のみ と しらみ
の 「おめぇのほうにもいろいろあるだろう?」
し 「ああ、俺ァほんの二,三日前よ、あぶなくいのちびろいをしたばかりよ」
の 「へえ、どうしたい?」
し 「まァ、きいてくれ。湯ゥ屋でひょいと取っついた着物の女がよ、随分色の白い、餅肌のいい女だ」
の 「うまくやりやァがったな。で、どうしたい?」
し 「上のほうから下のほうへと、だんだん這ってゆくてえと、やがて草むらん中へ入り込んじゃった。草むらてえより、ありゃァ森だな・・・」
の 「ほう、ほう・・・」
し 「森をやっとこさ抜けて、しばらく行くてえと、こんだァ沼みてえなところへ出て、
そこから生あったかい水みてえなものが、ペチャペチャと出ているんだ・・・」
の 「ほう、ほう・・・」
し 「そこを渡るにゃァ、俺の体じゃ広すぎる。でも土手あるから、さて、右回りにしようか左回りにしようかと、
考えてるところへ、おめえ!」
の 「急に大きな声をしたな、どうしたい?」
し 「そこへ、大入道だ。物凄い大入道が、いきなり立ちゃァがって、
頭から体ごとその沼の中へ、『こんにちは』も言わねえで、ズブッと突っ込んで来やがった。
いやァ、おどろいたのなんの・・・。入ったと思ったら、こんどはすぐもどって来やがった。
入ってもどって、入っては出る・・・そんなことをしばらくくりかえしているうちに、沼の水かさがドーッと増して来た」
の 「洪水だな、そりゃァ。逃げねえと危ないぜ」
し「逃げようと思ってもおめえ、水で足ァ取られる、体ァ押し流される。
おまけにこちとらァ、泳ぎは苦手と来てるから、水の中でアップアップ・・・。
こりゃァ、とてもダメだ、神さま仏さまとおがんだ途端・・・・」
の 「どうしたい?」
し 「うん、紙(神)のおかげで、助かった」
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