時によりては小人をも用う㉑
雲 賢人には任せて宜しいが、その他の者を使う場合にはよほど手段を考えないと、衰え
たものを興すことは不可能かと存じます。
水 時勢の必要に応じて、一才一能を持った人物も使わなければならないと思います。間
違いのない人物というのはそんなにいるものではありませんから、また場合によっては
立派な人物では事の成功しないこともあって、隅におけない人間で使わなければならな
いこともあります。しかし自分は使っておるつもりでも、いつの間にかだまされている
ということもありますから、よほど腕に覚えがないと危険があると思います。
君子、小人の使い方㉒
雲 君子と小人の使い方はもちろん区別があることと思いますが・・・・。
水 威厳と恩情とを並び施すのが人君の道でありますから、偏ってはいけません。
雲 君子に対しては平生恩情を施し、時には威厳をもって臨み、小人に対しては威厳を専ら
にして、たまには恩を施して怨みに遠ざかるのがよいと思います。
水 小人を使う方法として、威厳を多くし、恩を少なくするのはたいへん結構です。
(君子と小人の原則的な分け方を申しますと、東洋政治学においては、まず人間を才と徳
に分けます。徳とはその人間に本質的についておるところの、人間として一番大事なもの
であります。それに対していろいろな頭の働き、腕の動きといった能力が才であります。
この二つを人間の要素といたしますと、どちらかといえば才が徳に勝っている人間を小人
徳が才に勝っている型の人間を君子というのであります。)
小人を待つこと㉓
雲 小人を御するのに余りその罪を責めると必ずといってよいほど弊害が起ります。
「参りました」と罪に服せるには、少々のあやまちがあっても罪の明らかに外にあらわれ
るのを待つが宜しい。ある時機がきて、これはいけないと思うと、利にさとい小人はすぐ
看板の塗り替えをやって、おとなしくついていくというのであります。また古語に「小人
を待つは厳に難からずして悪まざるに難し、君子を待つは供に難からず礼あるに難し」と
あります。人間でありますから悪んではいけません。父が子供を育てるのにはいくら性質
のよくない子供でも悪んではなりません。包容して厳格にしつけ、慣れさせてはいけませ
ん。
水 窮鼠猫を噛むという例えのある如く、追い詰められると獣でさえ、反撃を͡好みるもので
あります。まして人間のことですから、余りその罪を責めると弊害がありましよう。
水
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