であるし、想像の世界のものを何とか形にしてみた!という強力なエネルギーを感じる。

入場するとすぐ、壁面に所狭しと飾られた世界各国の仮面がお出迎え!!
うわあーーー!!怖っ!!!

こっちが見ている側のはずなのに、向こうから見つめられているような気持ちに。
祭りや祈りの場に活用された仮面、不思議な力がある。


・・・まず、そこで結構な時間、見入ってしまう。
どうしても画像が欲しい!と思ったので、高かったけど最後に図録を購入した。
これは、仮面制作の導入でぜひ生徒に見せたい。面白過ぎる。


最後の方では文化の交流によってもたらされた新しい造形物も展示されている。
ガーナの棺桶がポップ過ぎて、足をここで思わず止めた人も多かった。
イカの形、ジェット機の形、酒瓶の形。まるでバラエティー番組の着ぐるみ?のよう。
色鮮やかだ。
それぞれ生前に漁師だった方、ジェット機の操縦士だった方、そして言わずもがな・・・の方のための棺桶。
生きた時間をこうして讃えられ、明るく送り出される。なんて幸せな最期だろう。


また、『武器をアートに』というモザンビークにおける平和構築の取り組みも紹介されていた。
戦争の傷跡が生々しく残るモザンビークで、
人々が未だ持っていたり、埋められて隠されていたりする銃などの武器と、
鍬や自転車など、生活に役立つものを交換し集めた武器を解体して、その部品でアート作品を作るという取り組み。
作品が展示されていて、映像でその制作に携わった人のインタビューや様子が公開されていた。

興味があったので、図録とともに販売していた『みんぱく』(国立民俗学博物館の月刊誌)の中の、
このことに関する特集号も購入。

楽しく力強く、自由に生きるというパワーを感じた展覧会だった。
これは行って良かった。

道々のカフェには、昼間からお酒を嗜む人も大勢いた。
休みって、ほんと幸せだなあ・・・。


まだ時間もあったので、帰り道にあったサントリー美術館『のぞいてびっくり江戸絵画』へ。

こちらは5月11日までとあってか、混んでいた。

江戸時代後期、オランダとの交流から入ってきた遠近法や望遠鏡、顕微鏡などの文明の力を、
当時の日本がどんな風に消化していったかがわかる。
プラス500円で音声案内をつけたので、より一層、興味深く鑑賞できた。

個人的には、司馬江漢がほぼ完璧に遠近法を使用して制作する以前の作家の、
室内は遠近法がかなり正確に使われているんだけど、障子の外の世界は俯瞰という過渡期の作品群が面白かった。
チラシの絵にもなっている歌川国芳の『みかけはこわいがとんだいいひとだ』などに見られるような、
遊び心のある作品もたくさん展示されていた。
立ち止まってじっと見ちゃうから、混むけどこれは仕方ないだろう。

外に出てまだ16時。明るい。
六本木の地下鉄の近くでテイクアウトのカフェモカを買い、歩く。
お天気がよく華やかな街(しかも混んでない)は、歩いているだけでもうきうきするものだ。


自宅に帰ってもまだ明るい!! 普段ならこんなことはない。
ベランダに出て、暮れていく風景を見ていた。
3月に引っ越してきたけど、ゆっくりと風景を見る余裕がなかった。
暑くも寒くもない、いい季節。
部屋が暗いなと感じるまで、ずっとぼんやりとしていた。
何かをチャージしてるな、今、と思った。



今日はなんだか、生きてることに幸せを感じる瞬間がたくさんあった日だった。