記憶のスクラップ・アンド・ビルド

当然ながら、その間にタイムラグがあり、
それを無視できなくなることこそ残念です。

神話は虚構でしかない_原発の場合

2011年04月06日 15時10分44秒 | Weblog
安全神話とは言い得て妙だ。
推進派も反対派も安全論議を神話化することで止揚した。
虚構であることは両派とも知らない訳でない。
限られた範囲だけで通用した話が、国全体で共有されるようになったから神話だった。
ナショナリズムと相関したからこそ神話だった。

記紀などの伝説と違って絡んだ糸を解いて虚構が明かされたのではなく、当初から予測されていて現実になった大災害が、その結び目をいきなりバッサリ断ち切ったのだから悲劇は重い。
想定外のことが起きたのだと弁解し、自然災害と同じだと見做して勘弁してくれ、勘弁してやれと言う。
神話は何故か政治の問題となって話を更にややこしくする。

津波警報を放送して逃げるようにするシステムを作っても、実際に避難行動をとった人はいつも数%しかなく、実際にやって来た津波は1mもなかったりすることが多くて、人々はいよいよ避難しないことを学習してきた。
原発は時々事故を起こして対策を求められてきたが、検討すると言って何もしない間に公に取り沙汰されないで済み、このまま過ごすという習性が強化されてきた。

チェルノブイリでは近隣の50ほどの村落が廃村になり、原発の石棺を管理する人たちを除いて立ち入りできなくなっているらしい。
福島も、そうならざるを得ないと早くから覚悟していたら、それなりの対策が採れたかもしれない。
早くから国際的提案と援助の申込みが有ったのに、それを断り、いよいよどうにもならなくなってから協力を願ったのはナショナリズムによる偏見も手伝っていたと見える。

それは報道で更に顕著だった。
アメリカとフランスから原発の専門家と作業部隊を受け入れることになったとき、アナウンサーは解説者に「日本は原発技術で最も進んでいた筈なのに、どうしてなのか」と云う風に尋ねていた。
解説者は「日本は確かに最も進んだ技術を持ってはいるけれど、今度のようなトラブルについては用意がなく、外国の協力が必要だった」と応えていた。

「日本は一番でなければいけない」という期待が有り、「一番の筈だ」という思い込みになり、それを疑わせるような事象は排除したいという警戒心が見え隠れする。

炉心のメルトダウンは既に明らかで、チェルノブイリやスリーマイル島と同じように何十年かにわたって放射能の封じ込め対策が必要になる。
現に稼働している原発は廃炉にできない。
今後のエネルギーはどうするか。
応急措置としては、恥を忍んで火力発電に逆行せざるを得ないだろう。
しかし、折角のナショナリズムの沽券にかけて、早急に第三の道を開拓し、実用化して欲しいものである。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿