高齢期の備え

高齢期の備えを考えます

高齢期の備え37:高齢期の住まい(9)住み替えのリスク(3)

2019年10月12日 | 高齢期の備え
・有料老人ホームおいては、入居時に前払金(一時金)を必要とするところがあります。埼玉県を例にとると登録されている有料老人ホームの場合76%で入居時に前払金が必要となっています。

・もともと前払金は、生涯にわたって施設を使う権利の対価とされていました。長生きしても費用の心配がないという面がある一方で早く亡くなると費用が実質非常に高いという面もありました。2011年の老人福祉法の改正により権利金としての法的性格はなく、家賃、施設の利用料、介護や食事の提供、その他の日常生活に必要な便宜供与の対価の前払金であるという性格であることが明確にされました。

・注意点は「前払金は全額払い戻されない」ということです。実際、消費者生活センターに寄せられる有料老人ホームに関する相談の中で「入居後短期間で退居したが少額しか返還されない」という相談が多いという調査結果があります(出典:有料老人ホームの契約に関する実態調査 消費者委員会 平成22年)。高齢期には資金も限られますから、前払金の返還を前提に有料老人ホームから退居して困った事態になることがあります。

・前払金は、退居するときが「償却期間」と呼ばれる間であれば「初期償却」と呼ばれる分を差し引いて残った金額が退居した時期に応じて返還されます。ただし、入居後3ヶ月以内に退居した場合は入居から退居までにかかった費用を除き返還されます。初期償却が大きい場合は返還される額が小さくなり、償却期間を超えれば返還されません。