飲食店で大統領討論会を見つめる有権者(27日、米西部アリゾナ州)=AP
米民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ前大統領が対決した27日のテレビ討論会は互いに90分間批判し合う展開となった。
互いに「嘘つき」「重罪人」と呼び合い、肝心の政策論争はかみ合わなかった。
「高インフレ」責任論も空回り
「インフレは我々の国を滅ぼす」。トランプ氏は討論会の冒頭からたたみかけた。世論調査によるとバイデン政権の経済政策、特にインフレへの対応は評価が低い。
消費者物価上昇率は2022年の9%から直近24年5月の3%台まで鈍ったものの、価格が下がるわけではない。消費者にとってスーパーに並ぶ食品は高値のままだ。
「政権を引き継いだときに経済はすでに崩壊していた」。バイデン氏は21年1月の新政権発足時を振り返ったが、トランプ氏は「(バイデン氏に)引き継いだ時に9%のインフレはなかった」と反論した。
バイデン氏が医薬品の価格低下など、これまで訴えてきた実績を繰り返した。米メディアにはインフレ対応で新たに発信するとの予測もあったが、肩すかしとなった。言葉に詰まる場面もあり、議論は序盤から空回りした。
司会の質問無視、「移民問題」で持論展開
トランプ氏はしばしば司会の質問を無視し、「攻撃材料」である不法移民問題を持ち出した。
南部国境における不法入国の急増は23年後半から政治問題化した。共和支持者だけでなく民主支持者からも犯罪の増加などを懸念する声がある。
トランプ氏は「我々は歴史上もっとも安全な国境をつくっていた」と胸を張り、バイデン氏が国境を「開けっぱなし」にしたと糾弾した。
「南米や中東だけでなく、世界中のあらゆるところからテロリストがやってくる」と挑発的に話すトランプ氏に、バイデン氏は「裏付けるデータはない。大げさに、ウソをついている」と怒りをあらわにする場面もあった。
バイデン政権も国境警備強化に取り組み、上院で超党派法案の合意までこぎ着けた。トランプ氏が「いま合意すれば極左の民主党への贈り物になる」と反発したため、法案が成立しなかった経緯がある。
バイデン氏は6月、議会を通さず難民申請を大幅に制限する大統領令を出した。討論会で一連の経緯を取り上げたが、討論会のルールで発言の回数が制限されていることもあり、トランプ氏が法案成立を阻んだ責任を追及するまでには至らなかった。
有罪評決のトランプ氏「悪いことしていない」
バイデン氏はトランプ氏の大統領としての資質を問いただそうとした。
21年1月の連邦議会議事堂の襲撃事件を巡りトランプ氏は「(議会襲撃事件当日の)1月6日には不法移民はいなかった。税負担も低かった」といきなり話をそらした。
司会者に改めて問われ「私は平和的に、愛国的に(抗議活動をしてほしい)と言ったのだ」と答え、自分は止めようとしたと主張した。バイデン氏はトランプ氏が襲撃を止める努力を何もしなかったと非難した。
トランプ氏は不倫口止め料を巡る裁判で受けた有罪評決について司会者から問われたが、バイデン氏の次男が銃を不法に購入・所持して有罪評決を受けたことに話を変えた。
トランプ氏はさらに「私は何も悪いことをしていない」「ポルノ女優と性的関係をもってなどいない」と否定した。一連の裁判は政治的に仕組まれたものだとの従来の主張を繰り返した。
(ワシントン=高見浩輔、八十島綾平)
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日経記事2024.06.28より引用
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