高齢期の備え

高齢期の備えを考えます

台風や大雨の復興に思う

2019年10月26日 | 漫筆
・台風や大雨で被災された方に心からお見舞い申し上げます。

・台風や大雨で浸水や土砂崩れのために甚大な被害が出ています。一日も早い復興が望まれるところですが、復興に当たって思うことがあります。

・浸水や土砂崩れは、地形と深く関係しており、河床よりも低い土地や急斜面に近い土地に建てられた家の被災が多いと思います。

・今後、土砂を取り除き、ライフラインを復旧して、家の修理や建て替えをすることになるでしょう。しかし、同じ場所で建て替えたとすれば、再び同じ被害に遭うリスクがあります。確かに堤防を強化するなどすればリスクは小さくなりますがゼロにはなりません。

・もし家を建て替えるとすれば、河床より高い土地や急斜面から離れた土地が必要でしょう。地域の絆を考えれば現在の家の場所にできるだけ近い場所が良いと思います。しかし、新たに土地を購入することになれば多額の必要が必要です。

・一方、現在では将来にわたって空き家や空き地になる可能性の高い物件もあります。何年にもわたって所有者が分からない場所もあります。こうした土地の中には浸水やがけ崩れのリスクが低いものもあります。

・近年では所有者不明の土地を国に移管しやすくするための登記手続きが改定されていると聞きますが、さらに進めて、浸水などの被災リスクの低い土地を自治体が購入しやすくする制度の整備が必要だと思います。たとえば、放置する年月が長い程「放置税」を累進的に課税するといったことも検討してはどうでしょうか。

・こうして自治体が確保しておいた土地を災害時に被災地と交換する制度を作ったらよいと思います。

・私有財産制度などとの関係で難しい問題があるでしょうが、難しいことを理由にすることは行政の怠慢と思います。少子化が進む中、住まいに必要な土地面積も減ってきます。少子化を防ぐことができれば、それに越したことはないでしょうが、防げないとすれば、それを活用することも考えるべきだと思います。

・国土強靭化のなかで防災は重要な位置を占めます。自治体や国には防災のため長期的で根本的な取り組みを一層強化していただくよう切に望みます。

高齢期の備え46:高齢期の健康(8)骨折・転倒

2019年10月26日 | 高齢期の備え
・高齢期の家での転倒の場所をみると、70歳代までは庭が多いのですが、80歳代以上では居間・茶の間・リビングなど平らな場所が多くなります。

・玄関や階段などハッキリした段差がある場所での転倒は、庭や居間に比べるとおよそ半分ぐらいです。

・庭には飛び石などによって段差がある場合があります。庭の景観との関係もあるでしょうが、通路として普段よく使う場所には飛び石やコンクリート平板は避け、予め平らにしておいた方がよいでしょう。

・実際に高齢になってから飛び石やコンクリート平板を取り外して、コンクリートで平坦な通路とすればよいと思われるかもしれません。しかし、高齢になると現状変更に抵抗感が出てきます。そのため飛び石などを放置しておいて、転倒してから平坦にする場合もあります。後の何とかになりかねません。

・現役世代のうちに、高齢期のことも配慮して家を造っておけば高齢期にも安心な家となります。

高齢期の備え45:高齢期の健康(7)骨折・転倒

2019年10月25日 | 高齢期の備え
・重度の介護原因に「骨折・転倒」があります。高齢者にとって大腿骨などの骨折は寝たきりになるおそれがあるなど大きなリスクがあります。

・高齢者の骨折の原因として転倒が80%を占めています(出典:高齢者における転倒・骨折の疫学と予防 日本老年医学会雑誌 43巻1号 2006)。

・転倒は、骨折しやすいなど身体的な側面と家などでつまずきやすい場所があるなどの環境の側面があります。

・骨折しやすい体となる大きな原因が骨粗鬆症と筋力の低下です。骨粗鬆症は女性に多く、この病気を持っている方の割合は60歳を過ぎると急に増え、80歳以上の女性では半数以上に骨粗鬆症があります。

・筋力の低下については、筋力の低下をしている人は低下していない人に比べて4.4倍転倒の危険性があるという調査結果もあります(出典:転倒をなくすために 慈恵医大誌Vol.123)。筋肉が低下していない人100人のうち10人が転倒すると仮定すると、筋肉が低下している人100人は44人転倒することになります。

・高齢になっても筋力の維持をするには歩くなどの運動習慣が役立つと思います。「習慣」ですから現役時代に習慣にしておくことが望ましいと思います。歩くことを面倒に思わないとか、できるだけ階段を使うとかといったことを心がけることが高齢期の自分を守ることになると思います。

高齢期の備え44:高齢期の健康(6)認知症

2019年10月19日 | 高齢期の備え
・認知症になるリスクを下げるためには生活習慣と運動習慣を改善することです。

・糖尿病になるとアルツハイマー型認知症にあるリスクが2.1倍になります(出典:久山町研究ホームページ 九州大学)

・このリスクからみると糖尿病でない100人のうち10人がアルツハイマー型認知症になると仮定すると、糖尿病の100人のうち21人がアルツハイマー型認知症なる可能性があることになります。

・糖尿病については以後のブログで取り上げます。

・運動習慣も認知症のリスクを下げます。40歳代、50歳代で運動習慣のあった方は、ない方に比べて認知症になる割合が明らかに小さく、運動の強さは「平地をゆっくり歩く程度」よりも「汗ばむ程度に無理なく持続できる運動」とすればより効果が高いとされています(出典:中高年期の運動の重要性 運動基準改定検討会(H24.11.7) 鈴木構成員提出資料)。

・運動習慣とは「1回当たり30分以上の運動を週2回の頻度で1年以上継続している(厚生労働省)」をいいます。

・認知症は脳血管疾患と並んで重度の介護が必要になる原因です。現役時代に生活習慣や運動習慣に気を付けることで認知症になるリスクを下げることができます。


高齢期の備え43:高齢期の健康(5)認知症

2019年10月18日 | 高齢期の備え
・高齢になると記憶力などは誰でも穏やかにではありますが低下します。しかし、認知症は記憶力の低下とは異なり、若い頃に得られた記憶、認識、判断などが衰え生活に支障がでる病気です。

・認知症の軽重の尺度は普段の生活への支障から判定し、日常生活自立度(Ⅰ~ⅣとM)として判定されます。これは介護度とは別の尺度ですが、日常生活自立度がⅠからⅣになるにつれて介護度も重度になるという大まかな相関はあります。

・認知症はアルツハイマー病が最も多く、次いで脳血管性認知症と続きます。一人ひとり進行の速さは異なりますが、アルツハイマー型では、日常生活自立度Ⅰ~Ⅱの期間が5年程度続いた後、数年でⅢ、Ⅳと進行し介護困難になるというパターンもあります(出典:「認知症施策の現状」 平成26年12月19日 厚生労働省)。

・認知症を有する人の割合を推算すると、70歳代から増えはじめ、同年代であれば男性より女性の方が認知症を有する人の割合が高く、たとえば80歳代後半の女性10人のうち4~5人がランクⅠ以下の生活自立度になると推計されます。またランクⅡとランクⅢの方の割合が多く、ランクⅣとランクMは相対的に少ないといえます。

・現在のところ、認知症は脳血管性認知症を除き、薬で進行を遅らせることはできますが治すことはできません。

・認知症の前段階として、正常と認知症の中間で「軽度認知障害」と呼ばれる物忘れが以前よりも強くなった状態があります。この段階で認知症の予防のための対策をとれば進行を遅らせたり認知症に至らなかったりする可能性もあります。

・どのようにして認知症になるかは完全に解明されていませんが、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、タバコ、頭部外傷、高齢になってからのストレスなどにより認知症になる可能性が高くなることがわかっています。認知症の割合は現在のところ7人に1人ですが、糖尿病患者が増えることにより将来は5人に1人となるという見込みとなっています。