やっぱり。オー・ヘンリーで意気投合したやに見えた弁護士の卵に対して、るいが放った「ありがとうございました」は単に仕事上のお礼ではなく、「一瞬、いい夢を見せてもらいました」を含意する訣別宣言と見た(朝ドラ「カムカムエヴリバディ」の再放送)。「元宇宙人」のジョーがオー・ヘンリーを読むとは思えないから、るいは、オー・ヘンリーに関して弁護士の卵からジョーに乗り換えたのではなく、オー・ヘンリーからサッチモ=ルイ・アームストロングに乗り換えた、と言ってよいであろう。オー・ヘンリーの小説の粗筋を深津絵里が主人公に扮して説明するシーンがもう見れないとなると残念である。
「カムカム」にこれ以上オー・ヘンリーが出てこないとなると、私のオー・ヘンリー・ネタは「善女のパン」と「よみがえった改心」で打ち止めになりそうである。その「よみがえった改心」をちゃんと読んだのはつい最近だが、粗筋(足を洗った元金庫破りが、彼を付け狙う刑事の見ている前で、金庫を破って中に閉じ込められていた子供を救出したうえで刑事に自首するが、刑事はあんたなど知らないと言う)は半世紀前に知っていた。それはすなわちテレビで見たアニメの「おそ松くん」の番外編である。チビ太が元金庫破りで、刑事がイヤミだ。子供を救出した後、手錠をかけてくれと手を差し出すチビ太に対してイヤミ刑事は「ミーはあんたのことなど知らないざんす」と言って去るのである。
感動的な話だが、疑問があった。子供を救出するために金庫を開けたところで何の罪にもならない。窃盗罪の可能性は皆無である。鍵を壊したのなら器物損壊罪の可能性があるが、それとて、子供を救出するためだから緊急避難に該当する。だから、イヤミ(刑事)としてもチビ太を逮捕する理由がないのである。そう考えると、別にイヤミが温情を示したわけでもないこととなり、感動する理由もなくなるのである。
だが、原作を読んで分かった。主人公は、出所してから数回金庫破りをしており、それが余罪となっていて、刑事はその件で主人公を追っていたのである。主人公は、子供を救出した後、その件で刑事に自首したのだから、刑事は十分主人公を捕まえる理由があったのだが、刑事は「あんたなんか知らない」と言ったわけだから、明らかに温情を示したのである。
厳しい刑事が温情を見せる点は、「レ・ミゼラブル」のジャヴェール刑事と共通である。ジャヴェール刑事とイヤミは「おフランス」つながりである(だが、イヤミはてかてかの日本人である。その髪型は、日本人指揮者によくある髪型である)。
それにしても、現朝ドラは、朝のBSでは往年の名朝ドラ「カーネーション」の直後に本放送で、昼の地上波ではこれまた往年の名朝ドラ「カムカムエヴリバディ」の直後に再放送。なにやら「あてつけ」のようでもある。
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