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TSMC稼働、半導体再興は熊本から 9兆円投資の口火

2024-02-25 11:14:05 | エレクトロニクス・自動車・通信・半導体・電子部品・素材産業


開所式であいさつするTSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏(24日、熊本県菊陽町)

 

世界最大の半導体受託生産会社(ファウンドリー)である台湾積体電路製造(TSMC)は24日、日本初の生産拠点となる熊本工場(熊本県菊陽町)の稼働を始めた。

2024年末までに出荷する予定だ。開所式のあいさつで創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏は「日本や世界の半導体供給網をさらに強靱(きょうじん)にする」と語った。

日本政府は国内で半導体の製造基盤を強固にする戦略を描き、TSMCの誘致が目玉だった。TSMCの進出が起爆剤となり、日本全体の半導体投資額は29年までに9兆円規模に達する見込み。日本の半導体産業の再興が熊本から始動する。

 

張氏「日本の半導体製造のルネサンスの始まり」

開所式で張氏は「私の希望であるが、半導体製造の日本におけるルネサンス(再興)の始まりと信じている」と日本の半導体産業へエールを送った。

【TSMCの強さをビジュアル解説】

「昇り龍」TSMC、NVIDIAも頼る半導体の巨人の実力


熊本の第1工場は、自動車やデジタル機器で大量の情報を高速処理する頭脳役を担うロジック半導体を生産する。国内自動車メーカーのほか、ソニーグループの画像センサー用などに供給する。



TSMC熊本工場の開所式に参加した熊本県のPRキャラクター「くまモン」(24日、熊本県菊陽町)

 

ロジック半導体を安定確保するため、熊本工場の運営会社にはソニーGが6%、デンソーが5.5%、トヨタ自動車が2%出資する予定だ。

 

 

日本、TSMCの2工場に最大1.2兆円を補助

TSMCは27年末の出荷を目指して第2工場を建設する方針だ。第2工場の投資額は139億ドル(約2兆円)を見込む。両工場の総投資額は225億ドルに達する。

経済産業省は第1工場に最大4760億円を補助する。第2工場は最大7320億円の補助額となる。日本は経済安全保障の観点から重要性を増すロジック半導体の安定確保で前進する。

開所式に寄せたビデオメッセージで岸田文雄首相は「先端ロジック半導体が生産されることは、我が国の半導体産業、ユーザー産業にとって大きな一歩」と述べた。

 


              開所式にビデオメッセージであいさつする岸田首相

 

半導体は回路線幅が細いほど性能が高まり、TSMCは微細化競争で世界の先頭を走る。

熊本工場はTSMCの台湾工場から生産技術を移植する。工業製品を制御する成熟品から、生成AI(人工知能)向けなどの先端品まで手がける一大拠点となる。

第1工場は回路線幅が12〜16ナノ(ナノは10億分の1)メートル、22〜28ナノの成熟品を扱い、第2工場では6ナノの先端品などを量産する。

国内では半導体企業がロジック半導体の微細化競争から脱落し、40ナノより微細なロジック半導体を生産できない。ロジック半導体は自動車や産業機械を操作する中核部品だが、海外からの輸入に頼る。

 

日本の半導体の世界シェア、5割から1割に低下

日本の半導体は1988年に半導体のシェアで5割を占めて世界一の実力を誇った。今や世界シェアは1割に低下し、台湾や韓国、米国の後塵(こうじん)を拝する。一敗地にまみれたのが、頭脳役を担うロジック半導体だった。

国内電機大手は2000年代にシステムLSI(大規模集積回路)と呼ばれるロジック半導体に進出し、失地回復の命運を託した。だが、米インテルがパソコンという金鉱脈の市場を米マイクロソフトと開拓したようにはいかなかった。ゲーム機やテレビに一部搭載されたほかは、新たな用途を開拓できなかった。

 

さらに半導体の設計開発と製造を分ける水平分業の流れにも乗り遅れた。各社は微細化に必要な巨額開発費や設備投資の資金をまかなえなくなり、相次ぎ先端分野から撤退した。

ロジック半導体は20年前と異なり、電気自動車(EV)や生成AI向け、金融システム、医療機器向けに不可欠な存在になっている。TSMCの熊本工場が稼働すれば、頭脳用のロジック半導体を国内で手に入れやすくなる。

 


                     TSMCはこれまで台湾に工場を集中させてきた(台湾の同社工場)

 

TSMCは1987年の設立から30年以上、台湾に工場を集中してきた。中国の台湾侵攻リスクがあるなか、TSMCは世界各国から誘致を受け、日本をはじめ米アリゾナ州やドイツでも工場建設を進める。一極集中生産から拠点分散へと戦略を転換し、日本は中核拠点の1つになる。

熊本工場の運営会社にはソニーGから半導体技術者200人が出向してTSMCから工場運営のノウハウを習得した。いまやインテルや韓国サムスン電子をしのぐTSMCの技術を吸収して、生産性向上に生かせる。

 

TSMC熊本工場、半導体・デジタル産業戦略の具現化の第1段階

TSMCの熊本工場は国が描く半導体・デジタル産業戦略の第1段階の始まりを告げる。

まず、TSMCの誘致を契機に半導体の製造基盤を強固にする。そのうえで、先端半導体を用いたデジタル機器・サービスを強化し、産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を促す。

TSMCが日本で工場を増強し、衰退した国内の半導体投資が息を吹き返しつつある。最先端半導体の国産化を目指すラピダスも、北海道千歳市で2ナノ品を27年から量産する。

 

TSMCに触発され、台湾の競合企業も日本進出に動いた。力晶積成電子製造(PSMC)も宮城県で約8000億円を投じて27年から40ナノや55ナノ品を量産する。TSMCが日本で手がけない汎用品を量産し、国内の生産基盤が厚みを増す。

ロジック半導体以外でも投資は伸びる。東芝とロームは約3800億円を投資して25年からパワー半導体を共同生産する。旧東芝メモリのキオクシアホールディングスは7200億円で岩手県と三重県の工場で記憶用半導体の先端品を25年から量産する。

 

 

22年から29年までに国内半導体工場への投資額は累計9兆円にのぼる。

英調査会社オムディアの南川明シニアコンサルティングディレクターは、国内半導体の生産能力(12インチ換算)は28年に月産226万枚と23年比で約3割増えると試算する。

 

地政学リスクの高まりや保護主義の台頭を受け、各国は産業競争力を左右する戦略物資となった半導体振興策を競う。

日本も自由競争による産業力強化に重きを置いていた政策を転換した。経済安保の観点から半導体産業の復活がかつてなく重要となったためだ。経産省は21〜23年までに4兆円の予算を確保した。半導体だけでなく、必要な部素材の量産も支援する。

(向野崚、長尾里穂、台北支局=龍元秀明)

 

 


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