Rimshot!!!!

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THE HERO―アメリカン・コミック史

2015-09-29 | 
気になってはいたもののその価格で二の足を踏んでいた本が
近所の図書館に入ったので借りてきました。

1938年、大恐慌のさ中に誕生した初めての「スーパーヒーロー」、スーパーマン。
それはコミックストリップ(新聞漫画)やパルプ小説、そしてそれらが結び付いた
「コミックブック」という文化が、ひとつの結実を見た瞬間、といえるのかもしれません。

この本はそんな「スーパーマン以前」の時代から
(ドク・サヴェッジやシャドーなどのパルプ小説ヒーローへの言及も)
スーパーマンの誕生~第2次大戦によって訪れた「ゴールデン・エイジ」、
その一方でキャプテン・マーベル(現シャザムの方)を巡るDCとフォーセットの闘争や
スーパーマンの生みの親たちが歩んだ苦難について触れつつも
新ジャンルの増加によるヒーロー人気の陰りとホラーブーム、
ホラージャンルの過熱から始まったコミック撲滅運動→コミックスコードの誕生、
DCのフラッシュ、グリーンランタンの再生とマーベルのファンタスティック・フォーから始まる
スーパーヒーローの再生「シルバーエイジ」、
公民権運動の盛り上がりからの黒人ヒーロー誕生、
コミックスコードと戦うことになった、薬物などの社会問題を扱うストーリー、
「ダークナイト・リターンズ」「ウォッチメン」からの暗く重厚なストーリーの流行、
限定版商法などのコミックバブルからのイメージコミックス設立、
911を経てのヒーローの復権、そして映像技術の進化によるヒーロー映画の時代・・・と
1938年から2013年までのヒーローものを中心にした「アメリカン・コミックス」と
その周辺の歴史の概略を豊富な図版を用いて解説する研究書です。

以前紹介した「スーパーゴッズ」はあくまでグラント・モリソンという
一人のちょっとあたまがおかしいコミック作家の目から見た個人史的性格の本だったのに対し
こちらはアメリカ公共放送(PBS)のドキュメンタリー番組の副産物、として
教科書的な通史として楽しめる1冊であり、両方を読むチャンスのある方は
先にこちらを読まれてから、そのB面として「スーパーゴッズ」を読まれるとより楽しめるかと思います。

難点を挙げるとすると、ところどころに見られる固有名詞の表記の問題とか
(これは訳された人がユダヤ移民を中心にしたアメリカ文化論の専門の人だからかも)
翻訳コミックが出ているものはそちらからの翻訳文を引いてほしかった、
(「ウォッチメン」だけは小プロ版から引用されてるんですけどね・・・)
あとは価格(6000円+税!)ですが、大判・フルカラー・部数少ないなら、これは仕方ないかなぁ。

アメコミ好き、という方にはぜひ、座右の一冊として持っていただきたい一冊です。
・・・俺もそのうち買おう。

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コメント
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