グリーンラインは高麗川の北側の尾根に、12の峠を連ねて続く全長およそ34kmに及ぶ林道なんだよ。
奥武蔵グリーンラインの12の峠
一本杉峠(449m)、顔振峠(502m)、傘杉峠(552m)、花立松ノ峠(630m)、飯盛峠(770m)、 ぶな峠(766m)、刈場坂峠(818m)、七曲がり峠(802m)、大野峠(855m)、高篠峠(748m)、白石峠(821m)、 定峰峠(616m)
いよいよ奥武蔵グリーンラインにやってきたんだ。この奥武蔵グリーンラインは、知ってのとおりとても有名なサイクリングコースだよ。たくさんのサイクリストが訪れているらしい。
台風が去って、日本列島は数日ずっと秋晴れの日が続いている。今日もまた、家を出た早朝の空は真っ青で、雲の姿がどこにも見当たらなかったよ。外気は肌寒いくらいの涼しさで、すっかり秋を感じさせるね。8月のあの死ぬほどの暑さはもうやって来ないだろう。そのかわり日がほんとに短くなった。それはとても寂しい。夏は暑い。でも日の長い夏は大好きだ。遠くまで出かけられるし、遅くまでペダルをこげるからだよ。
みみ爺の住んでいるところからは、山のあるところまでは遠いいんだよ。秩父や奥多摩へ出かけて行くには、電車に乗って最低でも2時間半以上はかかるんだ。家の近くには山なんか無いんだよ。平らな道ばかりなんだ。平らな道ばかり走っていてもちっとも面白くない。すぐに飽きてしまうよ。
通勤時間帯の混みあった地下鉄を乗り継いで、やっと池袋に着いた時にはすっかり日は高く上っていた。西武池袋線の急行に乗って飯能まで行き、そこから西武秩父行の各駅停車に乗り換えて2つ目の高麗に降り立った時は8時半だったよ。さあ急いで自転車を組み立てなければとすこし焦った。
高麗本郷のT字路の近くにあるサイクリスト御用達のセブンイレブンで水とアンパンを買いこみ、出発だよ。いい旅になりますように。無事に奥武蔵グリーンラインを走り切れますように。…ここから鎌北湖まで、10kmの道のりだ。車の多そうな道もすこしだけ走らなければならないが、気を付けて行こうかね。
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出発して間もなく左手に高麗神社が現れた。
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そのすぐ隣にある茅葺屋根の高麗家は江戸時代初期を代表する民家として国の重要文化財に指定されているんだと。山を背にして静かなたたずまいだね。こんな茅葺屋根の家で余生を過ごしたいもんだ。
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しばらくは高麗川に沿ってつかず離れず進んでゆくが、流れはほとんど見られない。車もさほど多くなく快適だ。青空とキラキラした秋の日差しがたっぷりあふれているよ。こんな日に自転車に乗れるのは本当に幸せだ。
しかし、やがて車の多い県道30号に出て進むことになるんだ。絶えず後ろから迫ってくる車のエンジン音に緊張しながら、ハンドルを握る両手に力が入るよ。大型トラックも頻繁に追い越して行く。何度走っても車の多い道は嫌だね。ガソリンの値段がめちゃくちゃ高いから、車なんか使わなけりゃいいのに。…そんなわけにもいかねか。
埼玉医科大国際医療センターの先で県道30号は2つに分かれているよ。地図ではどちらも県道30号と書いてある。ちょっと古い地図には右の道は出ていない。右のひろい道は新しくできたようだね。ここを左の方へ進む。車がぐっと減ったよ。ああよかった。
さらに5~600mほど先の信号を毛呂山総合公園の方へ左折するんだ。そして県道186号に合流してすぐ、左の遊歩道へ入るよ。
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民家や畑の中の、静かな里の小道をのんびり行く。青空があり緑の山があり赤とんぼが飛んでいるよ。これをのどかな風景と言わないで何と言うだろう。
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遊歩道はやがて舗装が途切れ山道に変わる。手前で右に折れ、再び県道を行くことにするよ。山間の田んぼは実りの秋だ。黄色く色づいた稲穂がまぶしいね。
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鎌北湖の手前5~600mはちょっと急な上り坂だ。路面の滑り止めでそれがわかるね。いよいよ山の中に入って行くよ。車はほとんど通らない。日差しもそれほど暑くはない。緑の中を淡々と上って行く。
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ほどなく鎌北湖に到着したよ。深い緑の湖面は波もなく、秋の日差しを浴びて光っている。山の中の静かなダム湖だ。湖の上をたくさんの赤とんぼが飛んでいるよ。湖畔にMTBの若い2人がのんびり休んでいるほかに人影はなかった。平日だからね。蝉の声がしきりだ。傍らでは秋の虫も鳴いているよ。
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静かな湖畔をあとにして、道はいよいよ林道に入るよ。きつい上りが待っている。意を決し、ペダルに足をかけて出発だ。さて、峠をいくつクリアできるか。
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上り始めたが、林道は涼しく、それほどつらくはなかったよ。林道はやっぱり気持ちがいいねえ。
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山の景色を眺めながらペダルを踏んでいると上りのつらさをつい忘れてしまう。どんどん高度があがって行くよ。山はいいなあ。
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途中林道清流線の分岐点があった。通行止めになっている。こちらから上って来なくてよかったよ。
林道権現堂線起点の標識が立っているけれど、鎌北湖から上り始めたところにも標識があったなあ??ここは林道中野線への分岐点でもあるよ。
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もうすぐ北向地蔵だ。この辺りは杉よりもヒノキが多いのかな。杉とヒノキはその姿が似ているけれど、よく見ると葉っぱや幹が違うんだね。恥ずかしながら最近区別がつくようになったんだよ。綺麗な杉やヒノキの林の中を抜けてくる風はとても涼しいんだ。
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北向地蔵だ。この辺りの標高はおよそ400m。旅の無事をお願いして手を合わせたよ。
さっき鎌北湖の手前の遊歩道の入口あたりで、そのまま県道を上って行ったMTBの老人が先に着いて休んでいたんだ。訊くと、この下に住んでいる方で、毎日ここまで上ってきて戻って行くそうだよ。
「健康のためにはちょうどいい上りですね」
自分の家の近くにもこんないいところがあったらなと、ちょっとうらやましい。
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しばらく杉やヒノキの木陰を行く。
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北向地蔵からは高度7~80mほど下るんだ。下りは気持ちがいいけれど、ちょっと下りすぎるよ。
しこたま下った後はまた上りだ。一本杉峠までの上りだよ。
前方に大きな岩が現れた。緑の中に思わず目を引く巨大さだ。天文岩というそうだよ。
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天文岩の横にある小さなお堂だ。小さいが立派な作りで趣があるね。
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天文岩からほどなく、また大きな岩が現れたよ。迫力あるなあ。
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またしばらくはゆっくりと上って行くよ。上りはきついけれど、涼しいからいい。このくらいの気候がいいね。
今日はなんとか刈場坂峠までは行きたいなあ。行けるかなあ。ブツブツつぶやきながら上って行く。奥武蔵グリーンラインはほとんど上りだから、果たしてたどり着けるかどうか年寄りのみみ爺にはちょっと心配なんだよ。
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おや、ここが一本杉峠かなあ。どこにも立札が見当たらないけれど、右手に黒山三滝の方へ下る林道笹郷線の入り口があるから、おそらく間違いないだろう。グリーンライン12個の峠のうち最初の峠だよ。この後アップダウンを繰り返しながら標高を重ねて、一つ一つ峠をっ越えていくんだ。さあどこまで行けるだろかね。
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一本杉峠を過ぎると再び少し下ってまた上りだ。じき顔振峠だよ。頑張ろう。
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阿寺の集落付近だよ。山上集落のひとつだ。
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奥武蔵グリーンラインは山々の稜線をつないで続いている林道だ。そのわりに全体的に展望に乏しく、ほとんど緑の中を進む感じなんだけれど、この辺りには時々きれいな山々の眺望が現れるよ。
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道がスイッチバックのよう折り返してさらに上って行く。
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ようやく顔振峠に着いたよ。まずは奥武蔵グリーンラインのハイライトの峠のひとつに着いてほっとした。ここからは、南側に展望が開けていて、秩父の山々が眺められる。茶屋があり食事もできる。自動販売機で冷たい飲み物を買って、茶屋のベンチで一休みだ。眺めもよく、風も気持ち良く、つい長居しそうなので気を付けよう。
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顔振峠から次の傘杉峠へ向かう途中の上りにこんな標識が立っていたよ。“上り急勾配”とだけ書いてあるが、何%かの標示がない。こんな標識もあるんだね。たしかに急勾配だ。しかし、トウクリップのおかげで引き足が使えるから案外ラクに上れたよ。
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急勾配の後少し下って、ほどなく傘杉峠に着いたよ。ここからも黒山三滝へ降りていく山道があるね。
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眺めはないけれど、峠の小さな広場には風もなく気持ちのいい日差しが溢れていたので、ここでお昼にしたんだ。アンパンもちゃんと買ってきたよ。アンパンは自転車旅のひとつの楽しみになったんだ。
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傘杉峠からまた上って行くと、道がカーブしているところに小さな展望台があったよ。黒山展望所と書いてある。いい眺めだね。
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じき花立松ノ峠だよ。奥武蔵グリーンラインはアップダウンが多いから結構つらいね。
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峠の道標だよ。奥武蔵グリーンラインをたどってくると、峠に辿り着いたという感じはあまりしない。上り坂の途中だからかね。道票があるからここが峠だとわかるよ。
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峠は黒山三滝へ降りて行く林道猿岩線の分岐点だ。ここは左を上って行くよ。
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10分ほどで高山不動尊、関八州見晴台入口があるところに着いた。茶屋でもあったのかこんな休憩所があるよ。
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ここからの眺めもなかなかのものだ。
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道には小枝が散乱している。先日の台風が残したものかね。
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ううん、いい眺めだ。だいぶ上ってきたね。じき飯盛峠だな。
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ほら、見えてきたよ。たぶんここが飯盛峠なんだろうな。
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やっぱりそうだったよ。でも、何もない峠だね。緑に包まれていて展望もないよ。
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さあ、次はぶな峠だ。
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10分ほどでぶな峠に着いた。ここも道標以外に何もないよ。道票がなかったら峠だとは気がつかないね。
この辺りは峠から峠へはそれほど距離がない。15~20分間隔で峠を過ぎる。
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刈場坂峠はもう近い。ここも小枝が散乱しているよ。雰囲気のいい林道だなあ。
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着いた。どんな絶景が待っているだろ。楽しみ、楽しみ。
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やあ、きれいだなあ!いいなあ!やっぱり奥武蔵グリーンラインのハイライトの峠だね。すばらしい展望だよ。ずっとここにいたいね。奥武蔵グリーンラインを走るなら、この刈場坂峠は絶対に外せないね。決まり文句で言うなら、刈場坂峠を語らずして奥武蔵グリーンラインは語れないよってとこかな。ほんとに来てよかった。
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後ろ髪を引かれるように刈場坂峠を後にしたよ。もうすぐ4時になるからね。次の大野峠に着いたら、その先をどうするか考えよう。大野峠からそのまま芦ヶ久保または横瀬へ下るか、それとも高篠峠、白石峠、定峰峠と進むか。
大野峠が見えてきたよ。刈場坂峠からはそれほどかからなかったね。途中に七曲り峠があったはずだが気がつかずに通り過ぎちゃったよ。ちょっと残念だね。
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大野峠だ。標高855m。ここが奥武蔵グリーンラインの最高地点だよ。3時45分だ。暗くなるまでにはまだ時間がある。…よし、全ての峠をクリアするぞ。
そうと決めたら、なんだかとても嬉しくなってきたよ。奥武蔵グリーンラインを走り切ることができるんだ。上り始める時は自信がなかったけれど、どうやら行けそうだよ。刈場坂峠から大野峠までのかかった時間を考えると白石峠まではたいしてかからないだろう。
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途中の高篠峠だ。道票の下の方に、半分草に隠れているが確かに峠の表示があるよ。
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西日に影が伸びてきたよ。だんだん心細くなってくるよ。頑張ろう。
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下って上って間もなく白石峠に着いたよ。4時10分だ。峠には小さなあずま屋とベンチがある。この峠はときがわ町から上ってくるコースがヒルクライムで有名らしい。
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久しぶりに見る熊出没注意の表示だ。あまり見たくない表示だね。
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ここまで来ればもう安心だ。暗くなる前に西武秩父駅に辿り着けるだろう。あとは下るばかりだよ。最後の定峰峠も下りの途中だよ。
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急勾配をどんどん下って行くよ。下りは速いなあ。
あっという間に定峰峠だよ。平日で茶屋は締まっているね。それとも時間が遅かったのかな。全く人の気配がないよ。静かでいいといえばいいがね。
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さあ急ごう。奥武蔵グリーンラインの最後の峠を後にしたよ。ああよかった。走り切ることができそうだね。夕暮れの秩父の町並みが見えるよ。
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あとはどんどん下って行くばかりだ。頑張ったご褒美の下りだ。しかし、どんどん下って行くにつれて寂しさがあふれてくる。旅の終わりが近づいてくるからだよ。またひとつ、みみ爺の旅が終わるんだ。
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定峰の集落だ。これからくだって行く道が下の方に見えるよ。
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恐ろしい急勾配の下り坂だね。
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坂道の途中のベンチで一休みだ。ほっとするひと時だよ。
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さらに下りは続く。
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定峰川だ。川に沿って下るよ。
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定峰橋だ。
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定峰橋の下の堰堤だよ。
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さあ、あとは西武秩父駅に向かってまっしぐらだ。
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武甲山が痛々しい姿で夕日の中にそびえているよ。傷だらけで痛々しいけれど、さすがに存在感のある山だね。
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西武秩父駅に5時30分、無事到着だよ。お疲れさん。ほんとに楽しかったよ。また走りたいコースだね。西武秩父側から上って、大野峠から下り基調で辿るのもいいかもしれないな。…いつかきっと。
奥武蔵グリーンラインの12の峠
一本杉峠(449m)、顔振峠(502m)、傘杉峠(552m)、花立松ノ峠(630m)、飯盛峠(770m)、 ぶな峠(766m)、刈場坂峠(818m)、七曲がり峠(802m)、大野峠(855m)、高篠峠(748m)、白石峠(821m)、 定峰峠(616m)
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いよいよ奥武蔵グリーンラインにやってきたんだ。この奥武蔵グリーンラインは、知ってのとおりとても有名なサイクリングコースだよ。たくさんのサイクリストが訪れているらしい。
台風が去って、日本列島は数日ずっと秋晴れの日が続いている。今日もまた、家を出た早朝の空は真っ青で、雲の姿がどこにも見当たらなかったよ。外気は肌寒いくらいの涼しさで、すっかり秋を感じさせるね。8月のあの死ぬほどの暑さはもうやって来ないだろう。そのかわり日がほんとに短くなった。それはとても寂しい。夏は暑い。でも日の長い夏は大好きだ。遠くまで出かけられるし、遅くまでペダルをこげるからだよ。
みみ爺の住んでいるところからは、山のあるところまでは遠いいんだよ。秩父や奥多摩へ出かけて行くには、電車に乗って最低でも2時間半以上はかかるんだ。家の近くには山なんか無いんだよ。平らな道ばかりなんだ。平らな道ばかり走っていてもちっとも面白くない。すぐに飽きてしまうよ。
通勤時間帯の混みあった地下鉄を乗り継いで、やっと池袋に着いた時にはすっかり日は高く上っていた。西武池袋線の急行に乗って飯能まで行き、そこから西武秩父行の各駅停車に乗り換えて2つ目の高麗に降り立った時は8時半だったよ。さあ急いで自転車を組み立てなければとすこし焦った。
高麗本郷のT字路の近くにあるサイクリスト御用達のセブンイレブンで水とアンパンを買いこみ、出発だよ。いい旅になりますように。無事に奥武蔵グリーンラインを走り切れますように。…ここから鎌北湖まで、10kmの道のりだ。車の多そうな道もすこしだけ走らなければならないが、気を付けて行こうかね。
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出発して間もなく左手に高麗神社が現れた。
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そのすぐ隣にある茅葺屋根の高麗家は江戸時代初期を代表する民家として国の重要文化財に指定されているんだと。山を背にして静かなたたずまいだね。こんな茅葺屋根の家で余生を過ごしたいもんだ。
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しばらくは高麗川に沿ってつかず離れず進んでゆくが、流れはほとんど見られない。車もさほど多くなく快適だ。青空とキラキラした秋の日差しがたっぷりあふれているよ。こんな日に自転車に乗れるのは本当に幸せだ。
しかし、やがて車の多い県道30号に出て進むことになるんだ。絶えず後ろから迫ってくる車のエンジン音に緊張しながら、ハンドルを握る両手に力が入るよ。大型トラックも頻繁に追い越して行く。何度走っても車の多い道は嫌だね。ガソリンの値段がめちゃくちゃ高いから、車なんか使わなけりゃいいのに。…そんなわけにもいかねか。
埼玉医科大国際医療センターの先で県道30号は2つに分かれているよ。地図ではどちらも県道30号と書いてある。ちょっと古い地図には右の道は出ていない。右のひろい道は新しくできたようだね。ここを左の方へ進む。車がぐっと減ったよ。ああよかった。
さらに5~600mほど先の信号を毛呂山総合公園の方へ左折するんだ。そして県道186号に合流してすぐ、左の遊歩道へ入るよ。
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民家や畑の中の、静かな里の小道をのんびり行く。青空があり緑の山があり赤とんぼが飛んでいるよ。これをのどかな風景と言わないで何と言うだろう。
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遊歩道はやがて舗装が途切れ山道に変わる。手前で右に折れ、再び県道を行くことにするよ。山間の田んぼは実りの秋だ。黄色く色づいた稲穂がまぶしいね。
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鎌北湖の手前5~600mはちょっと急な上り坂だ。路面の滑り止めでそれがわかるね。いよいよ山の中に入って行くよ。車はほとんど通らない。日差しもそれほど暑くはない。緑の中を淡々と上って行く。
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ほどなく鎌北湖に到着したよ。深い緑の湖面は波もなく、秋の日差しを浴びて光っている。山の中の静かなダム湖だ。湖の上をたくさんの赤とんぼが飛んでいるよ。湖畔にMTBの若い2人がのんびり休んでいるほかに人影はなかった。平日だからね。蝉の声がしきりだ。傍らでは秋の虫も鳴いているよ。
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静かな湖畔をあとにして、道はいよいよ林道に入るよ。きつい上りが待っている。意を決し、ペダルに足をかけて出発だ。さて、峠をいくつクリアできるか。
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上り始めたが、林道は涼しく、それほどつらくはなかったよ。林道はやっぱり気持ちがいいねえ。
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山の景色を眺めながらペダルを踏んでいると上りのつらさをつい忘れてしまう。どんどん高度があがって行くよ。山はいいなあ。
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途中林道清流線の分岐点があった。通行止めになっている。こちらから上って来なくてよかったよ。
林道権現堂線起点の標識が立っているけれど、鎌北湖から上り始めたところにも標識があったなあ??ここは林道中野線への分岐点でもあるよ。
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もうすぐ北向地蔵だ。この辺りは杉よりもヒノキが多いのかな。杉とヒノキはその姿が似ているけれど、よく見ると葉っぱや幹が違うんだね。恥ずかしながら最近区別がつくようになったんだよ。綺麗な杉やヒノキの林の中を抜けてくる風はとても涼しいんだ。
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北向地蔵だ。この辺りの標高はおよそ400m。旅の無事をお願いして手を合わせたよ。
さっき鎌北湖の手前の遊歩道の入口あたりで、そのまま県道を上って行ったMTBの老人が先に着いて休んでいたんだ。訊くと、この下に住んでいる方で、毎日ここまで上ってきて戻って行くそうだよ。
「健康のためにはちょうどいい上りですね」
自分の家の近くにもこんないいところがあったらなと、ちょっとうらやましい。
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しばらく杉やヒノキの木陰を行く。
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北向地蔵からは高度7~80mほど下るんだ。下りは気持ちがいいけれど、ちょっと下りすぎるよ。
しこたま下った後はまた上りだ。一本杉峠までの上りだよ。
前方に大きな岩が現れた。緑の中に思わず目を引く巨大さだ。天文岩というそうだよ。
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天文岩の横にある小さなお堂だ。小さいが立派な作りで趣があるね。
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天文岩からほどなく、また大きな岩が現れたよ。迫力あるなあ。
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またしばらくはゆっくりと上って行くよ。上りはきついけれど、涼しいからいい。このくらいの気候がいいね。
今日はなんとか刈場坂峠までは行きたいなあ。行けるかなあ。ブツブツつぶやきながら上って行く。奥武蔵グリーンラインはほとんど上りだから、果たしてたどり着けるかどうか年寄りのみみ爺にはちょっと心配なんだよ。
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おや、ここが一本杉峠かなあ。どこにも立札が見当たらないけれど、右手に黒山三滝の方へ下る林道笹郷線の入り口があるから、おそらく間違いないだろう。グリーンライン12個の峠のうち最初の峠だよ。この後アップダウンを繰り返しながら標高を重ねて、一つ一つ峠をっ越えていくんだ。さあどこまで行けるだろかね。
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一本杉峠を過ぎると再び少し下ってまた上りだ。じき顔振峠だよ。頑張ろう。
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阿寺の集落付近だよ。山上集落のひとつだ。
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奥武蔵グリーンラインは山々の稜線をつないで続いている林道だ。そのわりに全体的に展望に乏しく、ほとんど緑の中を進む感じなんだけれど、この辺りには時々きれいな山々の眺望が現れるよ。
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道がスイッチバックのよう折り返してさらに上って行く。
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ようやく顔振峠に着いたよ。まずは奥武蔵グリーンラインのハイライトの峠のひとつに着いてほっとした。ここからは、南側に展望が開けていて、秩父の山々が眺められる。茶屋があり食事もできる。自動販売機で冷たい飲み物を買って、茶屋のベンチで一休みだ。眺めもよく、風も気持ち良く、つい長居しそうなので気を付けよう。
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顔振峠から次の傘杉峠へ向かう途中の上りにこんな標識が立っていたよ。“上り急勾配”とだけ書いてあるが、何%かの標示がない。こんな標識もあるんだね。たしかに急勾配だ。しかし、トウクリップのおかげで引き足が使えるから案外ラクに上れたよ。
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急勾配の後少し下って、ほどなく傘杉峠に着いたよ。ここからも黒山三滝へ降りていく山道があるね。
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眺めはないけれど、峠の小さな広場には風もなく気持ちのいい日差しが溢れていたので、ここでお昼にしたんだ。アンパンもちゃんと買ってきたよ。アンパンは自転車旅のひとつの楽しみになったんだ。
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傘杉峠からまた上って行くと、道がカーブしているところに小さな展望台があったよ。黒山展望所と書いてある。いい眺めだね。
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じき花立松ノ峠だよ。奥武蔵グリーンラインはアップダウンが多いから結構つらいね。
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峠の道標だよ。奥武蔵グリーンラインをたどってくると、峠に辿り着いたという感じはあまりしない。上り坂の途中だからかね。道票があるからここが峠だとわかるよ。
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峠は黒山三滝へ降りて行く林道猿岩線の分岐点だ。ここは左を上って行くよ。
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10分ほどで高山不動尊、関八州見晴台入口があるところに着いた。茶屋でもあったのかこんな休憩所があるよ。
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ここからの眺めもなかなかのものだ。
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道には小枝が散乱している。先日の台風が残したものかね。
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ううん、いい眺めだ。だいぶ上ってきたね。じき飯盛峠だな。
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ほら、見えてきたよ。たぶんここが飯盛峠なんだろうな。
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やっぱりそうだったよ。でも、何もない峠だね。緑に包まれていて展望もないよ。
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さあ、次はぶな峠だ。
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10分ほどでぶな峠に着いた。ここも道標以外に何もないよ。道票がなかったら峠だとは気がつかないね。
この辺りは峠から峠へはそれほど距離がない。15~20分間隔で峠を過ぎる。
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刈場坂峠はもう近い。ここも小枝が散乱しているよ。雰囲気のいい林道だなあ。
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着いた。どんな絶景が待っているだろ。楽しみ、楽しみ。
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やあ、きれいだなあ!いいなあ!やっぱり奥武蔵グリーンラインのハイライトの峠だね。すばらしい展望だよ。ずっとここにいたいね。奥武蔵グリーンラインを走るなら、この刈場坂峠は絶対に外せないね。決まり文句で言うなら、刈場坂峠を語らずして奥武蔵グリーンラインは語れないよってとこかな。ほんとに来てよかった。
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後ろ髪を引かれるように刈場坂峠を後にしたよ。もうすぐ4時になるからね。次の大野峠に着いたら、その先をどうするか考えよう。大野峠からそのまま芦ヶ久保または横瀬へ下るか、それとも高篠峠、白石峠、定峰峠と進むか。
大野峠が見えてきたよ。刈場坂峠からはそれほどかからなかったね。途中に七曲り峠があったはずだが気がつかずに通り過ぎちゃったよ。ちょっと残念だね。
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大野峠だ。標高855m。ここが奥武蔵グリーンラインの最高地点だよ。3時45分だ。暗くなるまでにはまだ時間がある。…よし、全ての峠をクリアするぞ。
そうと決めたら、なんだかとても嬉しくなってきたよ。奥武蔵グリーンラインを走り切ることができるんだ。上り始める時は自信がなかったけれど、どうやら行けそうだよ。刈場坂峠から大野峠までのかかった時間を考えると白石峠まではたいしてかからないだろう。
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途中の高篠峠だ。道票の下の方に、半分草に隠れているが確かに峠の表示があるよ。
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西日に影が伸びてきたよ。だんだん心細くなってくるよ。頑張ろう。
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下って上って間もなく白石峠に着いたよ。4時10分だ。峠には小さなあずま屋とベンチがある。この峠はときがわ町から上ってくるコースがヒルクライムで有名らしい。
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久しぶりに見る熊出没注意の表示だ。あまり見たくない表示だね。
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ここまで来ればもう安心だ。暗くなる前に西武秩父駅に辿り着けるだろう。あとは下るばかりだよ。最後の定峰峠も下りの途中だよ。
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急勾配をどんどん下って行くよ。下りは速いなあ。
あっという間に定峰峠だよ。平日で茶屋は締まっているね。それとも時間が遅かったのかな。全く人の気配がないよ。静かでいいといえばいいがね。
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さあ急ごう。奥武蔵グリーンラインの最後の峠を後にしたよ。ああよかった。走り切ることができそうだね。夕暮れの秩父の町並みが見えるよ。
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あとはどんどん下って行くばかりだ。頑張ったご褒美の下りだ。しかし、どんどん下って行くにつれて寂しさがあふれてくる。旅の終わりが近づいてくるからだよ。またひとつ、みみ爺の旅が終わるんだ。
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定峰の集落だ。これからくだって行く道が下の方に見えるよ。
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恐ろしい急勾配の下り坂だね。
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坂道の途中のベンチで一休みだ。ほっとするひと時だよ。
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さらに下りは続く。
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定峰川だ。川に沿って下るよ。
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定峰橋だ。
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定峰橋の下の堰堤だよ。
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さあ、あとは西武秩父駅に向かってまっしぐらだ。
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武甲山が痛々しい姿で夕日の中にそびえているよ。傷だらけで痛々しいけれど、さすがに存在感のある山だね。
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西武秩父駅に5時30分、無事到着だよ。お疲れさん。ほんとに楽しかったよ。また走りたいコースだね。西武秩父側から上って、大野峠から下り基調で辿るのもいいかもしれないな。…いつかきっと。