豚も杓子も。

私にすれば上出来じゃん!と開き直って、日々新たに生活しています。

二つのお芝居

2009年06月15日 | Weblog
「楽屋」と「桜姫」。
今回は、この二つのお芝居を見るために東征してきました。

いずれも、予め知識を入れすぎることなく・・・出たとこ勝負で楽しみたい!
そういう態勢で臨みました。
どちらも人気の公演なので、チケット争奪は過酷の一言。今回は、悪魔に魂を売り渡すばかりの勢いでゲットしたものもありました・・・つるかめつるかめ

一日目は「楽屋」です。
四人の女優さんによるお芝居でした。演出は生瀬勝久さん。NHKの「サラリーマンNEO」で勇姿を拝見できるお方です。もしくは、先ごろ公開された「ヤッターマン」のボヤッキーといえば、わかりやすいでしょうか。ともかく、その方が演出されるということも大きな楽しみでした。(・・・それにしても、なんて幅広く多才な方!)
チェーホフの「かもめ」の楽屋が舞台だということだけは、承知していました。「かもめ」は、任せてください!昨年、藤原竜也くん、鹿賀丈史さんの舞台で予習済みです。でも、それだけ。まさか、幽霊が出てくるお話なんて・・・。開演数時間前に判明した事実にちょっと
ホラーだったらどうしよう??


でも、大丈夫。幽霊さんは、渡辺えりさんと小泉今日子さんでした。渡辺えりさんは、その場の空気を瞬時にさらい、思いっきり自分のものにされてしまいます。女性離れした「わ~~~ははははは!」という凄みのある笑いは、がっちり観客を捕らえてはなしません。怖がっている暇などないのです。(TDLの人魚姫のあの魔法使いアースラを特殊メイクなしで演じられるとしたら、えりさんをおいて他にはない!と常々思っております。)そして、キョンキョンと呼ばれた小泉今日子さん。彼女は、本当にお美しい!凛とした美人になっておいででした。二人は、生きていた間は舞台の上で役者さんにせりふを教えるプロンプター。光のあたらない影のような存在ですね。死してなお、出番を待つべく楽屋通いをし、メークしながら本番に備えています。そこはかもめのニーナ役の女優の楽屋。ということは、二人とも結局はニーナを演じたかったのか・・?
この楽屋に、現在生きているニーナ役の女優とそのプロンプターが登場して、場面が混乱していきます。女優にプロンプターが、役を返せと迫ります。ニーナ役は、村岡希美さん、プロンプター役は蒼井優ちゃん。枕を抱えて登場する優ちゃんは、精神の均衡を崩している様子です。入院していた病室を抜け出してきたらしい彼女の発する言葉が、ニーナ役の女優の心を刺激していきます。激高した女優が思わず振り降ろしたガラスビンが優ちゃんの額で炸裂し、彼女はばったりと倒れご昇天。幽霊が一人追加されてしまいました。三人いるんだから「三人姉妹」を演じようと衣装を調えたところで、幕。そうですね、ゆるやかにぷつんと途切れた感じでしたね・・。

カーテンコールで登場したゆうちゃんの目が赤かったのは、何故でしょう。たった一箇所だけど、流れるべき台詞をつっかえてしまったのが悔しかったのか。それとも、ぐるり三方、壁際まで立ち見のお客さんで埋まった盛況振りが嬉しかったのか・・・。場所は、シアタートラムという、二百人ほどの定員の小さな劇場でした。マイクもいらない、本当に贅沢な空間。意外なほど男性のお客さんも多くて、開演前にはあちこちでお芝居好きの方々のいろんな舞台の感想などが聞えてくる、濃密な場所でした。

で、この戯曲をどう楽しむのがいいのかなあ・・と、一応考えてみるワタクシ。
きちんと筋書きを説明するのも野暮な感じ。というより、説明してもきっと???だろうと思います。ある程度時がたって、ふとしたはずみに「おお!!もしかして?」ということもあるので、今回もそれに期待したいと思います。
ただ、あの場所に集ったあの場所だけの雰囲気というのは、確かにありました。
出かける時から、もっと遡るなら、チケットを取る時から始まっていたこの舞台への道、思い。その場に出かけて座席に座ることができたら、もう何も付け足さなくてもいいのかもしれません。