高齢期の備え

高齢期の備えを考えます

高齢期の備え35:高齢期の住まい(7)住み替えのリスク(1)

2019年10月10日 | 高齢期の備え
・高齢者向け施設・住宅への住み替えには様々なリスクがあり、せっかく住み替えても退去せざるを得ないこともあります。実際、逝去によって退所・退居される方は、特別養護老人ホーム約68%、介護付有料老人ホーム約55%、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅約30%となっていて必ずしも終の棲家になるとは限りません。
(出典:平成28年介護サービス施設・事業所調査 厚生労働省、平成25年度有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅実態調査研究事業報告書 公益社団法人全国有料老人ホーム協会)

・最初に、「自宅でない在宅 外山義 医学書院」を参考に、性格などのご自身の内面に潜むリスクを取り上げます。
○高齢者向け施設・住宅では住まいの「主」から住まいの「客」に変わります。家や借家に住んでいたときは住まいのルールは自分で決めることができましたが、住み替えた場合は施設側が決めたルールに従わなければなりません。自分よりも若い職員の指示に従うことになりもなります。長い間、主として振舞ってきたものが崩れることは人によっては耐えらないおそれがあります。
○高齢者向け施設・住宅では「自分の役割」が少なくなります。家ではたとえば食事を用意する役割があるのですが、食事の提供がある場合にはついついそれに頼りがちになります。自分の役割がなければ趣味などで時間を過ごすことになりますが、そうした時間の過ごし方に耐えられなくなるおそれがあります。
○高齢者向け施設・住宅では「集団生活」となります。食事は決められた時間内に取らなければなりません。もちろん自炊は可能なところもありますが食事サービスなどを期待して住み替える場合は入居者が同じ食堂で食事をすることになります。気ままな暮らしに慣れた方に集団生活が耐えられなくなるおそれがあります。また、「新しい人間関係」を築くことになりますが、何かのきっかけで入居者同士又は施設職員との人間関係に問題が生じると毎日の暮らしが楽しくなくなるおそれがあります。生活の範囲が狭く人間関係が濃くなり、嫌いな人を避けるだけの距離も取りにくくなるおそれもあります。
○ご自身の性格の問題ではありませんが、自分の持っていた施設・住宅の「イメージ」と実際に違いがあることがあります。たとえば家庭的な生活支援サービスを期待していたが事務的と感じてしまい、つらい思いをしながら住み続けたり折角住み替えたのに住み続けられなくなったりすることになります。このリスクは個人の受け止め方や感情の問題であることもありますし、入所・入居当初は問題がなかったもののスタッフの交代で施設・住宅の雰囲気が変わる可能性もあり、備えの難しいリスクではあります。