フランス・イタリア・ベルギー・日本合作。原題『L’ENFER』(地獄)
美しい3人の姉妹と、その母親の愛の物語。
長女は結婚して子供が2人いるが、夫が浮気をしている。次女は男性との関係がうまく築けない。三女は、友人の父親であり大学の恩師でもある男性と不倫中。母親は今は施設に入っているが、かつて、姉妹の父親であり自分の夫でもあった男性を死に追いやる。
長女は結局、夫を追い出すのですが、いざ決心するまでにものすごく苦しみます。愛の深さゆえの身を切るような苦しみなのですが、一度別れることを決心するとそのあとはまったく躊躇しません。
次女は、見知らぬ青年に付きまとわれ恋の予感もあるのですが、実はその青年は自分たちの父親を死に追いやる原因となった人物だったのです。
ゲイであるため、恋の相手にもなりませんでした。謝る青年に「自分は夢見がちだから・・・」と静かに立ち去ります。
三女は不倫相手の恋人から別れを告げられた後、妊娠に気付きます。産婦人科の待合室で手にした新聞で、恋人の事故死を知ります。
------------------------------
次女は幼い頃、父と裸の少年が2人でいるところを見てしまったことがありました。母はそんな父を告発し、父は刑務所に入ります。
出所した父が家に戻り、娘たちに会いたいというのを、母は絶対に会わせず、絶望した父は窓から身を投げて死んでしまいます。この場面の夫婦喧嘩がすさまじかった。男対女ではなく、男対男のようでした。
見知らぬ青年は、その“裸の少年”だったんですが、青年の告白で父にはまったく罪はなく、母の誤解であることがわかったのです。次女は長女と三女にもこの事実を伝え、母に会いに行こうと提案します。
映画の中という虚構の世界だからかもしれないけど、三女は大学生なのにオトナの女性を感じさせる。普通はこうあるべきなんだろうな。
三人姉妹はそれぞれお互いに干渉しないし、長女は次女の住まいさえ知らない。ベタついた関係がまったくないんですね。
母を訪ねた3人は「パパを誤解していた。告発は間違いだった」と母に告げるのですが、母親は少しの迷いもなく「それでも私は何も後悔していない」と答えます。
長女は離婚を後悔していないし、次女は恋人がいなくてもちっともアセらない。三女は自分の意思で子供を生む・・・んじゃないかと思う。何より母親の「何も後悔していない」という言葉に女の強さを感じました。
大学生の三女が選んだ試験のテーマは「王女メディア」。夫の裏切りを知ったメディアは、夫への最大の復讐として愛する我が子を殺す・・・有名な話ですよね。3姉妹の母親は、出所後娘たちに会いに来た夫に頑ななまでに会うことを許さなかった。夫に対して精神的に娘たちを殺したわけです。
しかし、もう一度振り返ってみて思いました。
「何も後悔していない」・・・そう思わなければ今、この場で崩れ落ちてしまう・・・母親はそう思っていたのかもしれないなって。