瀬名・太田(2007)の「ミトコンドリアのちから(新潮文庫)」は面白く、読み出のある本でした。
2000年に角川から刊行された「ミトコンドリアと生きる」を全面的に改稿・改題したものだそうです。
ミトコンドリア学の進歩は急ピッチで、こんなことにも関わっているのかと驚くばかりです。
原始の生物にとって極めて危険な物質だった酸素を、安全で効率の良いエネルギー変換の資源として使いこなしてきた生命の歴史が読み取れます。
人類が火を扱うようになり、放射性物質の核反応を制御してエネルギー利用しようとしてきた今日までの苦闘は、それを繰り返しているのかも知れません。
改編で最も大きく変わったのは健康への一般の関心の高まりが有って、長寿の遺伝子、アルツハイマー病や生活習慣病、サプリメントなどについての啓蒙を意図した比重が大きくなっているようです。
この本とは別に太田(2010)の「体が若くなる技術(サンマーク出版)」が有って健康志向の人のための実用的知識を著しているそうですが、論調は必ずしも整合していないところもあるように思われます。
この部分に特化した基礎的情報としては
近藤祥司(2009)「老化はなぜ進むのか;遺伝子レベルで解明された巧妙なメカニズム (講談社Blue Backs)」
がお薦めです。
「酸化ストレス」について詳しく、高酸素環境での寿命の短縮を説き、アスリートでない人が疲労回復に高酸素を浴びることは危険だと言っています。
ミトコンドリアこそ、体内の9割の酸化ストレスを生み出す場所だそうです。
沢山の化学物質の名前が登場し、追いかけるのに苦労しますが、実験と推論の展開を興味深く紹介していて信頼できます。
相関関係の統計分析は生物学が起源の筈ですが、原因と結果の間に直線的関係があると見做せない場合が非常に多いようです。
従来、原因と考えられてきたことが結果だったりしたことも少なくないようです。
いろいろ面白い話題が載っていて、そのひとつとして更年期症状の治療に女性ホルモンが推奨され、90年代には女性ホルモン信仰の状況だったのが、ガンのリスクを高め、心疾患や脳卒中の原因になるとして現在では逆の勧告ガイドラインが発表されているそうです。
栄養学の常識や最新知識とされたものが容易にひっくり返るのは珍しくありません。
しかし一度マスコミに載ると迷信のように持続し、人々の記憶を改編するのは容易でありません。
測定や分析がどのように行われたのかを伴わない情報は流さないでほしいものです。
放射線被曝の報道についての印象と重なり合って近頃頓にもどかしく思います。
2000年に角川から刊行された「ミトコンドリアと生きる」を全面的に改稿・改題したものだそうです。
ミトコンドリア学の進歩は急ピッチで、こんなことにも関わっているのかと驚くばかりです。
原始の生物にとって極めて危険な物質だった酸素を、安全で効率の良いエネルギー変換の資源として使いこなしてきた生命の歴史が読み取れます。
人類が火を扱うようになり、放射性物質の核反応を制御してエネルギー利用しようとしてきた今日までの苦闘は、それを繰り返しているのかも知れません。
改編で最も大きく変わったのは健康への一般の関心の高まりが有って、長寿の遺伝子、アルツハイマー病や生活習慣病、サプリメントなどについての啓蒙を意図した比重が大きくなっているようです。
この本とは別に太田(2010)の「体が若くなる技術(サンマーク出版)」が有って健康志向の人のための実用的知識を著しているそうですが、論調は必ずしも整合していないところもあるように思われます。
この部分に特化した基礎的情報としては
近藤祥司(2009)「老化はなぜ進むのか;遺伝子レベルで解明された巧妙なメカニズム (講談社Blue Backs)」
がお薦めです。
「酸化ストレス」について詳しく、高酸素環境での寿命の短縮を説き、アスリートでない人が疲労回復に高酸素を浴びることは危険だと言っています。
ミトコンドリアこそ、体内の9割の酸化ストレスを生み出す場所だそうです。
沢山の化学物質の名前が登場し、追いかけるのに苦労しますが、実験と推論の展開を興味深く紹介していて信頼できます。
相関関係の統計分析は生物学が起源の筈ですが、原因と結果の間に直線的関係があると見做せない場合が非常に多いようです。
従来、原因と考えられてきたことが結果だったりしたことも少なくないようです。
いろいろ面白い話題が載っていて、そのひとつとして更年期症状の治療に女性ホルモンが推奨され、90年代には女性ホルモン信仰の状況だったのが、ガンのリスクを高め、心疾患や脳卒中の原因になるとして現在では逆の勧告ガイドラインが発表されているそうです。
栄養学の常識や最新知識とされたものが容易にひっくり返るのは珍しくありません。
しかし一度マスコミに載ると迷信のように持続し、人々の記憶を改編するのは容易でありません。
測定や分析がどのように行われたのかを伴わない情報は流さないでほしいものです。
放射線被曝の報道についての印象と重なり合って近頃頓にもどかしく思います。
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