雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

彼女

2011-01-08 | ある物語
 もっとゆっくりと、時間が流れてくれればいいのに……。
 昨夜の酒が残っている気怠い身体を、僕は無理矢理に起こした。だが、目覚めようとする気持ちとは裏腹に、半分も開かない重たい瞼。
 そんな寝ぼけ眼のままベッドを降りて、ヨロヨロと窓際まで歩み寄った。いつもより、やたらと白さが増しているように感じられるカーテンを一気に開けると、二日酔いの神経には眩し過ぎる朝日が突き刺さってきた。顔を顰めながらも窓ガラスを開けると冷たい空気が鋭く入ってくる。僕は全身を目一杯伸ばし、大きく深呼吸して、新鮮な空気を体内に摂り込む。そして、吐き出す。こうすると、なんだか身体の中の悪いものも一緒に吐き出されてゆくような気がする。しかしそれは、やはり気のせいであるということが、何回かの深呼吸を繰り返しても一向に治まらない頭部の鈍痛から窺い知れる。
 初秋の朝。外はやや冷え込んではいるものの寒さを感じるほどではない。なにより、好天に恵まれているので朝日の射し込む辺りは程よい暖かさがある。そのぬくもりに包まれながら、しばしの間ぼんやりと外を眺めていると、ついうつらうつらとしてしまう。
 だが、今日は、こんなのんびりとはしていられないのだ……。
 僕は先程の深呼吸とは一変して、小さな溜息を吐いた。と、同時に、ベッドが小さく揺れるのを目の端に捉える。
 溜息の理由、《彼女》がベッドの片隅で微かな寝返りをうっていた。

             ○

 もう、どれくらい経ったのだろう……。
 彼女に振り回され続けている日々は。一ヶ月くらいか? いや、半年は経っただろうか? それとも……。
 勝手気ままな彼女のおかげで、近頃では時間の感覚がとてもあやふやなものになってしまっている。彼女といると、なにもかもが夢心地なのだ。そもそも彼女の存在自体が、神秘的且つ空虚であるせいだ。
 彼女は全くもって、つかみどころがない。あっちにフラフラこっちにフラフラ……それはまるで、種々の花の蜜に誘われる蝶の如く、ひとつ処に落ち着くことがない。だがその姿はとても優雅で気品に満ちていて、見ているものに厭味を与えることはない。むしろ癒しを与えてくれる。
 彼女は媚びない。とても、クールだ。愛敬を振りまいて近付いてこようとする輩を、ことごとくあしらう。しかしその冷淡な振る舞いこそが、彼女の大いなる魅力となっていることは確かだ。その冷淡さの中で垣間見せる、彼女独特の愛くるしい上目遣い、そしてちょっぴりハスキーな甘え声。それらがなんとも蠱惑(こわく)的で、誰も彼もが彼女に魅了され、手を差し伸べずにはいられなくなる。
 それは持って生まれた才能なのだろうか? はたまた、この世知辛い世の中を生き抜いてゆくために自然と身についた技術なのであろうか? 或いは、《女》の本能とでも言ったものであろうか? 
 それがどんなものであろうと、僕は構わない。すでに彼女の虜となった僕にとっては、彼女が傍にいることが何よりも重要なことなのだ。彼女と一緒にいる時間。それはとても穏やかで、優しさに満たされた心持ちになれる特別な時間。この時間が、ずっと続けばいい……。
 しかし、永遠なんてものは、この世には存在しないようだ。平穏な世界がいつまでも続かないように、僕と彼女の穏やかな時間も、やがては終わる。その終わりの時が、刻一刻と迫ってきている。
 その事を考えると頭がずんずん重たくなり、ともすれば胸焼けを起こし胃酸がせり上がってくるようだ。そりゃ、二日酔いのせいもあるだろうけど、なにより彼女との終わりに打ちひしがれる心痛によるところが大きい。
 などと、少々嘔吐(えず)きながら思っていたら、また彼女が寝返りをうち、こちらのほうに顔を向けた。僕はそっと彼女の顔を覗き込む。
 まだ僅かに、あどけなさを残したその寝顔は、朝日の眩しさを感じてか、眉間の辺りにやや険しさを表している。彼女はその眩しさから逃げるようにゴロリと身体を反転させ、元の位置よりも、もう少し深くその身を布団に埋めて、また静かな寝息をたてはじめた。
 そんな彼女の愛くるしい仕草を見ていると、自然と頬が緩み、心痛は緩和される。が、それと同時に耐え難い哀しみにも、襲われる。
「キミを見つめるほどに、愛しさと切なさが溢れてくるよ」
 まだ抜けきっていないアルコールのせいだろう。我ながら陳腐でうすら寒いセリフを平然と吐いたのはいいが、すぐさま照れ臭くなり、そっとその場を離れて、キッチンへ二人分のコーヒーを淹れにいくことにした。

             ○

 初めて彼女に出逢った日、外はひどい雨降りであった。仕事を終え、帰宅した僕はアパートの前にずぶ濡れの姿で佇んでいる彼女の姿を見つけた。彼女は微かに震えながらも、毅然とした表情で僕を見つめてきた。最初僕は、そのあまりにも不躾な視線に不信感を覚えはしたものの、瞳を逸らすことは出来なかった。それは彼女の瞳から、好奇や戸惑い、安心や不安、救援や拒絶、そんな様々な彩(いろ)が不安定に揺れているのが窺えた……ような気がしたから……。そしてそんな曖昧さの中において、一際僕に訴え出てきていたのは、「誘惑」の艶(いろ)であった……と思っている……。
 従って僕は、一瞬の躊躇いはあったものの、ある種の予感めいた気持ちにとり憑かれ、玄関の鍵を開け、ドアを手で押し開いたまま、声もかけずに、ただ視線で促すようにして待ってみた。
 彼女はそれを見てとると、さもそれが当然であるかのように、何の躊躇いもなく、優雅に歩き、やってきた。そして彼女はドアを支えている僕に一瞥もくれることなく部屋の中へ入っていった。
 ドアを閉めた僕は、とりあえず彼女の濡れた身体をどうにかしなければと、すぐさまタオルを掛けてやったのだが、彼女は「自分で拭く気は更々なくてよ」といったふうに立ち尽くし、僕のほうを見遣る。仕方なく僕は、おずおずと手を伸ばし、タオルを手に取り、緊張しているのを気取られないように、そうっと撫でるように頭から足の爪先まで、ゆっくりと拭ってやった。彼女は恥らう様子もなく、目を閉じて気持ち良さそうな表情を見せる。時折うっすらと瞼を開け僕を見つめる。それはまるで、女王が下僕にささやかな許しを与えてやる、そんな眼差しであった。
 彼女の白い肢体はとても滑らかで、ともすれば壊れてしまいそうなほど華奢であった。その繊細な身体を柔らかく包み込みたい、という気持ちと、壊れるまできつく抱きしめたい、という気持ちが心の裡で綯交ぜになってゆき、しだいに僕の欲望は狂おしい変貌を遂げていった。
 僕は完全に、彼女の魔力に陥ってしまった。

 しばらくの間は僕の許に落ち着いていた彼女であったが、ある日の午後、いつものようにじゃれあった後、少し眠気がさしてきた僕が目を閉じていると、彼女が僕の頬に軽くキスしてくるのがわかった。僕は幸せのくすぐったさに包まれながら、するすると眠りに浸っていった。
 ふと、目を覚ますと彼女の姿がどこにも見当たらなかった。この部屋にやってきて以来、一度も外に出たがらなかった彼女だったので、かなりの不安を感じたのだが、如何せん僕は彼女の素性をまったく知らないし、どんな行動範囲を持っているのかもわからないので、とにかく僕には、彼女が戻ってきてくれるのを待つほかなかった。
 しかし僕は思いのほか彼女への依存が高くなっていたらしく、一日、二日と時が経つにつれて、不安と焦燥に胸を焦がされ、日常生活もままならない程になっていった。
 街へ捜しに行ってみようか? でも、その間に戻ってきたら……。
 そんな想いに駆られて身動きがとれない状態に陥っていた。
 だがもちろん、仕事にも行かなければならない。何日かの有休を取って待ってみたりもしたが、それを続けるわけにもいかない。やむなく僕は日常に戻らざるを得なくなった。
 四六時中、彼女のことを想いながら……。

 そんなある日、偶然街中で彼女を見つけた。しかし彼女は誰とも知れぬ男に寄り添って歩いているところだった。僕は友人と一緒だったのだが思わず立ち止まり、その光景を凝視していた。不審を抱いた友人が僕の視線の先に目を遣った。
「ああ、アイツ、また違う人間に可愛がられてるみたいだな」
「知っているのか?」
 僕は努めて冷静を装って訊ねた。
「この辺じゃ有名だぜ。色んな奴のところを渡り歩いてるって、まぁそれがアイツの生き方なんだろうけれど……あ、もしかして、お前もアイツと関わったことがあるクチか?」
「ハハッ……まさか」
 友人は些か疑いの眼差しを向けてはきたが、それ以上の言及はせず、巷に流れる彼女の噂を一通り教えてくれた。
 彼女のことを「アイツ」と馴れ馴れしく呼ぶところが気に障るが、どうもその口ぶりからして、コイツも彼女に振り回された一人なのではないか? と思えてきて、幾分同情的にもなれた……ような気もした。
 友人と別れて部屋に帰った僕は、寂寥感と遣る瀬無さに打ちひしがれた。彼女にとっては自分も大勢いるパトロンの一人に過ぎないのか、と。
 それでも逢いたい。そしてもう一度、彼女に触れたい。そう切実に願わずにはいられなかった。
 そんな身を切るような想いが通じたのか、数日後、彼女が戻ってきた。初めて出逢った時と同じ、雨降りの夜に。
 鬱々としながらも、僕は虫の知らせめいたものに衝き動かされ、玄関のドアをそっと開けてみた。するとそこにはあの日と同じように、ずぶ濡れになりながらも毅然とした面持ちで佇んでいる彼女の姿があった。僕は歓喜のあまり思わず叫びだしそうになったが、それをグッと堪え、そろそろとドアを開け放ち、彼女を迎え入れるようにした。彼女は以前と変わらず、なんら躊躇うことも、そして悪びれる様子もなく、部屋に戻ってきた。
 その姿に僕は、ただただ狂おしいほどの愛しさを感じ、もう振り回されようが裏切られようが構わない。とにかく今、この瞬間、彼女が傍にいるという現実を、この時間を、大切にしようと心に決めたのだ。

             ○

 二人分のコーヒーが沸くと同時に、来訪を告げるベルの音が部屋中に鳴り響いた。ベッドの彼女はそれに反応して、「ビクリ」と小さな身体を揺らす。そうして目を覚ました彼女は玄関のほうを警戒するように見つめた。そんな彼女を、僕はそっと撫でながら、「ここで待ってな」と言い置いて、まさに絶望の縁を歩くように玄関口へと向かった。
ついに、この時が来てしまったか……。
 僕は昨夜からこの時のことばかり考えながら酒を飲んでいた。そこから逃げよう逃げようとするために、ついつい飲み過ぎた。でも、それでよかったと思う。未だぼんやりと残っているアルコールの力を借りなければ、到底耐えられる現実ではないのだから。
 玄関口でそんな思いを巡らせていると、再度ベルが鳴り響いた。一先ず深呼吸をして、覚悟を決めると、誰なのかは知れているのだが「はい……どちら様?」と訊ねてみた。
「わたしよ! 早く開けてよ!」
 予想通り。ドアの向こうから荒立たしげに怒鳴ってくるのは、僕の《カノジョ》加奈子であった。
 僕は鍵を外し、薄くドアを開いた。
「まだいるんでしょ! アイツ! どういうつもりよ、今日中に追い出してって言ったでしょ!」
「いや、今日中って……まだ、朝じゃないか……」
 朝っぱらから、玄関前にも関わらず怒鳴り声をあげる加奈子に圧倒されながらも、とにかく中へ入るように促した。
「嫌よ! それよりアイツを早く追い出してよっ!」
 取り付く島もない。
 部屋の奥に目を遣ると明らかに彼女は怯えている。気の強い彼女をこれ程までに怯えさす加奈子に、今更ながら戦慄を覚えた。
 僕はうろたえながらも彼女に「大丈夫だから」と声を掛けるが、「大丈夫じゃないわよ!」と加奈子に喚かれ、確かに大丈夫ではないな……と、しどろもどろの態ではあるが、とにかく加奈子に落ち着いてもらおうと懸命に宥め透かしてみた。それでも頑として中に入ろうとしない加奈子であったが、程なく、騒ぎに気付いた隣近所の人たちが好奇の視線をもってチラホラと顔を覗かせてきたので、やむなく部屋に入らざるを得なくなった。
 加奈子は彼女のいる奥の部屋を睨んだまま靴を脱ぎ、深い溜息と共にキッチンの椅子に腰を下ろした。
 僕は〝加奈子のために淹れておいたコーヒー〟を、自分の分と均等にカップへ注いで、テーブルに置いた。
「何よ、それ」
「え? いやぁ、加奈子が来るって分かってたから、加奈子の分のコーヒーも淹れておいたんだけど……」
「じゃなくて、その、テーブルの隅っこにあるモノのことよ」
 それは、熱いモノが苦手な彼女のために、一度温めてから適温に冷ますために置いてあるミルクのことだった。朝食も用意してある。
「ねぇ、わたしはあなたのなんなの?」
 僕は加奈子の視線を逸らしながら、「カノジョ、です……」と答えた。
「そうよね。だったら分かるでしょ? 自分がどんなにひどいことをしているかって。わたしが来るのを分かっていたのに、それでもアイツを追い出していない! しかも呑気に朝食まで用意している!」
 ぐんぐんヒートアップしてゆく加奈子を慌てて制する。
「よせよ! さっきから彼女は怯えきっているんだ。本当に、これで最後だから。これを食べたら出て行ってもらうから」
 少しきつい口調で言うと加奈子はうな垂れてしまった。でもすぐに顔を上げ、救いを求めるように訊いてきた。
「わたしはあなたの、カノジョなのよね?」
 僕は強く頷く。
「なら、わたしのこの苦しみも、分かってくれてるのよね?」
 また、頷く。
「だったら早くしてよ! もうわたし、耐えられないのよ!」
 今にも発狂しそうな勢いの加奈子が、次第に鼻声になり、涙目になってゆく。
「わたし、アイツの噂、聞いたわよ。ひどいもんじゃない……今ここを追い出されたって、すぐにまた、別の誰かのところへ身を寄せるんでしょうよ。あなたに恩なんてちっとも感じることなく……」
「よせ! もういい! 分かったから、もう本当に、今日で終わりにするんだから!」
 彼女のことなんてちっとも知らないくせに、噂話だけを鵜呑みにして彼女のことを中傷する加奈子に憤り、叫んだ。
 ついに堪え切れなくなったのか、加奈子は涙をボロボロと零しだした。鼻水も、とめどもなく。
「だってあなた、このところアイツのことばっかりで、わたしのことなんてちっとも考えてくれてやしないでしょ? わたし、淋しくって……悔しくって……」
 ぐしゃぐしゃになりながら加奈子は切実に訴えてくる。そんな加奈子を見ていると、己の欲望のためだけに大切な人を傷付けてしまっていた自分が、今更ながらとても卑しく愚かしい、恥ずべき人間に思えてならなくなってきた。
「わたしのこと、嫌な女だと思ってるんでしょ……でも、こればっかりはどうしようもないのよ……」
 僕はそっと加奈子を抱き寄せて首を振る。
「悪いのは、僕だ。ごめんよ……つらい想いをさせて」
 僕らは久しぶりに、互いの存在を確かめるように、静かに、きつく、抱きしめ合った。
 そんな、いい雰囲気の二人の足元に、いいかげん腹を空かせたらしい『彼女』が懇願するように擦り寄ってきた。
「ミャア~」
 猫アレルギー体質の加奈子がそれに気付き、僕の体を思いっきり突き放し罵声を浴びせる。
「さっさとこの猫追い出してよっ! もう、さっきから目と鼻が痒くて痒くてしょうがないんだから!」
 すでに加奈子の怒声には慣れたのか? それとも余程腹が減っているのか? 彼女は僕らの諍いなど物ともせず、テーブルに跳び乗ると、程よい冷め具合となったミルクを舐めはじめた。


                  (了)



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

四次元ヴァギナ

2009-01-29 | ある物語
【パターン 1】

 その女は俺にこう言った。

「あたしの子宮は四次元空間になっていて、放出された精子はどこか違う場所に飛んでいってしまうの。だから、中で思う存分出して」

 かなり胡散臭い話だが、生中出しは俺も嫌いではない。女がそう言っているのだ。それなら遠慮なくぶっ放してやろう。

「あぁぁぁ、イ、イクっ!」

 臨界点に達したそのとき、俺の眼前に空間の裂け目が現れた。

 こ、これはもしや!俺は瞬時に不穏な空気を察知しつつも我慢しきれず、発射。

「ハウっ!」



 やっぱり…顔射された…。



【パターン 2】

 その女は俺にこう言った。

「あたしの子宮は四次元空間になっていて、放出された精子はどこか違う場所に飛んでいってしまうの。だから、中で思う存分出して」

 かなり胡散臭い話だが、生中出しは俺も嫌いではない。女がそう言っているのだ。それなら遠慮なくぶっ放してやろう。

「あぁぁぁ、イ、イクっ!」

 ………。

 事を終えた俺は急に便意をもよおしてきたので、トイレへ向かった。

 便座に腰掛け、それにしても俺のザーメンはいったい何処へイッてしまったのだろう?などと詮無いことを考えながら、息んだ。

 すると、肛門から生温かくて白濁とした液体が垂れ流れてきた。



 ここかいっ!


【パターン 3】

 その女は俺にこう言った。

「あたしの子宮は四次元空間になっていて、放出された精子はどこか違う場所に飛んでいってしまうの。だから、中で思う存分出して」

 かなり胡散臭い話だが、生中出しは俺も嫌いではない。女がそう言っているのだ。それなら遠慮なくぶっ放してやろう。

「あぁぁぁ、イ、イクっ!」

 ………。

 あまりの気持ち良さに、まるで童貞小僧の如く何度も何度も放出しておいて、今さら言うのも気恥ずかしいが、俺は訊かずにはいられなかった。
「本当に、大丈夫なのかい?」

 女は艶かしく、自信をもった微笑みを浮かべて応えた。
「ええ、あたしは、まったく平気よ」

 その女とは、それきり会うことはなかった。

 それにしても、世の中には不思議な女もいるものだ。
 
 そうそう、不思議な女といえば、俺の近所に住むマリアという女が近頃、懐妊したらしい。
 しかし彼女は「天地神明に誓って、私はセックスなんてしたことがない!私は、正真正銘の『処女』よ!」と、皆に言い募っているそうだ。もしそれが本当なら、なんとも不思議なことである。まさしく、奇蹟だ。



 キリ○ト誕生秘話。

 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

謎の女 続報

2008-10-05 | ある物語
 妻から『謎の女』についての新たな情報を入手した。


 その一、、、「最近は週末(金、土)だけの来店になった」

 その二、、、「その際必ず、『百円選菓』という百円のお菓子シリーズを千円分買っていくようになった」

 その三、、、「ナプキンはもう買わなくなった」

 その四、、、「レジ終了後、決まって『あんまん一つ』と叫ぶ。うしろに他の客が待っていてもおかまいなしに」(妻曰く、「どうせ買いやがるんだからはじめっから言いやがれ!」とのこと)

 その五、、、「最近はエロ小説(フランス書院)も時々購入」

 その六、、、「ますます太ってきた」


 
 以上、なんだか情報が集まれば集まるほど、謎が増してゆく。

 そう、それが『謎の女』
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

謎の女 【完結編】

2008-09-04 | ある物語
 それはまるで、荒廃した不毛の土地に漂う蜃気楼を茫然と眺めているかのような、または、夢幻の世界に無造作に放り出されて、その身の回りにたゆたう澱んだ空気に絡め捕られ、なすすべもなく遠くに視線を投げ出したかのような、とにかく悠久の退屈さに辟易としつつある冷たい表情で、妻が私に顔を向けている。

 妻の言いたいことは解かる。しかしながら、せっかくの夫婦団欒の謎解きタイムではないか。もう少しテンション上げて乗っかってくれてもいいぢゃないか・・・。

 そんなワケで私は、この冷め切った状況を打破するべく、手っ取り早く真相に辿り着く言を放つことにした。

「ではここで、問題を突き詰める角度を変えてみることにしよう」

「・・・・・もういいって、おやすみ」

「あぁぁ!待て待て!ホント、すぐ済むから。そんで『アッ!』と驚くタメゴローなんだから」

「・・・・・つまんねぇ」

「まあまあまあまぁ。もうちょっと探偵気分を味わいたいんだよー」

「しょうがない、で?」

「よし!では、気を取り直して。
『犯人は何故、デブなのか?』
 それを突き詰めていけば、自ずと真相が浮かび上がってくるのだ」

「は?食い過ぎでしょ?そして『犯人』って?なに?」

「ふふふ・・・確かに、安易な発想に飛びつくなら、ソコに行き着くだろうが、もう一歩、踏み込んでみよう。そこでエロ本の問題だが、私の友人にヒデミチ博士という人物がいるのだが、彼の提唱する『オナニーダイエット』の理論によれば、
『毎日オナニーしているヤツは太らない』
 と、いうことだ」

「いや、ちょっと・・・話がおかしい方向へ行ってませんか?そして『犯人』って?」

「まぁ焦るな。
 すなわち、その理論から基づくと『犯人はそのエロ本でオナニーはしていない』と結論づけられる。しかしながら、私の確固たるエロ本の使いみちは『オナニー』しかあり得ない!と結論づけられるのだ。
 どうだろう、この相反する二つの結論をなんら矛盾もなく融合させるとしたならば、答えは一つ。それは・・・」

「それは・・・?」

『犯人はデブの着ぐるみを着た男である』

「はぁ?だから『犯人』ってなに?っていうか、そんなの着ぐるみなんか着てたらすぐに解かるって!」

「ソレが着ぐるみであるという証明は・・・・」

「オ、オイっ、アタシの質問はスルーかよ・・・」

「現金の支払い方法だ」

「はい?」

「オマエが言ったではないか『小銭いっぱい持ってるのに絶対にお札出す』と。どんなに精巧な着ぐるみであろうと、やはり手先を器用に動かすのは至難の技。しかもデブの着ぐるみときたもんだ」

「いやいやいや、ちょっと。そんな着ぐるみなんてある訳ないぢゃん。よしんば存在していたとしてもバレバレでしょ?」

「ふんっ、オマエはミッション・イン・ポッシブルのイーサンの見事な変装術を知らないのか?」

「そりゃ映画の話だろ!現実問題としてそれはあり得ないって!」

「もうひとつ、ソレが着ぐるみだと裏付ける証拠が・・・・」

「またスルーかよ・・・・」

「夜用ナプキンだ!」

「は?」

「要するに、それはほぼ毎日夜用ナプキンを購入する謎と直結するのだ。
『犯人は、着ぐるみの中にナプキンを敷き詰めて流れ出る汗を吸収している』
 のだ。
 もちろん、そのナプキンの嵩(かさ)によりデブの肉感を出すという一石二鳥の役割だ」

「・・・・・でも、そこまでしてエロ本を買う必要があるの?だって、男なら別に毎日買っていっても、そんなもんじゃない。それが恥ずかしいんなら他の店へ行ってローテーションすればいいわけだし・・・」

「ふむ、そう思うだろうが、犯人が解かれば、オマエも納得するはずであろう。その哀れな行動の意味を・・・」

「えっ!犯人も解かってるの!っていうか『犯人』とかじゃないし!」

「うむ、着ぐるみの中の男は、おそらく・・・・」

「おそらく・・・・?」

「レジ台にチンコをのっける、そう『アピール』君だ!」

「また、古い話を・・・(2007年11月5日【アピール】にて)」

「そこで彼のエロ本に対する執念が並々ならぬものであることが窺える。しかしながら、オマエたち店員に軽くあしらわれ、いわんやその恥辱は想像するだに恐ろしきものである!」

「いや、それなら、他の店行けばいいぢゃん」

「ふっ、行ってるんだよ・・・・」

「えっ!?」

「そう、彼はおそらく、他の店でも同じ扱いを受け、恥辱にまみれながらも、エロ本に対する執念は衰えることを知らず、毎日毎日、デブの着ぐるみを着込んでエロ本とナプキンを買い続けているのだ!
 なんとも切ない話ではないか!私は・・・私は、彼のそのエロ本偏執狂っぷりに涙する!いや、もはや畏敬の念すら込み上げてくる!」

「・・・・・それが、真相?」

「そうだ」

「ホントに、コレでいいの?」

「・・・・・」

「っていうか、この推理、や、妄想、自分で正解だと思ってんの?」

「いや、全然。そんなことあるワケないぢゃん。あははーん」

「むかつくなぁ・・・じゃあ、ホントの本当の真相は?」

「知らねーよ。本人に聞けばいいぢゃーん。『なんで毎日エロ本とナプキン買うのぉ?』て。あと、体重も訊いとけよ。わはははは!」

「・・・・・・・・・・・」



 
 それはまるで、荒廃した不毛の土地に漂う蜃気楼を茫然と眺めているかのような、または、夢幻の世界に無造作に放り出されて、その身の回りにたゆたう澱んだ空気に絡め捕られ、なすすべもなく遠くに視線を投げ出したかのような、とにかく悠久の退屈さに辟易としつつある冷たい表情で、妻が私に顔を向けている。
 しかしその、冷たい眼差しの奥深くに煮えたぎる灼熱の怒りが漲っていることも、見逃すことのできない真理なのである。


             (完)






注) 私と妻のやりとりは創作以外の何ものではないが、このデブ・・・失礼、『謎の女』は実在していて、今でもほぼ毎日、夜用ナプキンとエロ本を買っているという話だ。そう、いまだにこのデ・・・女は、『謎の女』のままなのである。
 

 
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

謎の女 【解答編】

2008-09-02 | ある物語
 自信に満ち溢れた表情を妻に向け、私は『謎の女』のその奇妙な行動の真相を明らかにすべく、古今東西の名探偵に倣い、回りくどい言を開始させた。

「まずは、いちばんの謎である品物の使いみちについて検討してみよう」

「いや、いいから。結論だけ、ズバッと言ってよ」

「ダメだ」

「なんで?」

「こういうのは、もったいぶることに意義がある」

「なんで?」

「うるさい、黙って聞け」

「・・・・・・」

「まず、ナプキンの使用目的だが・・・・」

「生理」

「黙れ!」

「・・・・・・・」

「そう、無論ナプキンとは女性の生理時にだだ漏れする血を吸い取ることが主な使用目的であるが、しかし、その抜群の吸収力はソレだけに使うには惜しい利便性を備えている」

「え~っ・・・例えば?」

「うむ。そうだな・・・例えば、揚げ物をした後の油を吸い取ったり・・・・」

「か、固めるテンプル?」

「また、冬場に車で灯油を買いにいって、その帰りにカーブを曲がった拍子に灯油缶が倒れてしまって、こぼれた灯油を吸い取るのに使ったり・・・・」

「それ、ホントにやってたぢゃん。去年の冬」

「そしてなにより、汗などを拭くときにナプキンを使用すると、そのデリケートな柔らかさがなんともお肌に優しいのだ!」

「えっ!まさか、秘かにアタシのナプキン使ってるの?」

「・・・・・・・とにかく、その吸収力は、もはや生理時のみならず、毎日の生活に密着しているのである!」

「は、はぁ・・・?で、彼女はナニに使ってるの?」

「まぁ、待て。そう先を急ぐな。お次はエロ本の使用目的だ」

「そ、それは・・・ひとつでしょ?」

「うむ。オナニーだ。しかしそれは、男ならではの使用目的ではあるまいか?いや、無論、女性も他の女人のあられもない姿を見てオナニーに耽ることも多々あるだろうが、だからと言って、やはり女性がエロ本を購入するというのはいささか抵抗があるはず。それがほぼ毎日とあっては、多少疑問の余地を挟まざるを得ない、違うか?」

「ま、まぁ、1回買うだけでもアタシャ恥ずかしいけど・・・・」

「だろ?そこでだ、その羞恥心に蓋をするためには、『己の行動に誇りを持つ』という手がある」

「それは、いったい・・・・?」

「つまり、『私はいつもエロ本を買っているけど、あなたたちが考えるような俗な使い方をしているわけではない』という矜持を胸に抱いているのだ」

「そんなの、他人には分からないじゃない?」

「いいんだよ。そうやって、『俗な想像しか出来ない下劣な者どもよ』とか思って勝ち誇ることに意義があるんだから」

「そういうもんなのか?で、彼女はエロ本をどんな高尚な目的に使うの?」

「まぁ、待て。そう先を急ぐな。だがそろそろ、本題に入ろうか・・・・私は最初、オマエの話を聞いたときに、エロ本をいかに高尚な物に格上げすべきかを考えた。これは私にとってとても難しい問題であった。なんせ、私にとってエロ本とは、このうえなく高尚なものであるのだから。それをさらに高みに上げることなど『神にオナニーを見せてくれ』と懇願するようなものである」

「いや、言ってる意味がイマイチ理解できないんですけど・・・・」

「ようするにだ、私も色々思案した。エロ本で女体研究や、裸婦のデッサンモデルや、お部屋の壁紙の張替えや、恋人に送る手紙の便箋代わりや・・・・」

「いやいやいや・・・発想がもう壊れかかってるんだけど・・・・」

「そうして様々な使用方法を目論んでみたが、結果、いちばん理にかなった、尚且つ、高尚な使用方法とは!」

「とは!?」

「やっぱオナニーだろ!」

「オイッ!」

「したがって、私の精巧かつ論理的な推論から導き出された答えは、
『その女は、ほぼ毎日違うエロ本でオナニーして、その際身体中から湧き出してくる汗や精液を吸収力の優れた優しい肌触りの夜用ナプキンによって拭っている』
 と、結論づけられる、以上だ」

「そ、それは・・・推理ではなく、単なるエロい妄想なのでは・・・・?」


 そうツッコまれた私は、妻に向けて再度不敵な笑みを向けて口を開いた。

「ふん。当たり前だ。こんなのは推理とは言わない。オマエを試してみただけだ。この前に私が念を押して訊ねたことを忘れたか?
『かなりのデブなんだな?』
 と。今までの推論の中でデブが入ってくる要素は見当たらないだろ、そう、私はオマエからその女がデブだと聞かされるまでは、エロい妄想にとり憑かれていた。思わず勃起しそうにもなった・・・しかしその女が『ハンパねぇデブ』と解かり、己の知性とチンコに唾を吐きたくなった。しかしながら、その欠けたピースが見つかった瞬間、全ての謎が解けたのだ!そこには、語るだに恐ろしき、人間の執念が見え隠れしているのだ!おおっ!神よ!我を救いたまえ!」

「で?真相って?」

「な、なんだよ、人が盛り上がってんのに・・・ノリの悪いヤツめ。よし、そんじゃあ耳の穴かっぽじって、よーく聞きやがれぃ!てやんでぃ!」

 私は何故か江戸っ子口調になって、すでに冷めきった面持ちの妻に語りだした・・・。



・・・・・・・・つづく!


コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

謎の女 【問題編】

2008-08-29 | ある物語
 いつものように妻と2人きりの夕飯を食べ終え、独りでちびちびと焼酎を舐めていると、これまたいつものように、妻が鬱陶しく話しかけてきた。
 だが、今日は、いつものオチもヘッタクレもない愚にもつかない戯言ではなく、なかなか興味をそそられる話であった。

「あのさ、うちの店(コンビニ)に来るお客さんでちょっと変な人がいるんだよねぇ」

「いや、オマエんとこにくる客、変なヤツばっかりぢゃん。隣に誰もいないのに見えない誰かとフツウに会話してるヤツとか、ポケモンの薀蓄(うんちく)を滔々と語ってくオタクとか、美人のパートさんを狙ってる妻子持ちストーカーとか、レジの台にチンコ乗っけるヤツとか・・・」

「たしかに、そうなんだけど、まぁ、聞け」

「ハイ・・・」

「その人はね、あっ、女の人なんだけど、ここ最近ほぼ毎日のように来るんだけど・・・」

「『ほぼ毎日』ってのは、毎日ではないんだな?『ほぼ』というのは、『およそ』とか『だいたい』って意味であって、然るに『毎日』という意と反する語である、故に・・・」

「あー、うるさいっ!とにかく、三日と空けずに来るんだよっ!」

「怒らなくてもいいぢゃない・・・・で?」

「で、その女の人、来ると必ず買ってく物があるんだよ」

「なに?」

「なんだと思う?」

「知らねーよ!もったいぶるなっ!」

「怒らなくてもいいぢゃない・・・・で、それが、ホント、毎回買っていくんだよ」

「だからナニ!?」

「夜用のナプキンとエロ本」

「ぶはっ!!!なにそれ?」

「わかんない・・・とにかく、お菓子とかおにぎりとかと一緒にそれらも必ず買っていくんだよ」

「ほぼ毎日?」

「ほぼ毎日」

「うーん・・・ここ最近って、どれくらいの期間?」

「もう一、二ヶ月は来てる」

「血、出っ放し?」

「まさか?」

「全部、夜用?」

「ナイトガード」

「じゃあさ、エロ本って、どんなの?」

「どんなって?」

「いや、色々あるだろ。漫画のヤツとかフツウのグラビアっぽいのとか、盗撮モノとかロリコンモノとか鬼畜系とか・・・」

「いやぁ・・・フツウの、よくある写真のエロ本だと思うけど、漫画ではないなぁ」

「ふーん・・・・それをここ一、二ヶ月、ほぼ毎日、買っていく『謎の女』ねぇ・・・」

「その人ね、ちょーっとフツウではない感じなんだよねぇ。小銭いっぱい持ってるのに絶対にお札出すし、なんか計算できないっぽいみたいでぇ・・・」


 しばし私はその光景を頭の中で思い浮かべながら、その女性の心理を追ってみたり、エロ本の表紙を妄想したりしてみる。そして今までの会話を反芻し、全ての事象を並べ替えたりしてみる。すると自ずとひとつの結論に達してきた。しかし、まだ、なにかが、あとひとつ、それを決定付けるピースが見当たらない。

 考えあぐねいている私にむかって、妻が思い出したように言う。

「そうそう、その人、かなりの『デブ』なんだよねぇ」

 その言葉は私の脳髄に閃光を走らせた。

「それは本当か!かなりの『デブ』なんだな?」

「うん、ハンパねぇ」

 これだから話下手のヤツにはかなわない。いちばん肝心なピースを忘れているとは、しかし、これで謎は全て解けた!真実はいつも一つだ!

 私は不敵な笑みを湛え、妻に『謎の女』の真相を語りだした。



≪読者への挑戦状≫

 これまでの話で、この『謎の女』の珍妙な買い物の真相を解き明かすピースは全て揃っています。
 そこで私は、読者諸君に挑戦する。

 以下の問いに論理的観点からの真相を導きだしてもらいたい。

①『謎の女』は何故、ほぼ毎日『夜用ナプキン』と『エロ本』を購入するのか?
  その使用目的は?

②『謎の女』の体重は?

③秀さんのカッコよさの秘訣は?

④果たしてこの問題は真剣に考えるに値することなのか?


 以上、見事正解をもたらした方には、特に何をしてあげられるわけではないけれど、とりあえず褒めてあげます。

 では、また。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

DJヒデミチ

2008-08-13 | ある物語
「今夜も

   センズらナイト!!」


え~、そういうことで今週も始まりました、ワタクシDJヒデミチがこのクソ暑い中にありながらも、毎晩、孤独にさいなまれてチンポコ握ってる野郎どもにお届けする、小粋で生臭い番組『今夜もセンズらナイト!!』

まずはリスナーのお便りから紹介しようと思ったんだけど、一枚目のこのハガキ、妙にカピカピでイカ臭いんだわ。しかもところどころ滲んでて読めやしない。かろうじてこのバカのラジオネームらしきモノは解読できるんだけど・・・えっと・・・ノ、ノロモ・・・まぁ、いいや。次のハガキいこ。

え~、と、、、これは、ラジオネーム『短小、包茎、オレ早漏』さんね。最低のラジオネームだな。

「おまんこです!ヒデミチあにぃ!」

はい、おまんこねー。

「毎週この時間になるとヒデミチあにぃと一緒にチンコ握りながら聞いてます!」

いや、オレは握りながら喋ってるワケぢゃねーよ。

「ヒデミチあにぃ、よろしければオイラの悩み、聞いてクンニますか?(笑)」

なにが「クンニますか?(笑)」だ。なんかとってもムカつくな、コイツ。だいたいテメェの悩みって短小包茎早漏ぢゃねーのか?そもそもこのバカに悩みがあるのか?まぁいいや、聞いてやる。

「じつはぁ、オイラぁ、ある女の子のことが好きになってしまったんですよぉ。でぇ、その子に告白しようと思うんですけど、オイラ純情を絵に描いたような人間だからぁ、その子の前にいくと、どうしてもボッキしちゃうんですよぉ・・・でぇ、いつもパンツに擦れてイッちゃってぇ、告白するタイミングを逃してしまうんです(泣)
勃ちっぱなしのヒデミチあにぃ!どうしたらいいでしょうかね?」


知らねーよ!!!
 
もう、あれだ、二三回ヌイてから告白しにいけ。それかもう、たれ流しで告白しろ。どっちにしろオマエみたいなヤツが告白なんてするんぢゃない!オマエの存在はもはや犯罪だ。

さて、そういうワケで、『短小、包茎、オレ早漏』からのリクエスト、マギバラノリユギの『もう自慰なんてしない』

ちぇけらー♪





・・・・・つづく?


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ボーイズ・ラヴ☆☆☆

2007-12-26 | ある物語
 ライバル出現。

 そいつの名は『カリヤザキ』

 名前に似合わずマッチョなカリヤザキは入部した時から何かと先輩たちに目をかけられていた。
 だが、僕の敬愛する唯一の先輩は崇高なる人格者なので、部活の際に贔屓や差別などする由もなく、我々弱輩者たちに分け隔てなく『愛のシゴキ』を施してくれる。

 しかし僕はあまりにも軟弱で、その熱く激しいシゴキに二分と耐えられた例がない。あろうことか、最近では先輩の熱い想いに応えようと焦るあまり、わずか三十秒程度で臨界点に達してしまう。日々の自主トレもこのところ両親が心配して聞き耳を立てている様子で、なにかとままならない。

 今日も僕は、なんともだらしなく、早々に音をあげてしまった・・・。

 そんな僕を嘲笑うかのように、カリヤザキは僕の横で先輩の激しいシゴキに耐え続けている。

 床に這いつくばりビクンビクン痙攣する身体を必死で押さえつけながら、僕は恨めしげにカリヤザキを見上げる。
 先輩はカリヤザキをシゴくのに夢中で、力尽きた僕には見向きもしない・・・悔しさと寂しさが混濁した気持ちで、二人を見つめる。

先輩「よぅし!カリヤザキ!スピードをあげるぞ!」

カリヤザキ「オッス!先輩っ!ハァ、ハァ、自分、ハァ、まだまだ、ハァ、大丈夫で、ハァ、ありまっす!」

先輩「よぉぉぉし!いくぞっ!おりゃぁぁぁ!せいっ!せいっ!せいっ!」

カリヤザキ「ハァっ!ハァっ!ハァっ!ハァっ、、、あぁっ!先輩っ!先輩っ!」

 僕は堪らなくなり、二人から目を背け、必死に立ち上がろうとする。が、僕の脆弱な精神と軟弱な肉体では、このビクンビクンと痙攣する身体を押さえつけることままならず、歯を喰いしばり、必死になって立つも、その足取りはフラフラと覚束ない。

 そんな僕の足元が、ふと、もつれてしまい、思わずカリヤザキの方へ倒れこみそうになった。

僕「あっ!」

カリヤザキ「ぬおぅっ!」

 カリヤザキはそれに気付き、咄嗟に僕の身体を支えようとした、が、しかし、カリヤザキの肉体も、ほぼ臨界点に到達寸前であったらしく、僕を支えたままグラリと身体を傾け歪な叫び声とともに倒れこんでゆく。

カリヤザキ「あふぅぅぅん・・・」

 その刹那、太くて硬い腕が、僕ら二人の身体をガッシリと受け止め、キツく抱き締め上げた。
 そう、それはもちろん、憧れの先輩の、熱い、熱い、腕であった。

僕「あっ・・・せ、先輩・・・」

 僕の鼻腔に先輩の汗の匂いが拡がる。

カリヤザキ「ハッ、ハウっ・・・せ、せんぱ・・・あふぅ・・・ハァ、ハァ、ハァ・・・」

 カリヤザキはどうやら絶頂に達した模様で、先輩の厚い胸板に顔を埋め、荒い息遣いを繰り返している。

先輩「おいっ!お前ら、大丈夫か?」

 僕とカリヤザキはまるで抱かれた子犬の如く、情けない表情で先輩の顔を見上げた。

 僕とカリヤザキは「オ、オッス・・・」と気の入りきらない返事をして、ゆるゆると先輩の身体から離れた。

 チラリとカリヤザキの顔を窺うと、頬が上気し、ほんのり薄紅色を湛えていた。僕も、同じ顔をしているんだろうか?と、火照る身体を押さえこみながら、しばしの間、まどろんでいた。

 その後もシゴキは続行され、いつものように足腰がガクガクになり、出るものも出なくなった頃、部活は終了した。

「おぅ、お前ら。また、明日な」

 解散間際、先輩は僕とカリヤザキに向かってニッコリと白い歯を覗かせ微笑み、片手を挙げ、去っていった。

 その後姿を呆然と見つめていたら、横からカリヤザキが、

「一緒に、帰らないか・・・」

 と、照れ臭そうに僕を誘った。

 僕らはフラフラな足取りで夕日が滲む河原の土手を無言で歩いていた。

 なんとなく気詰まりだったので僕は話しかけようとした。

僕、カリヤザキ「なぁ・・・」

 カリヤザキも同じ思いだったらしく、二人の言葉が、重なった。

僕「あっ、な、なに?」

 僕は咄嗟にカリヤザキの二の句を促す。

カリヤザキ「先輩、カッコイイよなぁ・・・」

 僕は思わずカリヤザキの顔を凝視してしまった。でもカリヤザキは、なんだか眩しそうに目を細め、夕焼けの空を仰いでいる。

 その姿が、なんだかちょっぴり美しく見えて、僕はしどろもどろになりながらも「あ、ああ、そ、そうだな・・・」と応えた。

 するとカリヤザキは「ヨシッ!決めた!」となにやら勝手に気合を入れて語りだした。

カリヤザキ「オレ、先輩のことが好きになった!だから、オレ、先輩の全てが、欲しい!先輩の全てを、受け入れたい!そして、先輩にもオレの全てを、受け入れてもらうんだ!そして、いつかオレも、先輩のような『漢(おとこ)』になるんだ!」

僕「はわわわ、、、ぼ、僕も、き、君と同じことを、ずっと、思っていたんだ・・・・」
 
 動揺を隠すことも、己の想いを偽ることも忘れ、言い募った。

カリヤザキ「そうか!オマエも、先輩のことが好きなんだぁ!わははは!」

 僕はこっくりと頷いた。きっと今の僕の顔は、これ以上ないくらい赤面しているのであろうが、夕焼けがそれを優しく紛らしてくれている。

カリヤザキ「それじゃあ、オレとオマエは『ライバル』ってとこかな。お互い、先輩目指して、大いに励もうではないか!」

 そう言ってカリヤザキは右手を差し出してきた。どうやら握手を求めているらしい。イヤハヤ、なんとも、清々しい奴ではないか。今までの君に対する誤解と偏見を、許してくれ!
 そんな気持ちを込めて、僕は握手に応じた。

 カリヤザキはキラキラと瞳を輝かせ、真っ直ぐに僕の瞳を見つめてくる。今にもほとばしりそうなその情熱に、僕は心を打たれ、瞳が潤みそうになったのだが、握り返した彼の右手は、なにやらネットリと濡れそぼっていて、それが少々気にかかっていた。

 ともあれ、良き『好敵手(ライバル)』と巡り合い、これからお互いに切磋琢磨し、更なる『漢(おとこ)』への極みへ突き進んで行けると思うと、全身が身震いし、熱いモノが込み上げ、流れ出そうな、勢いである。

 僕はその夜、早速、カリヤザキのマッチョな肉体、キラキラ輝く瞳、ネットリと濡れそぼった右手を脳内に浮かび上がらせ、両親にバレないよう、静かに、自主トレに勤しんだ。

僕「ハァ、ハァ、ハァ、、、あぁぁっ!カーリーっ!カーリーっ!・・ぃいいいぃぃぃん、、、くはぅっ!っはっ・・・ぅぅぅぅ・・・」

 あだ名は『カーリー』と命名しておいた。



 ボーイズ・ラヴ☆・・・それは、真の『漢(おとこ)』たちの、熱き物語で、ある。


 つづく・・・(いや、ホント、つづける気ないんだってば!




 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ボーイズ・ラヴ☆☆

2007-12-20 | ある物語
 いつも先輩に迷惑ばかりかけてしまう、己の不甲斐無さを鍛え上げるべく、僕は自主トレーニングを始めることにした。

 これから毎晩、親が寝静まった頃を見計らって、僕は精神を集中させ、先輩の厳しくも温かな眼差しを思い浮かべ、ひたむきに、己を鍛え上げよう!

 さっそく僕は瞳を閉じ、先輩の姿を思い浮かべ、肉体の一部を硬直させ、いつもの先輩のシゴキに倣って、己自身に鞭打つ。

 ・・・・・・・・・・。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・・くっ!な、なにくそっ!」

 始めてから三十秒、早くも音をあげそうになる。我慢だ!我慢するんだ!

 僕は必死に先輩の厳しい顔を脳裏に浮かび上がらせる。

「ハァ、ハァ、ハッ!・・・せ、せんぱ・・いぃぃぃぃ・・・くはっ!」

 僕はビクンビクン痙攣する身体をベッドに横たえ、打ちひしがれた・・・。

 くそぅ、こんなことでは、先輩の熱き想いには到底応えられないぞ!くそぅ!先輩!すみませんっ!

 心の中で先輩に詫びを入れる。

 すると、心の中の先輩が、とても優しい笑顔で「大丈夫、オマエならやれる。ホラ、立て。立ってもう一度、オレに『漢(おとこ)』を見せてくれ!」と激をとばしてくださった。

 僕は、身体の内からみるみる力が湧き上がってくるのを感じ、雄叫びとともに、猛々しく、その身を屹立させた。

「オッス!もう一度、お願いします!」

 そう言って2ラウンド目に入ろうとした瞬間、部屋の扉が微かに開いて両親の心配そうな顔が現れた。

「お、おい・・・だ、大丈夫、か?」父が不安そうに訊ねる。

 軟弱であがり症の僕は、秘密のトレーニングを覗かれたことに困惑し、「せ、先輩が、先輩が、、、優しすぎるんだ・・・」と意味不明の回答を投げつけたまま、布団にもぐり込んでしまった。

 そんな僕に、父は「あんまり根を詰めすぎるなよ。おやすみ・・・」と囁き、ソッと扉を閉めた。
 父は廊下で不安に駆られている母に「『漢(おとこ)』には、『漢(おとこ)』の事情ってものがあるんだ、ソッとしておきなさい」そう宥めすかしてその場を後にした。

 僕は、父の『漢(おとこ)』に胸を打たれ、うっすらと瞳に涙を浮かべた・・・。



 ボーイズ・ラヴ☆・・・それは、真の『漢(おとこ)』たちの、熱き物語で、ある。


 つづく・・・(いやいやいや、だから、つづかんて・・・)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ボーイズ・ラヴ☆

2007-12-19 | ある物語
 空手部の先輩のシゴキは、とても厳しく、とても、激しい・・・。

 軟弱な僕は、いつも耐え切れず、すぐに音をあげてしまう・・・。

先輩「オラァ!もっと気合を入れんかー!」

僕「お、オッス!」

先輩「よぉし、だんだん固くなってきたぞぉ!」

僕「おぉぉ、オッスぅぅ!・・・あっ、、あぁっ・・・せ、先輩・・・」

先輩「どうしたっ!」

僕「おぉぉっすっぅ、、ハァ、ハァ、じ、自分はぁ、、も、もぅ・・・」

先輩「ナニをぬかすー!まだ一分も経っておらんぞー!」

僕「おおおっ、、くはっ!ああぁっ!ああっ!・・で、でもっ、、、もぅ、、げ、限界で、あり、ま、っはっ!!!ハウァッあ!」

 ・・・・・・・・・・。

 僕は「ビクンビクン」と痙攣する身体を床にへばりつかせ、忸怩たる吐息を荒げる。
 いつもこうだ・・・軟弱な僕は、先輩のシゴキに二分ともったためしが、ない。

 悔し涙を堪え、必死に立ち上がろうとする僕の目の前に、先輩が「スッ」と己のタオルを差し出し「これで拭け。拭いたら、もう一度だ」と、温かい眼差しを向けた。

 僕は先輩の熱き想いに応えるべく、もう一度、力を振り絞って、立ち上がる。

先輩「そうだ、立て!立つんだ!オマエは、何度でも立つことができる『漢(おとこ)』なんだっ!」

僕「オッス!」

 先輩の汗の匂いが染み付いたタオルを握り締め、僕は猛々しく、屹立した。

先輩「よぅしっ!いくぞっ!」

僕「オッス!」

 僕は先輩の瞳を見つめ、先輩は僕の瞳を見つめる。

先輩「はじめっ!」

 ・・・・・・・・・・三十秒後。

僕「あっ、あふぅっ!!!」

先輩「き、キサマー!早すぎるぞー!」


 先輩のシゴキは、とても厳しく、ときに激しく、ときに、優しすぎるのだ・・・。




 ボーイズ・ラヴ☆・・・それは、真の『漢(おとこ)』たちの、熱き物語で、ある。
 
 つづく・・・(いやいや、つづかんて・・・)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宇宙

2007-09-21 | ある物語
 暑さで目が覚めた。

 僕は朦朧とした感覚の中でグショグショになったシーツの感触を全身に捉えて、「ハッ、もしや・・・」と愚鈍な覚醒の中、股間の辺りをまさぐった。
 だが、ソコから派生したにしては、やけにシーツ全体が濡れているので、すぐさま、「これは寝汗だ」と解釈し、納得した。いや、何だか「させられた」と言った感じだ。

 誰に?

 誰でもない。ただ、納得の前提でその理解を示すモノとは、まさぐった右手が掴んでいる、異常に固く膨らんだ己のペニスであった。

 そう、僕の『宇宙』は、ソコに集約されているのだ。

 僕は気だるく瞼を閉じ、『宇宙』を掴んでいた右手に少し力を加え、「握る」と「包む」の間くらいの力加減で、右手をゆっくりと上下に動かしはじめた。

 正直、眠い。僕はチラッと頭の位置から右斜め上に置かれている目覚まし時計に目をやる。今日は休日なので、いつもの『am6:45』の目覚ましは解除されている。うっすらと見えた時刻は、まだ『am5:00』を少し過ぎたところだった。
 思いのほかに早朝であったので僕はウンザリしながら『宇宙』をしごき続けた。
 ズボンとパンツはすでに膝の辺りまでずり下ろしていた。
 
 お腹の弱い僕はどんなに暑くても必ず下腹部にはタオルケットをかけているので、異常に膨らんだ僕の敏感な『宇宙』の先が、タオルケットのゴワゴワした感触を捉える。

 暑い・・・厚い・・・。コンドームがタオル生地だったら、こんな具合かなぁ・・・。

 などと無理やりにしょうもないことを考え、笑おうとしたが、上手く、イカない。

 ビッグバンはなかなか訪れず、しごき過ぎで少々痛くなってきた。

「シャッ、シャッ、シャッ」

 渇いた音が朝の静寂に虚しく響く。なんだかとても、耳障りだ。

「チッ!」

 焦燥感から僕は意識的な、いかにもわざとらしい舌打ちを吐き、「ギュッ」と目を瞑り、己の考えうる精一杯のエロスを頭に描く。
 が、やはり、上手く、イカない。

「チッ!」

 今度は自然に舌打ちが吐いて出た。もはや気ばかりが急く。

「シャッ!シャッ!シャシャッ!」

 時折リズムに変化をもたせながら、尚且つ上下運動を徐々に速めてゆく。

 痛い。

 疲弊した右手を少し緩めてみた。すると、どうだろう、今まで気づかなかった、いや、目を逸らしていた真実の欲求が、しだいに露わになってきた。

 
 小便がしたい。


         (了)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

あなたのキスを数えましょう

2006-09-01 | ある物語
「話が、あるの・・・」

 そう云って彼女は、そろそろ通いなれ始めた僕の部屋にやってきた。
 
 付き合いだしてから三ヶ月、でも、その間二ヶ月半ほどは彼女の心には別の男がいた。

 僕はとうとう、この日が来たのかと、半ば諦め気分のわざとらしい卑屈な笑顔をつくり、彼女を迎え入れた。

 僕は彼女をキッチンのテーブル椅子に座らせ、いつもより時間をかけ、丁寧に二人ぶんのコーヒーを淹れた。
 僕は無言で彼女の前に深い香りの漂う陶器のコーヒーカップを置いた。

「ありがとう」

 彼女は一口、静かに啜り、いつもの、苦さを押し殺すような顔をした。
 僕は少しだけ口元をほころばせ、ステッイックシュガーとミルクを差し出したが彼女は首を振り、また一口、苦味を口にした。

 僕は彼女の真向かいに腰を下ろし、いつもは目を瞑って味わう最初の一口を今日は彼女をジッと見つめ続けながら、飲み込んだ。
 彼女は僕の視線にハッとして、目を逸らした。

 もう、間違いないだろう・・・。

 僕はうつむき、コーヒーカップを所在無げに撫でていた。

 すると彼女は唐突に、いや、ここまでの彼女の心の中では様々な想いが、繰り返し繰り返し、堂々巡りの中をもがき続け、今、ようやく、ここに辿り着いたのだろう・・・そう、思いたい。

「ワタシと・・・別れて、ください・・・」

 予期していたこととはいえ、やはり直接その言葉を耳にすると、ダメだった。僕は数秒、いや、数十秒、数分か?身じろぎもせず、彼女を見つめ続けていた。
 しかし、ほどなく、僕は首を縦に振ることが、できた。

 理由なんて今更、訊く必要も無い。まして、考え直してくれ!などと、云うこともできない・・・。もう、ずいぶん永い間、僕らは苦しんできたんだ、それが、今日、ようやく、終わるんだ・・・。

 僕がコーヒーを飲み終えると彼女は立ち上がり、カップを片付けようとした。
「いいよ」
 自然に、自然に、云えた、はずだ・・・。投げやりでもなく、キツくもなく、少しはにかむくらいの笑顔の口元で、云えたはずだ。
 
 でも、それがまずかった・・・。
 僕はもう、気持ちを堪えるのに限界だった。
 僕は彼女に背を向けたまま、キッチンに佇んでしまった。

「それじゃぁ、いくね・・・」

 そんな僕の気持ちを察してくれたのか、彼女はバッグを手に取り、玄関に向かっていった。
 見送る必要なんてないんだ。そう思いながらも、やはり僕は彼女を追いかけてしまう。そう、最後の最後まで・・・。

 僕は何も云えずに、ただ、うつむいているだけだった。ともすれば涙が溢れ出しそうな僕は、もう彼女の顔さえ、まともに見れず、壁にうな垂れている。
 彼女は靴を履くため、一瞬屈み込んだ。
 そのとき、フッと僕の視界に彼女の顔が映りこんできた。
 そのまま、彼女の顔が近づいてきて、ソッと僕にキスした。
 ほんの二、三秒の、別れのキス。

「それじゃあ」
 彼女は今まで僕が見た中で一番綺麗な笑顔を浮かべ、去っていった。

 呆然とするしかない僕であったが、そのとき気付いたことは、今まで彼女と数え切れないくらいのキスをしてきたけど、彼女のほうからしてきたキスは、これが最初で最後だったんだ・・・。

 僕はそのまま、玄関で声を殺し、泣き崩れた。
  
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする