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伊豆大島渡航記 セーリング 平成三年十一月(1991)その4

2022-01-30 12:18:14 | 写真 海

               二月ニ十二日(金)

 06:15
 雨。天気予報は大外れである。今日は晴天で暖かい日になるのではなかったのか。
 寒い。『大島行き、中止』・・・。
 憂鬱である。こんな時には決定権があることが逆に恨めしい。
 しかし、一時間後には決断しなければ。
 Kはまだ惰眠を貪っている。

 06:45
 朝食を簡単に済ませてとりあえず出航。


 荒れがひどければ再び千倉港に戻ることを考えつつティラーを握っていた。
 港から五百メートルを越えた。雨を除けば海象はそれほど悪くはない。
 メイン。続いてジェノア展開。エンジン停止。
 昨日と同様にSとヘルムスを交代。GPSはまだ稼働していた。

 09:00
 房総半島が霞んできた。雨脚が強まる。それに波しぶきが加わった。
 明るいカッパが予想以上に効果を発揮している。
 波高は時おり二メートルを越える。風速もブローで二十ノットを越えた。
 艇は二十度ほどヒールしたまま八ノット前後で荒れた海を疾駆していた。
 大島は影すらも視えない。船首方向に横たわっているはずなのだが。

 GPSは予想通りまだ健在だった。揺れるキャビンの中で大島の海図を開いた。
 波浮の詳しいポジションを入力する。けっこう細かい作業である。

 ブローで艇が大きく傾いた。床が濡れていた。バランスを失いバースに二度叩きつけられた。
 睡眠不足、疲労、細かな艇内作業。『危ない、船酔いの前兆だ』キャビンを飛び出した。
 冷たい外気に触れると吐き気は治まった。
 しかし今度は寒さが襲ってきた。オイルスキンの下のセーターを厚手の物に着替えるため再びキャビンへ。
 また、吐き気が。スターンへと急ぐ。嘔吐。胃の内容物をすっかり吐き出すとすっきりした。
 しかし寒さは治まらない。三度キャビンへ。
 今度は大丈夫だった。セーターを着替えた。
 ついでに現在のポジションをメモリー。

 昨日と同様に三人が交代でティラーを握っていた。 
 私はヒールがきついのでバラストに徹することにした。
 ライフラインから脚を投げ出した。
 うねりがマリンブーツを洗って行く。
 ブロー!。ヒール四十度オーバー。声が上がった。

 房総半島が視界から消えて暫くたった。しかし、いっこうに大島は姿を見せない。
 眼前に広がるのは鈍色の海原だけだった。
 ときおり本船の朧げな影がゆっくりと視界を横切る。
 群れからはぐれた?海鳥が一羽近寄って来た。
 小説の類ならばマストにその白い翼を休めるのだが・・・。

 「まだ大島視えませんか?」T海が訊く。
 「さっきから目を凝らしてはいるのだが・・・視えない」
 西の空が明るくなってきたような気がする。
 『間もなくだろう。たぶん』

 12:00
 雨がやんだ。オイルスキンのフードを取る。


 髪の毛から湯気がたった。煙草を咥えて一息ついた。
 「あれ、違いますか?」T海が指さした。
 五分前には何も見えなかった。しかし確かに今は・・・船首方向に三原山の頂が薄墨色に霞んでいた。

 13:00
 晴れ間が広がって来た。海も穏やかさを取り戻しつつあった。
 大島が全貌を現した。



 波高は1m以下に落ち着いた。陽光が射し暖かくなってきた。上着を脱いだ。
 GPSをチェック。まだ稼働していた。艇は大島の中央部を目ざしていた。
 波浮の港に入るには南下する必要があった。


 「針路S」

 先刻から空腹であった。Kの持ってきたチョコレートとSが夕べ購入した煎餅を胃に運ぶ。
 『よく喰うな』と言うような顔を三人がしていた。
 『そんな顔をするな。朝飯は魚にくれてやったのだ』

 

 ※ 明るいカッパ   平成元年(1989)12/05 
   N岡がヨットウェアが欲しいと言いだした下手な奴に限ってファッションに拘る。
   だが私もマリンブーツだけは欲しかったので付き合うことにした。
   今後他のメンバーが購入する時の参考に価格などを記すことにする。
   東京A**T 取り扱っているウェアの大部分は外国ブランド。
        まずマリンブーツ。¥5,000くらいから¥10,000。長靴にしては高すぎる気が。
   オイルスキンはそれこそピンキリ。良さそうなものは最低でも¥50,000は必要。
   (油を引いて防水製をもたせた生地でできたレインコート。
    コットンやシルクの織物に、以前は乾燥性の油を用いていましたが、
    経年変化することがあるため、現在ではより安定性の高い合成物質製)

   希望の製品の在庫が無かったので発注。宅配手続きをした。
   帰りの車の中でN岡に「ウェアの説明を読め」
   「ヘンリーロンドの中ではライトなカッパ(そこまで読んで)明るいカッパだってさ」
   みんな笑ってやってくれ。本人は「私的なことで会とは関係ないので書かないでくれ」
   と、言っていたがそんなことに耳を貸す私では無いことはメンバーは承知だろう。
   ここまで書いたからもう一つおまけだ。
   N岡はヘリーハンセンをスタンハンセンと思い込んでいた。まことに愛すべき奴だ。
   N岡は新艇になって入会 我らが愛しのS*******S(航海日誌)より転載。

   私が着ているのがその時の明るいカッパ。
   T海とKが着ているのはY田とN岡から借用したもの。 

  

   つ づ く

   後のために  ダイビング編目次 へLINKを貼ることにいたします。



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