半導体装置大手の10〜12月期売上高予想は2桁増収が目立つ
(写真は東京エレクトロンの製造装置)
世界の半導体製造装置大手10社の2024年10〜12月期(一部24年11月〜25年1月期)は全社が前年同期比で増収となる見通しだ。
生成AI(人工知能)向け半導体への投資が旺盛で、強気の見方が目立つ。一方で中国の投資一巡は売り上げの減少要因となる。
米トランプ次期政権による対中規制の動向も警戒され、株価は弱含む。
会社予想(中間値)や市場予想の平均を集計した。10〜12月期は東京エレクトロンなど8社は1〜3割の増収が見込まれている。
7〜9月期は21年10〜12月期以来、11四半期ぶりに全社が増収だった。米アプライドマテリアルズ(AMAT)と蘭ASMインターナショナル(ASMI)を除く8社が増益だった。
業績をけん引するのは生成AI関連だ。産業や自動車向けの需要回復の鈍さを補う。
東エレクの10〜12月期の売上高は市場予想平均(QUICKコンセンサス)で3割増える見通しだ。
生成AIの開発・運用に使うサーバー向けに装置需要が拡大する。AI搭載型のパソコンや、スマートフォン向け需要を見込んだ先行投資も活発だ。
同社はウエハーに回路を作る前工程向け装置について、24年の世界市場を前年比約5%増の1000億ドル強、このうちAI関連の投資比率を30%と見込む。
AMATは24年11〜25年1月期の売上高が71億5000万ドル(約1兆1000億円)前後と、中間値で前年同期比7%増を見込む。
生成AIの駆動に必要な広帯域メモリー(HBM)向けなどの需要が増える。
メモリーメーカーが投資を加速しており、「HBMの需要は約30%の成長率で増加する」(ブライス・ヒル最高財務責任者=CFO)と強気の姿勢を見せる。
生成AI関連の需要は裾野が広がってきた。米KLAは複数の半導体を1つの入れ物に収める「先端パッケージング」向け装置の顧客採用が拡大する。
AI半導体に欠かせない特殊な工程で、リチャード・ウォレス最高経営責任者(CEO)は関連売上高が「24年に5億ドルを超え、25年も引き続き成長すると確信している」と話す。10〜12月期は中間値で19%の増収を見込む。
AI関連以外の技術革新も成長につながりそうだ。25%の増収を見込むASMIは、新たな半導体構造「GAA(ゲート・オール・アラウンド)」を「25年における最も重要な原動力」(イシェム・ムサードCEO)とみなす。
動作速度を高めつつ電流の漏れを効率的に抑制できる技術だ。関連売上高が25年に大幅に増加するとにらみ、同年の売上高予想の下限を32億ユーロと従来から2億ユーロ引き上げた。
業績が拡大する半面、株価は軟調だ。24年9月末と比較すると足元の株価はAMATや蘭ASMLホールディングが1割安にとどまる。
主力市場の中国の投資減少や、米国の対中規制強化が業績を下押しするとの懸念が台頭。短期筋を中心に売りが広がってきた。
中国は半導体の内製化が活発で、ASMIを除く装置大手9社の中国売上高(一部装置事業)の合計は24年7〜9月期まで5四半期にわたり100億ドル程度で推移してきた。
中国の比率も2年前の2割強から4割程度まで高まった。ただ4〜6月期は39.9%、7〜9月期は37%と対中規制をにらんだ前倒し投資が落ち着き、ピークからは低下した。
25年1月に発足する米国のトランプ次期政権下では、さらに規制が強まる恐れもある。バイデン政権は先端半導体向け装置の対中輸出を制限する。
今後、現在は輸出可能な古い世代の装置も規制の対象に追加される可能性がある。中国側も、半導体の新興メーカーは設備の新設が一巡し、今後は製品の歩留まりの改善を優先させるとみられる。
こうした要素が重なり、10〜12月期以降は売り上げの中国比率が一段と低下しそうだ。
東エレクは24年10〜25年3月期に、7〜9月期の41%から30%台半ばまで下がるとみる。
ASMLは、比率が足元の5割から25年には2割まで低下すると予測する。ロジャー・ダッセンCFOは「中国では受注残が減っている。輸出規制の議論の激しさによって慎重になっている」と話す。
市場では「25〜26年のAI半導体向け投資は相当な活況が予想され、中国の減少分を吸収する可能性がある」(楽天証券経済研究所の今中能夫チーフアナリスト)との声も上がる。
一方、大和証券の柴田光浩シニアストラテジストは「中国の減少が実際にどの程度か25年1〜3月期の実績が確認できるまで、装置株には手が伸びづらい」と指摘する。
(湯浅鏡花)
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日経記事2024.12.04より引用