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メアリー・ブレア原画展

2012-08-06 | アート
長崎県美術館で開催中の「スタジオジブリ所蔵 メアリー・ブレア原画展」に行ってきました。

「シンデレラ」「ふしぎの国のアリス」「ピーター・パン」の
イメージボード(作品全体のイメージを決めるアート)制作、
「イッツ・ア・スモールワールド」のデザインを担当するほか
絵本「わたしはとべる」や乳製品の広告イラストなどを手掛けた
イラストレーター/デザイナー/アーティストだった彼女。
そのふんわりとしてやさしく、かわいい世界は
ウォルト・ディズニーを筆頭に多くの人に愛されてきました。

しかし、その一方で、
彼女の作品がそのままディズニーアニメに反映されることはほとんどありませんでした。
ウォルトは彼女の芸術性の高さを買ってはいましたし、
それゆえに当時の男社会のアニメ会社の中でも生き残っていましたが
その芸術性の高さこそが、ウォルトの当時目指していた
「万人受け」とは相いれない部分でもあったわけで
彼女の絵はあくまで「叩き台」としての役割を超えることはなかったのです。
(短編作では中心となった作品もございますが・・・)

また、今展覧会では同じくアートを生業とし、
妻とともに入社したディズニーからTV業界に出て成功した夫、
そして二人の息子という家族を大切にする「家庭人」としての側面も描かれています。
子どもたちと過ごす時間のためディズニーを辞めてフリーに、という
エピソードがその最たるものであるでしょう。

しかし、このエピソードにも暗い裏面はあり、
ディズニーを離れたのも「自分のアイデアが反映されない」環境への不満もありましたし
夫はディズニーを辞めてなおウォルトからその才能を請われ
「イッツ・ア・スモールワールド」などを手掛ける妻の才能への嫉妬
(もともと美術学校で知り合い、お互いに画家を目指す二人でありました)から
酒に走り、荒れた生活を送るようになり、メアリー本人も酒に溺れた晩年を過ごし
(ウォルトの死後、ディズニーからの仕事も無くなり、自己作品の縮小再生産や
 裸婦と猫などの新たな方向性を模索し迷走していった部分もあります・・・)
そんな家庭環境にさらされた長男も精神を病む・・・という結末は
この展覧会だけでは見えてこないものとなっております。
(夏休みのお子様もご覧になる展覧会でそれはお見せできないだろう、とも思いますが)

そんなディズニーの光と影、の「光」の部分だけで構成されていることについて
思う所もないわけではないのですが、
現在のピクサーやドリームワークスといったアメリカアニメ界に多大な影響を与えたほか、
コマーシャルアートなどにも大きな足跡を残した彼女の肉筆原画の数々は
ぬくもりややさしさ、かわいらしさを感じさせるものであり、
彼女のデザインワークがあったからこそのディズニー黄金期であったのかも・・・
・・・特に「アリス」の不思議で楽しいだけでなく不安感や闇を感じさせるデザインが
「人畜無害の甘い作品」というイメージの強いディズニー作品に潜むダークさを
垣間見せてくれているようで、この時代のディズニーの奥深さを感じさせてくれます。

8月14日からは1Fの県民ギャラリーで岩合光昭の猫写真展も開催され、
それ以降会場が混み合うことも予想されますので
セット券を購入されている方も今週中に見に行かれれば
作品にじっくり向き合う時間もとれるかと思います。
ディズニーの闇を内包した暖かな光を、ぜひその両目で体感してみてください。
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