秋から冬にかけ各地で様々な美術展が開催されている。昨年の今頃は、東京都美術館でフェルメール展が開かれていて、かなり話題になっていた。100万人近い人がフェルメール展に足を運んでいる。私もその中の一人だ。美術の教科書に載っていたのをかすかに覚えている「牛乳を注ぐ女」を間近で見て驚いたのは、絵に近づいたり、遠ざかったりすると、壺の中の牛乳がトクトクと音を立てて流れ出すことである。パンの質感や使用人の服の襞の描写が、それはそれは見事だった。
だが、「名画の言い分」の著者、木村泰司氏によれば、そんなことで驚いているだけでは、十二分に鑑賞したことにはならないのだそうだ。「西洋美術は見るものではなく、読むものです。」というのが彼の主張である。この本を読むと、なるほどと思う。古代ギリシャからルネッサンス、印象派に至るまで、その時代時代に描かれた絵を丁寧に読み解いてくれる。
写真の絵は、「薔薇を持つマリー・アントワネット」だ。きれいで品のいい絵だと思うが、当時のフランス国民にとってはそうではなかったらしい。この時代の肖像画では、手に何を持っているかはとても重要で、薔薇の花を持つこのポーズは、王妃にしては軽すぎるのだそうである。確かに、肖像画で自分の理性を喧伝したポンパドゥール夫人は本を手にしている。その上、マリー・アントワネットの着ているブルーのドレスは、当時最新流行のファッションで舞台女優が着ていたものだそうだが、この時代は「女優」と「売春婦」とは同義語だったという。何も知らずにこの絵を見ていると、そんなことには少しも気付かない。つまるところ、こういう肖像画を描かせたマリー・アントワネットが、いかに現実感に乏しい王妃だったかということを表しているそうだ。なるほど・・・
「名画の言い分」を聞いてから、絵画の鑑賞がより楽しくなった。
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だが、「名画の言い分」の著者、木村泰司氏によれば、そんなことで驚いているだけでは、十二分に鑑賞したことにはならないのだそうだ。「西洋美術は見るものではなく、読むものです。」というのが彼の主張である。この本を読むと、なるほどと思う。古代ギリシャからルネッサンス、印象派に至るまで、その時代時代に描かれた絵を丁寧に読み解いてくれる。
写真の絵は、「薔薇を持つマリー・アントワネット」だ。きれいで品のいい絵だと思うが、当時のフランス国民にとってはそうではなかったらしい。この時代の肖像画では、手に何を持っているかはとても重要で、薔薇の花を持つこのポーズは、王妃にしては軽すぎるのだそうである。確かに、肖像画で自分の理性を喧伝したポンパドゥール夫人は本を手にしている。その上、マリー・アントワネットの着ているブルーのドレスは、当時最新流行のファッションで舞台女優が着ていたものだそうだが、この時代は「女優」と「売春婦」とは同義語だったという。何も知らずにこの絵を見ていると、そんなことには少しも気付かない。つまるところ、こういう肖像画を描かせたマリー・アントワネットが、いかに現実感に乏しい王妃だったかということを表しているそうだ。なるほど・・・
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