都内では渋谷と新宿のみの公開。
かつてはボクシングのアジア大会銀メダリストだったカン・テシクは今は負け犬の生活。生きるために殴られ屋として街頭に立つ。
(1万ウォンで男性は1分、女性は2分と書いてある)
俳優チェ・ミンシクはこういう役をやらせるとピカイチ。生きることに疲れてヨレヨレな人生。
『シュリ』で初めて観たときはそれほど印象に残りませんでした。日本の劇画をもとにした映画『オールドボーイ』で、復讐の鬼と化した主人公役が強く印象に残っています。
新宿武蔵野館に張ってあった切抜きに「ボクサーに“見える”というのじゃイヤだ」というコメントが載っていました。厳しい食事制限とトレーニングでボクサーの身体を作り上げ、撮影も一発勝負と段取りを8:2ぐらいの割合にしたとかで、試合のシーンは迫力があります。
負け犬のテシクは妻に離婚を切り出され、最愛の息子に会えなくなるのでは・・と落ち込み、人生の巻き返しのために新人王戦に出ることを決意する。
試合の相手となるのは少年院あがりのサンファン。喧嘩は強いが、少年院で喧嘩した相手にしたたかにやられ喧嘩とボクシングは違うと初めて気付く。このサンファンにもこのままではいけないという思いがあるのです。
試合当日まで2人が絡むシーンは一切ありません。40歳、盛りを過ぎたボクサーと19歳、やり直しの期待を込めたボクサーの6回戦。1ラウンド目のゴングが鳴ります。
6ラウンド目開始のゴングが鳴ったとき、客席にはテシクの別れた妻と息子、サンファンの身体の不自由な祖母が会場に現れます。
どちらも負けられない。どちらにも勝たせてあげたい。殴り殴られるゲームのどこが面白いのか、まったく男って・・・と思いながらも、それぞれに背負った人生を知っている私たち観客は、両者を応援せずにはいられません。
息子役のイ・ジュング。泣きの演技が達者です。韓国は子役もウマイ。
試合の結果は、そうだろうなぁと納得できるものでした。サンファンがリングを降りて祖母の元へ行き、やさしく抱きしめる。喧嘩とカツアゲの日々よ、さようなら・・・ですね。
◆公式サイト ⇒ 過去と闘え、未来と闘え。 『クライング・フィスト』