ナサニエル・セイヤー(1929-2020)
Nathaniel Bowman Thayer
SAIS(ジョンズホプキンス大学高等国際問題研究大学院)・ライシャワー・センターの「シニア・アドバイザー」の座にあるのが、ナサニエル・セイヤーです。
彼は1929年、ニューヨークに生まれました。 コロンビア大学を1956年に卒業し、1960年に国務省入りしています。
日本・韓国・沖縄を回った後、在日大使館で報道官、政務担当を務めました(1962~66)。 その後は、海外勤務職(1966~67)、在ビルマ大使館勤務(1967~68)をし、ジャパン・ソサイエティの仕事に関わっていたこともあります(1967~69)。
1975年には、ジョンズ・ホプキンス大学准教授、のち同大学高等国際問題研究大学院(SAIS)アジア室長とあります。
1967年に日本の自民党に関する研究でコロンビア大学東アジア研究所から博士号を取得しました。 主著に『自民党』(1968年)があります。
日本語が堪能な知日派であり、奥さんは日本人で。中曽根康弘首相(在任1982年11月27日~1987年11月6日)の知人だったと言い。ます。 セイヤーはSAISの「中曽根康弘口座プロフェッサー」という肩書をもっています。
これは、1984年に発足したライシャワー・センターに、当時の中曽根康弘首相が、100万ドルの寄付をしたことで設置された「中曽根康弘講座」の名にちなんでいます。
同じ年の6月に中曽根首相は、当時、ジョンズ・ホプキンス大学の学長だったスティーブン・ミラー博士らの訪問を受けて、東京で同大学の名誉博士号を授与されています。
これは、ただ単に中曽根首相が100万ドルを寄付したことだけが理由だったのでしょうか。そうは思えません。
セイヤーについて、中曽根元首相が回想している文献があります。中曽根元首相が伊藤隆と佐藤誠三郎教授のインタビューに答えたオーラル・ヒストリーの集成『天地友情』(文藝春秋1996年)です。 この中で佐藤誠三郎の質問に中曽根元首相はこう答えています。
佐藤 :それで印象的だったのは、総理になられてすぐの予算委員会で、共産党の議員が「ナサニエル・セイ
ヤー教授は、中曽根さんと親しいそうだが、セイヤーというのはCIAに近い人物ではないか」と追
及したら、中曽根さんは「CIAに近いのではない。 CIAそのものである」と答えたから、その
共産党の議員はそれ以上質問できなくなった。そんなことがありましたね(笑い)。
中曽根: そうでしたね。 背イヤー教授というのはカーター政権の時にCIAの極東部長をしていあした。
最近ではエズラ・ボーゲル氏がやっていましたね(1993~95、CIA国家情報会議東アジア担当)。
それで、ホワイトハウスに月一回だったか出かけて行って、アジア情勢を説明すると言ってました。
質問はそれで終わった。
セイヤーは、中曽根とアメリカ側のつなぎ役だったのです。 アメリカはもともと、中曽根を田中角栄首相の盟友と捉えており、ロッキード事件でアメリカに失脚させられた田中角栄を眼のあたりにした中曽根は、「自分は危なくですよ」というアピールをアメリカに対してする必要があったのです。
そこでCIAを通じて、アメリカとの絆をより強いものにしようとしたのだと思われます。 この頃は、日米同盟にヒビが入りかけている時期で、中曽根首相の前任者、鈴木善幸首相に対するアメリカの評価は最悪に近いものであり、中曽根康弘が政治家としての権力基盤を固めるために、アメリカの支持を取り付けておこうとしたことは容易に想像できます。
中曽根康弘元首相こそは、アメリカべったりの属国路線を、岸信介元首相が開始したのを踏襲した政治家です。
岸信介に(安倍晋三の祖父)に関しては、「満州国は俺がデザインした」と豪語した昭和の妖怪とまで言われた政治家ですが、第二次世界大戦では鬼畜英米と戦争お煽り、敗戦でA級戦犯として巣鴨刑務所で服役していました。
満州国の盟友で、同じくA級戦犯であった東条英機が絞首刑になったのを横目に、東条と日本を裏切り、GHQに尻尾を振り、CIAのエージェントとなり、売国活動を行ってきた政治家です。 GHQにの尻を舐め、日本軍を解体したのも岸信介政権です。 これが日米安保(岸信介政権で締結)です。
そして、岸信介は本来は死刑にになるはずでしたが釈放され、戦後に日本の首相にまで上り詰めました。
セイヤー人脈は、今日もアメリカの対日研究を行う人材を育成しています。 ブッシュ政権の高官、マイケル・グリーンもここの所長代理をしていた経験があります。
(関連情報)
ジャパン・ハンドラーズ ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/bee052b51016155e76d0eed671e29139
ジャパン・ハンドラーズ ジョンズ・ホプキンス大学ー2 ケント・カルダーhttps://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/53e1c4bddaab8814da918705716a9729