ヒロセ電機の郡山工場(福島県郡山市)
コネクター大手のヒロセ電機株が高値圏で推移している。スマホ向け電子部品が好調で2025年3月期の連結業績予想を上方修正し、市場ではさらなる上振れの予想も出ている。
もう一つの柱である産業機器向けでは市況の回復が遅れており、今後好調を維持できるかが株価の方向性を左右しそうだ。
「スマホ向け部品を中心に上期(24年4~9月期)は想定を上回る伸びだった」。11月6日、ヒロセ電機の鎌形伸専務はオンライン決算説明会でこう話した。
25年3月期の純利益見通し(国際会計基準)は前期比13%増の300億円と、従来予想(同6%増の280億円)から20億円上方修正した。4〜9月期の純利益は前年同期比39%増の175億円に達し、高い進捗率を踏まえて通期予想を引き上げた。
スマホなど電子機器の内部に組み込むコネクターでは小型・高性能化が進んでおり、専業大手のヒロセ電機への引き合いが強くなっている。
北米メーカーの新型スマホ向けの納入などもあり、7〜9月のスマホ・携帯端末向け売上高は前年同期比37%増と大きく伸びた。
株式市場では4〜9月期実績に対して通期予想の修正幅が控えめとして、もう一段の上振れを予想する見方が出ている。
営業利益ベースでみると25年3月期の市場予想平均(QUICKコンセンサス、11月7日時点)は404億円と、会社予想の380億円を大きく上回る。SMBC日興証券の王バージニアアナリストは「下期計画は保守的に立てられているが、会社計画を上振れる余地はある」とみる。
足元の株価は1万8000円台前半で推移する。11月1日の決算発表後に材料出尽くしから下げる場面があったが、その後は反発し、決算発表前の水準をほぼ回復した。
電子部品大手でさえない決算も目立ったなかで、業績の好調さが見直されて下値で買いが入った側面がある。
ただ、22年9月につけた直近高値(2万890円)にはまだ距離がある。
さらなる成長にはスマホ向け以外の売り上げ拡大が欠かせない。5月に発表した中期経営計画では、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」向けに需要が伸びる産業機器市場や、電動化や自動運転の普及でコネクターの搭載点数が増える自動車向け市場を開拓する方針を示した。
中計最終年度の28年3月期に売上高2300億円、売上高営業利益率25%以上を目指す。
24年3月期実績(1655億円、20.6%)から大きく引き上げる。大和証券の佐渡拓実チーフアナリストは「足元の業績も中計での成長トレンドに沿ったものだ」と指摘。「新規の市場開拓を実現する確度も高い」と評価する。
足元では米国のトランプ次期政権の政策や為替市場の動向など、不透明要因が増えている。
懸念されるのは産業機器向けの回復の遅れだ。中国の景気低迷に伴い、ファクトリーオートメーション(FA)向けなどが振るわない。
来期以降の成長の持続性も課題だ。25年3月期は新型スマホの発売で部品の需要が高まりやすかった面もある。
ゴールドマン・サックス証券の高山大樹投資調査部長は「来期以降も納入シェアを高められるか見極めが必要」と指摘していた。
(郭秀嘉)
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日経記事2024.12.04より引用