記憶のスクラップ・アンド・ビルド

当然ながら、その間にタイムラグがあり、
それを無視できなくなることこそ残念です。

世界は細菌にあふれ・・・(エド・ヨン原著) メモ1

2017年10月31日 15時09分35秒 | Weblog
世界は細菌にあふれ、人は細菌によって生かされる
エド・ヨン(著)安倍恵子(訳)柏書房 2017
I Contain Multitudes:
The Microbes within Us and a Grander View of Life.
Ed Yong 2016

<帯>から:
細菌は30億年前に誕生し進化してきた。
病気への恐怖から100種程度の病原菌だけが注目され、無害な数千種は無視されてきた。
細菌こそが多細胞生物を作り上げ、利用し、コントロールして、生き延びてきた。
細菌が提供する協調的関係を利用して、人類に有利な環境を可能にするのがプロバイオティクス。

<訳者あとがき>から:
いま、微生物界隈がなんだか楽しそうだ。・・・腸内フローラを健康にしてアンチエイジングしようとか、腸内細菌で鬱病を治すとか、他人の大便を移植して病気を治療するとか、ずいぶんと刺激的な内容が多い。たいていは専門家が科学的な解説を加えているけれど、ちょっと怪しげな感じも否めない。
怪しげな微生物の話も、どんな研究に基づいて、どこまで本当なのかが本書をとおして理解できるだろう。

<まえがき 動物園への旅>から:
熱帯雨林や草原、サンゴ礁、砂漠、塩沼など、それぞれが種の独特なコミュニティである。
ところが一匹の動物もまた、さまざまな生態系で満たされている。肌、口、胃、腸、生殖器ほか、外部世界とつながりのあるすべての臓器は、それぞれ特徴的な微生物コミュニティを持っている。
われわれはズームアウトして動物界全体を見ると同時に、ズームインしてすべての生物存在する隠れた生態系も見なければならない。
われわれの一人ひとりが、それぞれに大群だ。つねに「われわれ」であって、決して「私」ではないのだ。

《本文》から:
われわれはいま、人新生(アントロポセン)という新しい地質時代を生きているといわれる。・・・だがそれと同時に、われわれはいまでも「微生物生(マイクロバイオセン)」というべき年代に生きている。

人の細胞は、2万個から2万5000個の遺伝子を保持しているが、人の体内の微生物は、その500倍ほどの遺伝子を持っている。
人間の母親は、子どもに母乳を飲ませるとき、食事を与えるだけでなく、最初の微生物も与えている。
動物は自分の遺伝子だけでなく、微生物の遺伝子によってコードされる指示を用いて、体を作っている。
免疫系はわれわれの細胞を侵入者の細胞と区別して、自己と非自己を見分けるために存在しているといわれる。だが、これもまったくの真実とはいえない。

アントーニ・ファン・レーウェンフック:
顕微鏡を作り、原生動物など観察記録を出版(1677年)。
自分の歯垢(プラーク)の中に生きている細菌を観察。
ワインビネガーを加えて微小動物が死ぬ(消毒)のを記述。

ルイ・パスツール:19世紀半ば
細菌が発酵と腐敗の原因なら、病気の原因も細菌だろう、と。

ロベルト・コッホ:
地元の家畜で大流行した炭疽病の研究(1876年)。

チャールズ・ダーウィン:
種の起源(1859年)。
細菌が病気の原因とする背景に、種の間の生存競争の現れという考え方あった。

マルティヌス・ベイエリンク:
土壌の中の微生物が窒素を空気中から取り込みアンモニアに変え、植物が使えるようにすることを発見(1888年)。
微生物生態学者と自称し、微生物が世界に不可欠な要素であると明らかにした。

地衣類:
染みのように壁や石、樹皮に色を付けて広がっていく。真菌類と藻類の混成体。
真菌は藻類に水とミネラルを与え、見返りに栄養を得ている。

アーサー・アイザック・ケンドール:
 腸内細菌研究のパイオニア。

テオドール・エシェリヒ:
 大腸菌(Escherichia coli)の発見。

イリヤ・メチニコフ:
 腸内細菌が作る毒素が病気・痴呆・老化を引き起こし、寿命を縮め、また一部の細菌によって寿命を延ばすこともできると信じていた。

抗生物質が発見され、大量生産されるようになると、共生細菌の研究は長い旱魃の時代に入った。
遺伝子のオンの仕方やエネルギーの貯蔵方法といった生化学の側面は生命の樹の全体で共通だと分かると、細菌は「普遍的で還元主義的な生命観の代役(ファンク・サンゴディ)」になった。

セオドア・ローズベリー:
口腔生物学者。人間に固有の微生物(1962年)。
微生物はビタミンや抗生物質を産出し、病原菌の感染を防いでいる。
一時的な抗生物質の影響の後には正常状態に戻るが、慢性的に抗生物質を使用すると恒久的な変化をする。

ルネ・デュボス:
 地中の微生物の研究から薬物を分離抽出。抗生物質時代の幕開け。
発見した薬物は微生物を殺すための武器ではなく、微生物を家畜化するツールだと。
 無菌保育器で育てた無菌マウスはストレスに弱く、感染症に罹り易い。

カール・ウーズ:
様々な種の細菌を集め、その全てに存在する16SrRNAを分析(1960年代)。
メタン菌は、CO2とH2からメタンを生成して生存、人間の腸にも生息。
高温の下水汚泥で見つかったメタン菌は16SrRNAで見ると細菌性でなく、
ウーズはアーキア細菌として分類し直した(1977)。
のちに単にアーキア(古細菌)という名前に変え、細菌と真核生物に並ぶドメインを与えた。
遺伝子を比較して、さまざまな種と種の間の関係を解明する:
ウーズによるこの方法で微生物界の探検が真に始まった。

ノーマン・ベイズ:
イエロストーン公園の91℃の熱水に棲む微生物から古細菌を特定(1980年代)。

ディヴィット・レルマン:
 歯垢や腸から細菌や古細菌を特定(2005年)。
 肥満な人と痩せた人では腸内微生物が異なる。
 マイクロバイオータは脂肪の蓄積や血管の生成をコントロールする「必要不可欠な臓器」。


<体を造るものたち>から:
魚の体内で発光する細菌。
ダンゴイカの場合:下面に2つの室があり、内部をビブリオ・フィシェリという発光細菌が満たし、発光器官を作っている。

共生微生物は、それでもなお独立した存在であり、それ自身の利益を促進し、それ自身の進化のために戦っている。
われわれのパートナーではありうるが、友人ではない。



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