いつものように妻と2人きりの夕飯を食べ終え、独りでちびちびと焼酎を舐めていると、これまたいつものように、妻が鬱陶しく話しかけてきた。
だが、今日は、いつものオチもヘッタクレもない愚にもつかない戯言ではなく、なかなか興味をそそられる話であった。
「あのさ、うちの店(コンビニ)に来るお客さんでちょっと変な人がいるんだよねぇ」
「いや、オマエんとこにくる客、変なヤツばっかりぢゃん。隣に誰もいないのに見えない誰かとフツウに会話してるヤツとか、ポケモンの薀蓄(うんちく)を滔々と語ってくオタクとか、美人のパートさんを狙ってる妻子持ちストーカーとか、レジの台にチンコ乗っけるヤツとか・・・」
「たしかに、そうなんだけど、まぁ、聞け」
「ハイ・・・」
「その人はね、あっ、女の人なんだけど、ここ最近ほぼ毎日のように来るんだけど・・・」
「『ほぼ毎日』ってのは、毎日ではないんだな?『ほぼ』というのは、『およそ』とか『だいたい』って意味であって、然るに『毎日』という意と反する語である、故に・・・」
「あー、うるさいっ!とにかく、三日と空けずに来るんだよっ!」
「怒らなくてもいいぢゃない・・・・で?」
「で、その女の人、来ると必ず買ってく物があるんだよ」
「なに?」
「なんだと思う?」
「知らねーよ!もったいぶるなっ!」
「怒らなくてもいいぢゃない・・・・で、それが、ホント、毎回買っていくんだよ」
「だからナニ!?」
「夜用のナプキンとエロ本」
「ぶはっ!!!なにそれ?」
「わかんない・・・とにかく、お菓子とかおにぎりとかと一緒にそれらも必ず買っていくんだよ」
「ほぼ毎日?」
「ほぼ毎日」
「うーん・・・ここ最近って、どれくらいの期間?」
「もう一、二ヶ月は来てる」
「血、出っ放し?」
「まさか?」
「全部、夜用?」
「ナイトガード」
「じゃあさ、エロ本って、どんなの?」
「どんなって?」
「いや、色々あるだろ。漫画のヤツとかフツウのグラビアっぽいのとか、盗撮モノとかロリコンモノとか鬼畜系とか・・・」
「いやぁ・・・フツウの、よくある写真のエロ本だと思うけど、漫画ではないなぁ」
「ふーん・・・・それをここ一、二ヶ月、ほぼ毎日、買っていく『謎の女』ねぇ・・・」
「その人ね、ちょーっとフツウではない感じなんだよねぇ。小銭いっぱい持ってるのに絶対にお札出すし、なんか計算できないっぽいみたいでぇ・・・」
しばし私はその光景を頭の中で思い浮かべながら、その女性の心理を追ってみたり、エロ本の表紙を妄想したりしてみる。そして今までの会話を反芻し、全ての事象を並べ替えたりしてみる。すると自ずとひとつの結論に達してきた。しかし、まだ、なにかが、あとひとつ、それを決定付けるピースが見当たらない。
考えあぐねいている私にむかって、妻が思い出したように言う。
「そうそう、その人、かなりの『デブ』なんだよねぇ」
その言葉は私の脳髄に閃光を走らせた。
「それは本当か!かなりの『デブ』なんだな?」
「うん、ハンパねぇ」
これだから話下手のヤツにはかなわない。いちばん肝心なピースを忘れているとは、しかし、これで謎は全て解けた!真実はいつも一つだ!
私は不敵な笑みを湛え、妻に『謎の女』の真相を語りだした。
≪読者への挑戦状≫
これまでの話で、この『謎の女』の珍妙な買い物の真相を解き明かすピースは全て揃っています。
そこで私は、読者諸君に挑戦する。
以下の問いに論理的観点からの真相を導きだしてもらいたい。
①『謎の女』は何故、ほぼ毎日『夜用ナプキン』と『エロ本』を購入するのか?
その使用目的は?
②『謎の女』の体重は?
③秀さんのカッコよさの秘訣は?
④果たしてこの問題は真剣に考えるに値することなのか?
以上、見事正解をもたらした方には、特に何をしてあげられるわけではないけれど、とりあえず褒めてあげます。
では、また。
だが、今日は、いつものオチもヘッタクレもない愚にもつかない戯言ではなく、なかなか興味をそそられる話であった。
「あのさ、うちの店(コンビニ)に来るお客さんでちょっと変な人がいるんだよねぇ」
「いや、オマエんとこにくる客、変なヤツばっかりぢゃん。隣に誰もいないのに見えない誰かとフツウに会話してるヤツとか、ポケモンの薀蓄(うんちく)を滔々と語ってくオタクとか、美人のパートさんを狙ってる妻子持ちストーカーとか、レジの台にチンコ乗っけるヤツとか・・・」
「たしかに、そうなんだけど、まぁ、聞け」
「ハイ・・・」
「その人はね、あっ、女の人なんだけど、ここ最近ほぼ毎日のように来るんだけど・・・」
「『ほぼ毎日』ってのは、毎日ではないんだな?『ほぼ』というのは、『およそ』とか『だいたい』って意味であって、然るに『毎日』という意と反する語である、故に・・・」
「あー、うるさいっ!とにかく、三日と空けずに来るんだよっ!」
「怒らなくてもいいぢゃない・・・・で?」
「で、その女の人、来ると必ず買ってく物があるんだよ」
「なに?」
「なんだと思う?」
「知らねーよ!もったいぶるなっ!」
「怒らなくてもいいぢゃない・・・・で、それが、ホント、毎回買っていくんだよ」
「だからナニ!?」
「夜用のナプキンとエロ本」
「ぶはっ!!!なにそれ?」
「わかんない・・・とにかく、お菓子とかおにぎりとかと一緒にそれらも必ず買っていくんだよ」
「ほぼ毎日?」
「ほぼ毎日」
「うーん・・・ここ最近って、どれくらいの期間?」
「もう一、二ヶ月は来てる」
「血、出っ放し?」
「まさか?」
「全部、夜用?」
「ナイトガード」
「じゃあさ、エロ本って、どんなの?」
「どんなって?」
「いや、色々あるだろ。漫画のヤツとかフツウのグラビアっぽいのとか、盗撮モノとかロリコンモノとか鬼畜系とか・・・」
「いやぁ・・・フツウの、よくある写真のエロ本だと思うけど、漫画ではないなぁ」
「ふーん・・・・それをここ一、二ヶ月、ほぼ毎日、買っていく『謎の女』ねぇ・・・」
「その人ね、ちょーっとフツウではない感じなんだよねぇ。小銭いっぱい持ってるのに絶対にお札出すし、なんか計算できないっぽいみたいでぇ・・・」
しばし私はその光景を頭の中で思い浮かべながら、その女性の心理を追ってみたり、エロ本の表紙を妄想したりしてみる。そして今までの会話を反芻し、全ての事象を並べ替えたりしてみる。すると自ずとひとつの結論に達してきた。しかし、まだ、なにかが、あとひとつ、それを決定付けるピースが見当たらない。
考えあぐねいている私にむかって、妻が思い出したように言う。
「そうそう、その人、かなりの『デブ』なんだよねぇ」
その言葉は私の脳髄に閃光を走らせた。
「それは本当か!かなりの『デブ』なんだな?」
「うん、ハンパねぇ」
これだから話下手のヤツにはかなわない。いちばん肝心なピースを忘れているとは、しかし、これで謎は全て解けた!真実はいつも一つだ!
私は不敵な笑みを湛え、妻に『謎の女』の真相を語りだした。
≪読者への挑戦状≫
これまでの話で、この『謎の女』の珍妙な買い物の真相を解き明かすピースは全て揃っています。
そこで私は、読者諸君に挑戦する。
以下の問いに論理的観点からの真相を導きだしてもらいたい。
①『謎の女』は何故、ほぼ毎日『夜用ナプキン』と『エロ本』を購入するのか?
その使用目的は?
②『謎の女』の体重は?
③秀さんのカッコよさの秘訣は?
④果たしてこの問題は真剣に考えるに値することなのか?
以上、見事正解をもたらした方には、特に何をしてあげられるわけではないけれど、とりあえず褒めてあげます。
では、また。