トランプ氏は選挙中から、不法移民の大規模な強制送還や関税の引き上げを実施すると
繰り返してきた
【ワシントン=八十島綾平】
第2次トランプ政権が20日発足し、スローガンの「MAGA(米国を再び偉大に)」の実現に向け初日から数十本の大統領令に署名する見通しだ。
全世界一律の関税導入に向けた措置や、不法移民の強制送還など公約の有言実行をめざす。
トランプ氏は、就任2日目も合わせるとおよそ100本の大統領令に署名するとみられている。
実際に署名すれば、就任1年目の署名数としてトルーマン大統領以来100本を超える。初日の署名数も少なくとも戦後では最多となる。
各国の注目度が大きいのが関税に絡むものだ。
トランプ氏は不法移民や違法薬物の密輸問題を理由に、カナダとメキシコに25%の関税を課す大統領令に就任初日に署名すると明言してきた。
不法移民の流入などを理由に国家経済の「緊急事態」を宣言したうえで関税を引き上げる可能性がある。
緊急事態宣言を根拠に関税を引き上げればニクソン大統領以来となる。
メキシコに対しては旧北米自由貿易協定(NAFTA)を通じた関税撤廃によって、米国から自動車などの製造業が流出したことへの強い不満がある。
中国にも10%の追加関税をかける案を選挙後に明らかにした。もともとは60%の関税を課すことを公約にしていた。さらなる引き上げをちらつかせながら「ディール外交」を迫る可能性がある。
不法移民問題でも厳しい措置を講じる。「就任初日、史上最大の強制送還作戦を開始する」と演説のたびに約束してきたトランプ氏は、不法移民を排除するための大統領令を出す見込みだ。米軍の活用も視野に入れる。
国内に1100万人いるとされる不法移民のうち、少なくとも数百万人は強制退去の対象になる可能性が高い。
米主要メディアは17日、就任翌日から米移民税関捜査局(ICE)がシカゴで大規模な強制送還作戦を実施すると報じた。
シカゴは不法移民に寛容なサンクチュアリ・シティー(聖域都市)の一つとして知られる。
バイデン政権時代から振り子が大きく反対側に振れそうなのがエネルギー・環境分野だ。
トランプ氏は現行の厳しい燃費基準を、事実上の「電気自動車(EV)の義務化」だと選挙中から度々批判していた。燃費基準を大幅に緩和する。
「ドリル・ベイビー・ドリル(掘って掘って掘りまくれ)」の掛け声のもとで、バイデン政権時代に認められなかった化石燃料の開発の許認可を拡大する。
第1次政権時代に脱退し、バイデン政権が復帰したパリ協定から再び脱退する。国内の自動車やエネルギー産業に対し、環境保護より事業拡大を優先する姿勢を訴える。
規制緩和と対を成す施策として、官僚主義の打破も第2次トランプ政権の目玉となる。かねてから就任初日に官僚を大量解雇できるようにする大統領令に署名すると明言してきた。
第1次政権末期に自ら署名した大統領令を復活させて、重要政策に関わる官僚ポストを「スケジュールF」と呼ばれる新設の政治任用枠に置き換える。スケジュールFのポストは公務員の雇用保障の対象外になる。
米国の政権交代のたびに多くの政治任用者が入れ替わってきた。一方、雇用が保障されている官僚のポストが一定数あることで、政策の継続性を保ってきた面もある。
官僚の大量解雇に踏み切れば行政の執行が混乱する可能性がある。
小山堅日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員
ひとこと解説
いよいよトランプ2.0が正式に始まる。
就任初日に、どのような方針が正式に示され、大統領令が発出されるのか、大いに注目したい。
事前の予想通り、エネルギーや気候変動分野でも、MAGA実現とそのためのアメリカ第1主義の追求という文脈で、様々な政策が一気にスタートすることになるだろう。
日本は日米同盟を重視する基本スタンスを踏まえつつ、エネルギー協力をどのように立案し具体化するか、十分な備えとアクションが必要である。
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日経記事2025.1.19より引用