ボクは、珈琲と灰皿を手にしてマクドナルドの閑散としたカウンター席に座った。タバコに火をつけて口にくわえ、“エンジェルハート”の3巻を鞄から出して読み始めた。
熱い珈琲の浮き立つような白い湯気は、ゆらゆらと揺れるタバコの白い煙に支配されてかき消されているかのように見えた。“あっ・・・”もしかすると今現在の友人獅子の心境は・・・そんなどうする事も出来ない煙に巻かれて、元気を無くしているかもしれない事に気が付いた。能天気に過ごしているボクには何も言えやしない・・・
コミックスから目を離して、ページを開いたまま宙をぼんやりと眺めているうちに・・・珈琲から湯気は消えた。ハッと気が付くと・・・ボクの右隣のカウンター席に、JリーグのTシャツを着た少年二人が座っていて、壁に貼られたJリーグの試合日程と勝敗表を見ながら楽しそうにサッカーの話をしている。ボクは灰皿を少年たちから遠ざけてカウンターの左隅に置いた。
“エンジェルハート”は読むのをやめて本を鞄にしまって、2本目のタバコに火をつけてから・・・ボクは温くなって苦味が増した珈琲を喉に流し込むように飲んだ。
到着するだろうと予想した18時過ぎ・・・ボクはパルコの入口まで来ていた。それらしい人影は駅の北口の改札口付近にも見当たらない。取りあえず友人の目当てである“H/H”の売り場で少し待った。“OXBOW”ならゆっくりと色々と手に取って時間を潰せるところだが、ここは“H/H”・・・ボクにはあまり興味がないブランドだった。
ボクはたった5分で我慢できなくなって、エスカレーターで一つ上のフロアにある書店へ行き、新書コーナーで時間を潰した。面白そうな本を手にしてついつい読みふけってしまったら・・・20分近く経過してしまった。慌ててエスカレーターで降り“H/H”に戻ってみると
、友人獅子は相変わらずの風貌と表情で商品を手にしていた。そこには落ち込んで凹んでいる雰囲気は全く見られない。ボクと目が合ったその瞳にはなんの陰りも無い。
一瞬・・・「久しぶりです・・・実はこのひと月というもの・・・」という、ボクの脳裏に蘇った獅子からのメールの文章への、その杞憂はすぐに消えた。一応持参してきた“カード”は彼には必要は無い事も解った。その変わらぬ仕草と言葉と笑顔にボクは安心した。
友人獅子の買い物が済んだ後、ボクらは近くのファミレスに行って・・・昔を懐かしんだ。今では全く連絡が取れない共通の友人達はいったいどこで何をしているだろう。
PCを持ってない獅子からMIXIの話が出た事にボクは驚いた。前に話をした事があっただろうか?「あの職場もあるの?」「あるよ~若いのばっかで知人はいないけど」「獅子もPCがあれば招待するのになぁ」「だよねぇ~」たわいもない話が続く中、ボクは獅子に、以前メールでも尋ねてみた事を、もう一度言葉で聞いて見た。「そう言えば山城君って覚えてる?」「え?新伍?」・・・相変わらずのいいボケっぷりだ・・・「××にいたんだけどさ・・・」「覚えてないなぁ~」彼はそう言うと眉をねじれさせて考えて「解らないや」と言った。覚えている人はもういないかもしれない。でも、ボクや獅子よりもはるかに在籍期間は短かったが、山城君が一時期いたのは紛れもない事実なのだ。ボクもいつかは化石のように忘れ去られていくのかと思うと・・・少し寂しい思いがするのだった。
あの場所に今もいる獅子、辞めて5年が経つボク・・・ボクを知る人は毎年どんどん辞めて少なくなっている。ボクと獅子には違う苦悩があって・・・違う選択と未来が待っている。獅子に起きたことが、ボクに起きないとも限らない。でも、一生の友だ。何が起きても。
獅子に巡り会えたあの場所・・・そして・・・大勢の人に巡り会ったあの場所・・・
連絡が取れなくなった人もボクはきっと忘れないだろう。
熱い珈琲の浮き立つような白い湯気は、ゆらゆらと揺れるタバコの白い煙に支配されてかき消されているかのように見えた。“あっ・・・”もしかすると今現在の友人獅子の心境は・・・そんなどうする事も出来ない煙に巻かれて、元気を無くしているかもしれない事に気が付いた。能天気に過ごしているボクには何も言えやしない・・・
コミックスから目を離して、ページを開いたまま宙をぼんやりと眺めているうちに・・・珈琲から湯気は消えた。ハッと気が付くと・・・ボクの右隣のカウンター席に、JリーグのTシャツを着た少年二人が座っていて、壁に貼られたJリーグの試合日程と勝敗表を見ながら楽しそうにサッカーの話をしている。ボクは灰皿を少年たちから遠ざけてカウンターの左隅に置いた。
“エンジェルハート”は読むのをやめて本を鞄にしまって、2本目のタバコに火をつけてから・・・ボクは温くなって苦味が増した珈琲を喉に流し込むように飲んだ。
到着するだろうと予想した18時過ぎ・・・ボクはパルコの入口まで来ていた。それらしい人影は駅の北口の改札口付近にも見当たらない。取りあえず友人の目当てである“H/H”の売り場で少し待った。“OXBOW”ならゆっくりと色々と手に取って時間を潰せるところだが、ここは“H/H”・・・ボクにはあまり興味がないブランドだった。
ボクはたった5分で我慢できなくなって、エスカレーターで一つ上のフロアにある書店へ行き、新書コーナーで時間を潰した。面白そうな本を手にしてついつい読みふけってしまったら・・・20分近く経過してしまった。慌ててエスカレーターで降り“H/H”に戻ってみると
、友人獅子は相変わらずの風貌と表情で商品を手にしていた。そこには落ち込んで凹んでいる雰囲気は全く見られない。ボクと目が合ったその瞳にはなんの陰りも無い。
一瞬・・・「久しぶりです・・・実はこのひと月というもの・・・」という、ボクの脳裏に蘇った獅子からのメールの文章への、その杞憂はすぐに消えた。一応持参してきた“カード”は彼には必要は無い事も解った。その変わらぬ仕草と言葉と笑顔にボクは安心した。
友人獅子の買い物が済んだ後、ボクらは近くのファミレスに行って・・・昔を懐かしんだ。今では全く連絡が取れない共通の友人達はいったいどこで何をしているだろう。
PCを持ってない獅子からMIXIの話が出た事にボクは驚いた。前に話をした事があっただろうか?「あの職場もあるの?」「あるよ~若いのばっかで知人はいないけど」「獅子もPCがあれば招待するのになぁ」「だよねぇ~」たわいもない話が続く中、ボクは獅子に、以前メールでも尋ねてみた事を、もう一度言葉で聞いて見た。「そう言えば山城君って覚えてる?」「え?新伍?」・・・相変わらずのいいボケっぷりだ・・・「××にいたんだけどさ・・・」「覚えてないなぁ~」彼はそう言うと眉をねじれさせて考えて「解らないや」と言った。覚えている人はもういないかもしれない。でも、ボクや獅子よりもはるかに在籍期間は短かったが、山城君が一時期いたのは紛れもない事実なのだ。ボクもいつかは化石のように忘れ去られていくのかと思うと・・・少し寂しい思いがするのだった。
あの場所に今もいる獅子、辞めて5年が経つボク・・・ボクを知る人は毎年どんどん辞めて少なくなっている。ボクと獅子には違う苦悩があって・・・違う選択と未来が待っている。獅子に起きたことが、ボクに起きないとも限らない。でも、一生の友だ。何が起きても。
獅子に巡り会えたあの場所・・・そして・・・大勢の人に巡り会ったあの場所・・・
連絡が取れなくなった人もボクはきっと忘れないだろう。
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