日本の心
①自然環境と日本人
ヨ-ロッパ文化は武器を持つことが基本であり、その武器を利用して世界を侵略することがで
きた。それに反して日本は、たとえば、縄文時代の集落が、青森県の三内丸山遺跡で発見されまし
たが、そこには500人ぐらいの人が共同で暮していた住居群が確認されています。
そこには水田耕作をしたり、畑を耕したり、牧場をつくったりしたような跡は見つかっていませ
ん。しかし、それだけ多くの人たちが、そこに定住して暮らすことができたのです。なぜなら、集
落の周りには、栗林が広がっていました。盛り土となっていた当時のごみ捨て場からは、多くの動
物や魚の骨、木の実が見つかっています。縄文時代の人々は、栗林から採れる実を主食として、海
の幸、山の幸をバランスよく食べていたことがうかがえます。
これは、当時の自然条件が、食料となる動植物を豊かに育んでいたために、彼らが、狩猟、採
集、漁労だけで、共同生活を営み続けることができたということを物語っています。
②大きな争いの形跡が見られない
当時の人々は、争って人と殺し合うというようなことをできるだけ避けようとしていたと思われ
ます。もちろん、中には、お互いに対立し、争い合う集団もあったことでしよう。事実、後に豪族
とよばれる人たちが、ある種の血のつながりによって、対立し争い合うということはあったでしょ
う。しかし、縄文時代は、遺跡からは出てきません。当時に造られていたと思える城壁は一つも見
つかっていません。
③自然条件のもとで形づくられた「争わない」という生き方
自然条件として、比較的温暖で、食料となる動植物が豊富にあり、島国として大陸とほどよい距
離に隔てられたという、幸福な条件に日本が恵まれていたこと、それが日本の心の根本にあるとい
あうことを、私たち日本人自身がすごいことだと思わなければなりません。世界中に、日本のほか、
そうした国は存在しないのですから。
日本人に与えられた自然条件、それはたいへん恵まれた、幸福な条件であったわけですが、そう
した条件のもとで形づくられた「争わない」という人間の生き方は、人間本来のあるべき理想的な
生き方であるということなのです。
日本だけが島国ではないという方もいるでしよう。イギリスのような国もあるじゃないかと。も
ちろん、イギリスとフランスを隔てているドーバ-海峡は、意外に簡単にわたることができるので
す。日本と大陸を隔てている日本海、対馬海峡のように、潮の流れが速い海流が流れてしません。
ですから、実際、イギリスは北からもフランス側からもたびたび攻められているわけです。日本
とは同じ島国といってもそこが違うのです。
日本列島の東には、広大な太平洋が広がるばかりです。こうした自然条件によって、日本は異
民からの侵略をうけることなく、自立・独立し、繁栄し続けてくることができたのです。