映画梯子、もう1本はこちら。
公開初日朝一で見てまいりました。
(2D、吹き替え版で)
ネタバレありますので原作読んで劇場行ってね。
さて、最近ちゃんと再読もしたりと予習もして臨んだわけですが
映画のほうは
「改変もしつつ、終わってみたら原作の1/3(19章のうち6章まで)を消化してた」という
驚くほど正確なペース配分でございました。
映画としては「LotR」の続編、しかしストーリーは前日譚。
LotRで掴んだファンにも来てもらいたいから原作にいない指輪キャラを出したい、
そして映画を3部作にするには原作の尺が足りない。
そこで冒頭部から「年老いたビルボが赤表紙本を書くシーン」を挿入、
ここでフロドを出すとともに「LotR」の冒頭・・・
ビルボの誕生日パーティーの直前という時間設定も面白かったと思います。
そして冒頭でスマウグの王国襲撃を描くことでドワーフたち
(特にトーリン)の動機づけがわかりやすく伝わり、
13人もいるドワーフの見た目に差異をきっちりつけることで
キャラを立たせることに成功しています。
(戦闘シーンでは武器の違いや戦闘スタイルの違いでも区別できましたね)
そして原作との一番の差異は、原作に比べて旅がハードモードであること・・・
オークの襲撃回数や旅慣れないビルボへの周囲の扱いが原作に比べてハードで
その分ビルボの成長が早まっているようにも感じます。
前半のハイライト・人食いトロル3匹との戦いにおいては
原作ではガンダルフがそのピンチを救ってくれました。
映画でも結果的にはガンダルフの到来がピンチを救うことになるのですが
朝になるとトロルが石になることを知り、時間稼ぎを行ったのは
映画においてはビルボの活躍となっております。
そして映画オリジナル設定となる、オークの頭領・アゾクとトーリンの因縁。
原作では死人占い師(映画版では死人使い(ネクロマンサー))の囚われ人となっていて
ガンダルフに救出され死亡したトーリンの父が、
映画ではモリアの坑道での戦いでアゾクに殺され、トーリンもアゾクに深手を負わせる
(この時壊れた盾の代わりに樫の木を盾に用いたので「オーケンシールド」)という
因縁が生まれており、トーリンに斬られた腕の代わりに義手を刺し、
白い狼(アクマイヌ)にまたがりドワーフ一行を追い詰めるという
ライバルキャラとしてのキャラの立ちっぷりが作品を引き締めています。
そしてこの二人の戦いのシーンでも原作にないビルボの成長が描かれることとなり
今作のクライマックスとなっているのです。
驚かされたのがこのシーン。
原作(瀬田貞二訳・岩波少年文庫版)から引用します。
「稲光のひらめくおりに、顔を突き出してあたりをながめますと、
谷間から石の巨人たちが出てくるところで、
石の巨人たちはたがいに岩をぶつけあい、取りあい、
さては岩をやみのなかにほうりこんで遊んでいました。」(上巻117ページ)
これだけの描写の岩の巨人が、大暴れし、岩をぶつけ合い、格闘する、
しかも旅の一行はそのうち一体の両足にいる、というとんでもないスペクタクルシーンに。
この後に出てくるゴブリン王の描写も含めて、ピーター・ジャクソンと
監督予定だったものの撮影延期によって降板、脚本と制作協力となったギレルモ・デル・トロの
モンスター・怪獣への愛情が溢れまくった名シーンであると思います。
(モンスターたちに、恐ろしくもどこか愛嬌があるんですよね)
そして原作にない展開であったビルボの葛藤を経てのゴブリン洞窟での大立ち回り
(ドワーフよりも活躍するガンダルフ・・・)、はぐれたビルボとゴラムの遭遇、
そしてゴラムとのなぞなぞ合戦、「あの指輪」の入手・・・と物語は進みます。
原作が児童文学であったがゆえの心理的葛藤描写の少なさが今回の映画化で大きく追加されており、
特にトーリンのエルフに対する恨み・・・スマウグからも、オークからも助けてくれなかった・・・が
その中でも大きい部分となっている感はあります。
映画オリジナル展開として、「LotR」へと繋がる展開としての
死人使いの登場と、それを知らせるキャラとして
茶色の魔法使い(動物使い)・ラダガスト(ウサギの引くソリで狼とチェイス!)と、
まだ魔法使いたちのトップであったころのサルマン、エルフの女王・ガラドリエルたちが登場。
裂け谷での会談の時点で白の魔法使いとして魔法使いのトップであるサルマンに有能さが感じられない
(権威主義に硬直してしまっている)というのはどうかとも思うのですが。
そしてこの「死人使い」の正体が・・・だったりするわけですが
演じる俳優も今作のビルボを演じるマーティン・フリーマンと縁の深いあの俳優
(スマウグの声もこのひとだそうで)というのも、
あのドラマを見ていた方には趣深いのではないでしょうか。
すでにLotRを通っている以上、指輪の持つ意味が(ビルボにとってはただの便利アイテムでも)
我々観客にとっては原作と違ってくるわけで、そのあたりの表現はどうなるんだろう、と
いうのも次作以降の気になる面であり(割とビルボはちょいちょい指輪使ってるしなぁw)
指輪を使うことの「影響」がどう出てくるのか、も注目してみたいところかもしれません。
(盗むことへの罪悪感が無くなっていくあたりがその「影響」なのかもしれませんが・・・)
MGMの経営破綻などの要因から実現まで長い道のりをたどり、
製作費は映画史上最高額にも達していると言われます。
(これは企画スタート段階からの予算が積もっているためかもしれませんが)
前後編から3部作への延長など実現後も公開までは長い道のりだった今作。
第2部「スマウグの荒らし場」は来年、
第3部「ゆきて帰りし物語」は再来年の今頃公開。
おそらく第2部以降ははオリジナル展開が今作以上に入ってくる模様ですが
(原作でガンダルフ離脱の間の魔法使いvs死人使いエピソードが有力?
2部クライマックスをスマウグ戦、3部を五軍の戦という分割も考えられますが・・・)
今作の「観たいと思ったものを想像を超えるレベルで見せてくれる」内容なら
これからの2作にも期待できますし、
(第2部以降、LotRではトム・ボンバディルをカットしたPJが
ビヨルンをどのように描くのかにも個人的には注目しています)
この冬一番「見に行くべき映画」になっていると思います。
そして今回は2D、吹き替え版で見たのですが
所々「ここ3Dで見ればすごい映像になってるんだろうなぁ」と思える映像もあり、
(洞窟のもつ奥行き感とか、空の広がりとか・・・もちろん戦闘シーンの迫力も)
森川智之、羽佐間道夫、玄田哲章・・・といった実力ある声優による吹き替えは
非常にすばらしい出来でございました。
もちろん字幕のほうでもいい出来だと思うのですが、
映像に集中する意味でも、3D、吹き替えで見られることを
強くお勧めしたいと思います。
それにしても本当に見終わった後に「いい映画見たなぁ・・・」と
多幸感でにやにやしてしまうような、見終わって何のエクスキューズもいらないレベルの
満足ができるいい映画でございました。
(原作好き、LotR好き、ファンタジー好き、PJ&デルトロ好きという僕の基準なので、
もちろんこれらの要素が苦手の方にとっては評価も違ってくるとは思いますが、
「映画」としての出来もLotRに匹敵するものである、と思っています)
これが年1本、あと2本楽しめるって幸せだなぁ・・・
(で、この後「MOVIE大戦」見に行って『これはこれで』と思っちゃったんですけどねw)
公開初日朝一で見てまいりました。
(2D、吹き替え版で)
ネタバレありますので原作読んで劇場行ってね。
さて、最近ちゃんと再読もしたりと予習もして臨んだわけですが
映画のほうは
「改変もしつつ、終わってみたら原作の1/3(19章のうち6章まで)を消化してた」という
驚くほど正確なペース配分でございました。
映画としては「LotR」の続編、しかしストーリーは前日譚。
LotRで掴んだファンにも来てもらいたいから原作にいない指輪キャラを出したい、
そして映画を3部作にするには原作の尺が足りない。
そこで冒頭部から「年老いたビルボが赤表紙本を書くシーン」を挿入、
ここでフロドを出すとともに「LotR」の冒頭・・・
ビルボの誕生日パーティーの直前という時間設定も面白かったと思います。
そして冒頭でスマウグの王国襲撃を描くことでドワーフたち
(特にトーリン)の動機づけがわかりやすく伝わり、
13人もいるドワーフの見た目に差異をきっちりつけることで
キャラを立たせることに成功しています。
(戦闘シーンでは武器の違いや戦闘スタイルの違いでも区別できましたね)
そして原作との一番の差異は、原作に比べて旅がハードモードであること・・・
オークの襲撃回数や旅慣れないビルボへの周囲の扱いが原作に比べてハードで
その分ビルボの成長が早まっているようにも感じます。
前半のハイライト・人食いトロル3匹との戦いにおいては
原作ではガンダルフがそのピンチを救ってくれました。
映画でも結果的にはガンダルフの到来がピンチを救うことになるのですが
朝になるとトロルが石になることを知り、時間稼ぎを行ったのは
映画においてはビルボの活躍となっております。
そして映画オリジナル設定となる、オークの頭領・アゾクとトーリンの因縁。
原作では死人占い師(映画版では死人使い(ネクロマンサー))の囚われ人となっていて
ガンダルフに救出され死亡したトーリンの父が、
映画ではモリアの坑道での戦いでアゾクに殺され、トーリンもアゾクに深手を負わせる
(この時壊れた盾の代わりに樫の木を盾に用いたので「オーケンシールド」)という
因縁が生まれており、トーリンに斬られた腕の代わりに義手を刺し、
白い狼(アクマイヌ)にまたがりドワーフ一行を追い詰めるという
ライバルキャラとしてのキャラの立ちっぷりが作品を引き締めています。
そしてこの二人の戦いのシーンでも原作にないビルボの成長が描かれることとなり
今作のクライマックスとなっているのです。
驚かされたのがこのシーン。
原作(瀬田貞二訳・岩波少年文庫版)から引用します。
「稲光のひらめくおりに、顔を突き出してあたりをながめますと、
谷間から石の巨人たちが出てくるところで、
石の巨人たちはたがいに岩をぶつけあい、取りあい、
さては岩をやみのなかにほうりこんで遊んでいました。」(上巻117ページ)
これだけの描写の岩の巨人が、大暴れし、岩をぶつけ合い、格闘する、
しかも旅の一行はそのうち一体の両足にいる、というとんでもないスペクタクルシーンに。
この後に出てくるゴブリン王の描写も含めて、ピーター・ジャクソンと
監督予定だったものの撮影延期によって降板、脚本と制作協力となったギレルモ・デル・トロの
モンスター・怪獣への愛情が溢れまくった名シーンであると思います。
(モンスターたちに、恐ろしくもどこか愛嬌があるんですよね)
そして原作にない展開であったビルボの葛藤を経てのゴブリン洞窟での大立ち回り
(ドワーフよりも活躍するガンダルフ・・・)、はぐれたビルボとゴラムの遭遇、
そしてゴラムとのなぞなぞ合戦、「あの指輪」の入手・・・と物語は進みます。
原作が児童文学であったがゆえの心理的葛藤描写の少なさが今回の映画化で大きく追加されており、
特にトーリンのエルフに対する恨み・・・スマウグからも、オークからも助けてくれなかった・・・が
その中でも大きい部分となっている感はあります。
映画オリジナル展開として、「LotR」へと繋がる展開としての
死人使いの登場と、それを知らせるキャラとして
茶色の魔法使い(動物使い)・ラダガスト(ウサギの引くソリで狼とチェイス!)と、
まだ魔法使いたちのトップであったころのサルマン、エルフの女王・ガラドリエルたちが登場。
裂け谷での会談の時点で白の魔法使いとして魔法使いのトップであるサルマンに有能さが感じられない
(権威主義に硬直してしまっている)というのはどうかとも思うのですが。
そしてこの「死人使い」の正体が・・・だったりするわけですが
演じる俳優も今作のビルボを演じるマーティン・フリーマンと縁の深いあの俳優
(スマウグの声もこのひとだそうで)というのも、
あのドラマを見ていた方には趣深いのではないでしょうか。
すでにLotRを通っている以上、指輪の持つ意味が(ビルボにとってはただの便利アイテムでも)
我々観客にとっては原作と違ってくるわけで、そのあたりの表現はどうなるんだろう、と
いうのも次作以降の気になる面であり(割とビルボはちょいちょい指輪使ってるしなぁw)
指輪を使うことの「影響」がどう出てくるのか、も注目してみたいところかもしれません。
(盗むことへの罪悪感が無くなっていくあたりがその「影響」なのかもしれませんが・・・)
MGMの経営破綻などの要因から実現まで長い道のりをたどり、
製作費は映画史上最高額にも達していると言われます。
(これは企画スタート段階からの予算が積もっているためかもしれませんが)
前後編から3部作への延長など実現後も公開までは長い道のりだった今作。
第2部「スマウグの荒らし場」は来年、
第3部「ゆきて帰りし物語」は再来年の今頃公開。
おそらく第2部以降ははオリジナル展開が今作以上に入ってくる模様ですが
(原作でガンダルフ離脱の間の魔法使いvs死人使いエピソードが有力?
2部クライマックスをスマウグ戦、3部を五軍の戦という分割も考えられますが・・・)
今作の「観たいと思ったものを想像を超えるレベルで見せてくれる」内容なら
これからの2作にも期待できますし、
(第2部以降、LotRではトム・ボンバディルをカットしたPJが
ビヨルンをどのように描くのかにも個人的には注目しています)
この冬一番「見に行くべき映画」になっていると思います。
そして今回は2D、吹き替え版で見たのですが
所々「ここ3Dで見ればすごい映像になってるんだろうなぁ」と思える映像もあり、
(洞窟のもつ奥行き感とか、空の広がりとか・・・もちろん戦闘シーンの迫力も)
森川智之、羽佐間道夫、玄田哲章・・・といった実力ある声優による吹き替えは
非常にすばらしい出来でございました。
もちろん字幕のほうでもいい出来だと思うのですが、
映像に集中する意味でも、3D、吹き替えで見られることを
強くお勧めしたいと思います。
それにしても本当に見終わった後に「いい映画見たなぁ・・・」と
多幸感でにやにやしてしまうような、見終わって何のエクスキューズもいらないレベルの
満足ができるいい映画でございました。
(原作好き、LotR好き、ファンタジー好き、PJ&デルトロ好きという僕の基準なので、
もちろんこれらの要素が苦手の方にとっては評価も違ってくるとは思いますが、
「映画」としての出来もLotRに匹敵するものである、と思っています)
これが年1本、あと2本楽しめるって幸せだなぁ・・・
(で、この後「MOVIE大戦」見に行って『これはこれで』と思っちゃったんですけどねw)